医療情報システムがもたらす情報連携の重要性と業務の効率化について【サブシステム&サポートシステム編】
医療情報に関わるサブシステムの特徴とその効果について(第1回)
2021年10月

執筆者:株式会社アイ・ピー・エム
    代表取締役 田中 幸三(たなか こうぞう)氏

今回からは、医療情報システムの有効性がもたらす情報連携の重要性と業務の効率化について記述したい。

1.医療情報システムについて

以前のベネットワン・米山氏のコラムで、電子カルテの普及状況の推移について記載があったが(注1)、近年は、新規の導入とともに、更新の機会が訪れている医療機関が多い。5年前のシステムと比較すると機能面がかなり充実しており、ようやくパッケージ(効率的な運用が可能となる)という形にはまってきた印象がある。

先日のホスピタルショーでも展示されていたが、主要各社とも新世代の電子カルテが登場し、機能が格段にアップされていた。それと同時に、ベンチャー企業を含め、部門システムや各種支援ツールの進化にも目を見張るものがあった。

2.医療情報支援システムの特徴と効果

ここのところ、医療情報システムの全体像が大きく変わってきている。基幹システムと呼ばれる電子カルテ、オーダリング、医事システムに看護支援がセット化され、それに付随する部門システムの進化が目覚ましい進歩を遂げている印象である。

現在、導入支援をしている医療機関においても、部門システムだけで40を超えるシステムが、基幹システムと接続して情報連携を行っている。これにより、患者に関する情報のみならず、病院全体の情報が一元化されている。

今回は、主要なシステムのサポート関連及び患者サービスの向上に関わるシステムについて記述したい。サポートシステムの特徴と効果を以下に列挙する。

【ウイルス対策システム】

電子カルテをはじめとする病院情報システムは、常に機微な情報を取り扱っており、外部からのウイルス侵入を防ぐことが重要である。そのためには、しっかりとしたウイルス対策ソフトが必要であり、常に最新のパッチ・モジュールを適用することで、最新のウイルス侵入及び拡散対策を図ることが可能となる。病院情報システム全体の安全を図る上においても必要なシステムである。

【情報セキュリティシステム】

院内の情報セキュリティ対策としてログ管理やセキュリティ管理、デバイス管理など、『情報漏えい対策』や『IT運用管理』を支援する機能を有している。資産管理やログ管理、デバイス管理、セキュリティ管理の機能で電子カルテ端末の使用状況や状態を把握及び管理することができる。

個人情報の保護をはじめ、カルテの不要な閲覧などの防止策にも寄与できる。

【院内ポータルシステム】

利用者の管理や職種ごとの各種業務システムの制御、職員連携を行うことができる。業務の効率化につなげるには、複数の業務アプリケーションへのログインを一回の認証(シングルサインオン)で可能とする。

ログイン後はグループウェアによってコミュニケーションを活性化することが可能となる。離席時には端末をロックし、なりすましを防ぐなど、厚生労働省の「安全ガイド」に準拠したセキュリティを実現することが可能である。

医療機関内にある各種医療情報システムの職員マスタを一元管理し、他システムへマスタの自動送信が可能となり、情報の迅速な共有化を図ることができる。

【患者呼び出しシステム】

現状では、患者は、患者案内表示システムで表示されるディスプレイの見える場所に待機していなければならないが、患者のスマートフォンに専用のアプリをインストールすることで、離れた場所からも呼び出し状況を確認することができる。

新型コロナウイルス感染症対策の一環として密を避けることが可能になると同時に、患者サービス向上にもつながる機能を有している。

【再来受付機システム/自動精算機システム】

受付窓口や会計窓口業務の省力化、会計窓口の混雑を解消することのできるシステムである。

再来受付機システムは、予約済患者が来院した際、受付と患者へその日の診療内容を知らせる機能を有する。自動精算機システムは、全ての診療が終了した患者が診察券を投入することで、当日の精算金を収受する機能を有する。ともに窓口業務の効率化と患者の待ち時間短縮のためのシステムである。

最近では、再来受付機と自動精算機両方の機能を有する機種のほか、アプリを活用した患者情報の事前登録による後払い機能(クレジット決済やコンビニ決済等)の導入などにより、患者待ち時間短縮や会計処理の効率化が図れ、患者サービスの向上につながることが期待されている。

【同意書サインシステム(液晶サインタブレット)】

令和2年の法改正にて同意書電子サインの要件が緩和された。同意書電子サインソリューションを導入することで膨大な紙のスキャン作業や保管、コスト削減などに効果が期待できるとともに、事務作業の効率化にも効果をもたらし、残業時間の短縮にもつながる。

【医療用データウェアハウス】

業務改善や経営分析、医療安全を効率的に行うことのできるシステムである。主に診療統計やデータ抽出の機能に加え、通知機能を通じて診療情報の二次利用を促進することが可能となる。

分析したデータを有効活用することで、医療機関全体の経営改善につなげるのみならず、業務の改善を推進することで、医療情報分析業務の効率化に寄与できる。

【看護師勤務管理システム】

看護部門における事務処理の自動化・省力化を実現するために有効なシステムである。

看護職員情報の管理や勤務予定作成、勤務実績管理、入院基本料届出書類(様式9)、超過勤務時間管理、さらに看護部各種日誌作成機能を有している。

最近は、AI搭載による自動化も進んできており、勤務表の作成時間短縮が可能なソフトが主流となっている。これにより 残業時間を短縮し、働き方改革にもつながる。

【インシデント管理システム】

インシデント管理システムの導入により、統計・分析にかかる業務の効率化を図ることが可能となり、院内の安全管理に寄与することができる。

インシデント報告(インシデントレポート)や統計分析、改善対策から安全研修まで、医療安全活動に必須の機能をトータルにサポートすることができるなど、厚生労働省の「医療安全管理者の業務指針」に対応しているシステムが多い。

【顔認証ポータル】

ID・パスワードでポータルにログインする代わりに、顔認証でのログインを実現できる。顔認証を行うことで、なりすまし等のログインを制御でき、よりセキュリティを強固なものにする。

3.考察

上記に記載したシステムは、いずれも医療情報の周辺に関わるシステムであるが、それぞれが患者サービスの向上や職員の業務効率化につながるシステムである。

医療機関の規模によって取り扱う情報量は異なるかもしれないが、基本、全ての医療機関で取り扱う情報の種類は同じである。特に、セキュリティに関するシステムや残業の削減につながるシステムについては、積極的に活用していきたい。

働き方改革のもと時間外労働の上限が適用される中、医師のみならず、職員全員が効率的な業務を遂行するために、医療情報システムの在り方を医療機関全体で検討していく時期にきていると考える。

今回は、医療情報に関わるサブシステムの特徴とその効果について記述した。

次回は、部門サポートシステムとWebシステムの特徴とその効果について記述したい。

少しでもお役にたてれば幸いである。

注1:電子カルテシステム有効活用に向けて(2021年8月掲載 米山 正行氏のコラム)

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