2023年度4月「病院機能評価 機能種別版評価項目〈3rdG:Ver3.0〉」について
新バージョンの導入から見える医療の質の改善【前編】
2022年11月

執筆者:株式会社アイ・ピー・エム
    代表取締役 田中 幸三(たなか こうぞう)氏

1997年から始まった病院機能評価における訪問審査も今年で25年が経過し、来年度からは、新バージョンの審査が開始となる。

当初は、全体的に文書関連の審査がメインという印象であったが、バージョンアップしていくうちに、より「地域医療の質の向上に寄与するための評価」「医療の質改善を促進させるための組織への支援」「医療の質改善を促進させるための個への教育」といった色が強く押し出されてきており、3rdGのバージョンからは、医療の質の改善や医療機能の改善に非常に役立つツールという位置づけになってきた印象である。

特に、医療安全・感染といったところは、医療機関として最も重要な質の担保という意味においても強化されており、診療録の内容まで踏み込んできた審査は、とても重要な意味を持つと考えている。

そこで、今回からは、この「病院機能評価 機能種別版評価項目〈3rdG:Ver3.0〉(以下、「Ver3.0」)」の評価内容を検証しながら、審査内容や評価項目の変更等に着目し、医療の質の改善に必要な体制やあるべき姿について記述する。

なお、今回は機能種別7区分(一般病院1、一般病院2(注1)、一般病院3、リハビリテーション病院、慢性期病院、精神科病院、緩和ケア病院)の中から、一般病院2の区分3(200~399床)に着目して記述する。

1.改定の概要から

Ver3.0においては、以下の内容が改定概要である。

ア)事務管理領域の評価方法の見直し

「組織」「人材」「経営」など、ブロックとして取りまとめて評価する。「地域・患者支援」においては、病床数400床以上で評価。

イ)一般病院3特有の評価方法の他種別への展開

カルテレビュー、医療安全ラウンドの追加(病院幹部面談は除く)。

ウ)法改正・医療情勢の変化への対応

臨床研究法、医療法の法制度等の改正や、感染症対策への期待の高まりなどの医療情勢の変化を踏まえ、評価項目を見直す。

Ver3.0においては、より実態に近い通常の状態の中で各職種別の機能分担が必要となる。特に、事務職においては、医事課、人事課、経理課、地域連携室との連携及び業務の効率化と質の向上をどのように行い、定着させているかが焦点になる。

また、医療の質を確認するためのカルテレビューや安全管理に関しての徹底度合など、細部にわたる準備が必要になる。

【参考:カルテレビューの目的】

  • カルテ記載の定常状態の確認
  • 説明と同意の適切性
  • 診療・ケアの適切性

以上の項目から、医師別で記載内容に差が出ないような診療録の標準化及び教育・指導が必要となる。ケアプロセス調査とは異なる点にも注意が必要である。

その他、当日の進行表から見てとれる審査のポイントについては、後述する。

2.評価の視点及び要素について

ここからは、評価の視点及び要素の変更箇所について列挙する。併せて、それぞれの内容についてコメントしたい。

1.1.4 患者支援体制を整備し、患者との対話を促進している。

〔要素の変更点〕

  • 多職種・他部門等との連携体制(追加)
  • 患者・家族からの相談に関する情報共有と支援の体制(取り組みから支援に変更)
  • 各種相談に関する記録の仕組み(追加)

※ キーワードとして、「チーム医療の推進」「ICTの有効活用」が挙げられる。前回の診療報酬改定の中でも記載したが、今後の医療は、単独部署だけでなく、それぞれの状態にあった医療をチームで提供していく必要がある。そこに、ICTツールを駆使して、効率的に業務を遂行することが重要である。

1.4.1 医療関連感染制御に向けた体制が確立している。

〔要素の変更点〕

  • 医療関連感染制御に関するマニュアル・指針の作成及び必要に応じた改定と周知(周知を追加)

※ 周知が追加されたことで、医療安全管理委員会での報告だけでなく、院内職員への周知が求められる。その方法を速やかに検討し、実行する必要がある。

1.5.3 患者・家族の意見を活用し、医療サービスの質の向上に向けた活動に取り組んでいる。

〔要素の変更点〕

  • 意見クレーム等の収集(クレームの追加)
  • 医療サービスの質向上に向けた対応策の検討と実施(医療サービスの質追加)

※ 患者・家族の意見や要望を収集するだけでなく、それらを医療サービスの質の向上にどう活かしているかを具体的に示す必要がある。「患者サービス向上委員会」の活動記録と実施記録が必要である。

2.1.6 転倒・転落防止対策を実践している。

〔要素の変更点〕

  • 医療安全管理部門と連携した継続的な取り組み(追加)
  • 転倒・転落防止対策の立案・実施(転倒・転落防止を追加)

※ 医療安全管理部門の役割が更に重要となる。転倒・転落防止による様々なリスクを回避することで、医療の質の向上と医療費抑制につなげることができる。

2.1.12 多職種が協働して患者の診療・ケアを行っている。

〔要素の変更点〕

  • 多職種が協働した診療・ケアの実践(参加から協働に変更)
  • 専門チームによる組織横断的な取り組み(追加)

※ ここでも「チーム医療の推進」、「ICTの有効活用」が挙げられる。チームとして参加するだけでなく、それぞれの職種が持つ知識・技能を診療・ケアに活かしていくことが求められている。更には、その記録を検証し、効果という結果が求められてくる。

2.2.14 褥瘡の予防・治療を適切に行っている。

〔要素の変更点〕

  • 体位変換やマットなどの体圧管理の実施(体圧管理を追加)
  • スキン-テアや医療関連機器圧迫創傷(MIRPU)対策の実施(追加)

※ いかに褥瘡の予防を行うかという観点から、看護部のみならずME等の協力を得ながら、対策を実施していく必要がある。体位変換だけでなく、体圧の管理に着目されている点が新しい項目となっている。

2.2.15 栄養管理と食事支援を適切に行っている。

〔要素の変更点〕

  • 多職種の関与(栄養士の関与から変更)
  • 栄養状態、摂食・嚥下機能の評価(評価順位の変更)

※ ここでも多職種の関与が求められており、情報の共有による早期回復のための支援をどう行っていくかが焦点になる。評価においてもより充実した内容が求められることが想定される。

ここまで、改定の概要、評価の視点及び要素(第1領域、第2領域)について、変更点を中心に記述してきた。次回は、評価の視点、要素(第3領域、第4領域)及び訪問審査当時の進行表から見える強化項目と準備について記述したい。

少しでもお役にたてれば幸いである。

注1:主として、二次医療圏などの比較的広い地域において急性期医療を中心に地域医療を支える基幹病院

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