病院IT化 成功のカギ
-予算決定時に導入後の病院経営までをしっかり考える-

病院IT化のいろは・・・(第2回)
2015年9月

執筆者:株式会社 Benett One(ベネットワン)
    代表取締役・診療放射線技師
    米山 正行(よねやま まさゆき)氏

医療ITコンサルタント・コーディネーターの米山正行です。
シリーズ「病院IT化 成功のカギ」今回は第2回として予算に関する考え方について書かせていただきます。

病院IT化のための予算はどのように考えていますか?

筆者は以前、病院IT化に関する予算をどのぐらいで想定しているかを尋ねたことがあります。
「1床100万円でしょ!」という回答が多くありました。
しかし、その内訳は?と尋ねると「内訳?」と多く聞かれました。皆さんはいかがでしょうか?

これまでの経験と興味深い報告から今回は「1床当たりの金額想定」と「医業収入からの算出」という二つの考え方から予算決定のプロセスを筆者の考えを織り交ぜ書かせていただきます。

病院IT化費用について

病院IT化については、ご存知の通り莫大な費用が掛かります。その費用の大小については、病床数やシステム化の範囲またカスタマイズの範囲などによってばらつきはありますが、内訳としては下記に示すものが考えられます。

導入に関わる費用一覧

  1. 電子カルテシステム
  2. 医事会計システム
  3. 部門別システム
  4. ネットワーク費用
  5. 保守契約費用
  6. 施設工事費用
  7. 設備費用
  8. 導入人件費
  9. カスタマイズ費用

このような費用が発生する可能性を事前に想定して予算策定ができた場合には、病院は無駄な費用を抑えた導入、また稼動後の病院経営は安定的な状態を作り出すことができると考えます。

しかし、これらを予算策定時に詳細を予測して予算立てをするのは、かなりの時間が掛かると思われますので、このような費用が発生することを考慮して備えることが必要だと考えます。

そのように考える筆者は、漠然と「1床100万円!」の予算策定では、導入中に突然発生する追加費用に対する対応の遅れや、システム稼動後の経営に関して不安を感じてしまいます。

予算立てに必要な考え方とは

病院はIT導入をした際、それらに掛かった費用を一括で支払いをする施設はほとんどなく、リースによる支払いが主流だと言われています。皆様の施設ではいかがでしょうか。

さて、ここからはリースによる支払いと仮定して説明させていただきます。

システム(ハード)の保守有効期間とリプレイス・システム変更のタイミングは導入から5年と言われています。リース契約も5年とすると、システム導入以降は毎年相当額となる費用の支払いが発生します。

もうお気づきかと思いますが「IT化した病院は、その後永続的にIT化に対して費用が発生する」ということになります。

そのようなことから漠然とした金額で予算設定をするのではなく、1年間で掛かる費用(単年分)を考慮して予算策定をするほうが、経営的な数字と照らし合わせた時、その投資が過剰投資か否かなどの判断がしやすい数字となるのではないかと考えます。

筆者は上記より、単年分の費用算出から全体予算を算出するという考え方がいいのではないかと提唱いたします。

1床当たりの予算立て

さて、まずは「1床当たりの予算立て」について考えてみましょう。

これも冒頭にあった「1床100万円」の考え方と見た目は一緒ですが、今回提唱する1床の金額想定の考え方は前項で書いたように単年分の金額として考えているところです。

さて、筆者が目にしたある報告には平均1床55万円程度(単年分)と記載してあります「システム化の範囲・カスタマイズの範囲」などの違いはありますが、この数字は「ある程度、病床数との相関がある」との記載もあり、平均値から金額想定することもある程度可能だと考えます。しかし、その際は施設がどの程度までシステム化を目標としているか等を十分に考慮して想定をすることが必須条件であると考えます。

また、この考え方での利点としては「年間1床当たりの費用負担が数字で見ることができる」ことだと考えます。病院はベッドの稼動率や占床率、1患者の入院平均単価などの指標を経営上参考にしていることが多いと思われますので、どのぐらいの投資額になるのかイメージしやすいのではないかと考えます。

さらに、この後に説明する「医業収入からの予算立て」と絡めて算出することで、より根拠のある数字として金額想定がイメージできると考えます。

医業収入からの予算立て

次は、病院の医業収入からの予算立てです。

これは病院の医業収入の何%を予算として使うことを想定するか!という考え方でやはり単年分での算出方法となります。前項の「1床当たり・・・」の考え方とはアプローチが違うことは理解していただけると思います。

この予算策定方法は、病院がIT化に対する予算として投資できる費用、IT化した後の経営に影響のない費用設定をするのには良い予算策定方法ではないかと考えます。

これにも平均値2.6%との記載がありますが、1床当たりの設定と違って「施設規模による相関がみられない」という記載があり、ここが重要なポイントとなります。

医業収入に関しては病院機能・原価計算・人件費などから収益の違いがあるため「施設規模による相関がみられない」という記載となったのではないかとは考えます。

すなわち「医業収入からの予算立て」では、病院の経営状態・収支を十分考慮した上で、今後の見通し等も含め、どの程度までIT化に投資ができるかを考えることが重要となります。

このようなことより「医業収入からの予算立て」はより経営視点からの予算策定をする指標となるものではないかと考えます。

実際に二つの指標をどう扱うか

では、この二つの指標をどのように使って予算策定を考えたらいいのでしょうか?

筆者はまず「医業収入からの算出」から投資可能金額を想定して「1床当たりの費用」に換算し予算策定を検討します。この二つの指標をバランス良く考え予算検討することによって、イメージしやすい根拠のある数字が算出できると考えます。

これらの指標特性をよく理解していただき、根拠のある予算策定をおこなうことは、施設に見合った投資額でのIT化が実現する。そのようなことに繋がっていくと考えます。

また、しっかりとした予算策定からIT化を実現することによって「無駄な費用の抑制」や「安定した病院経営」にも繋がっていくと考えます。

病院IT化 予算決定時の成功のカギ

  • 予算策定は単年分で考え、全体予算は×5年で考えましょう。
  • 予算策定には多角的な方向から策定することが重要となります。
  • それぞれの算出指標を十分理解し、病院のIT化範囲を把握して、病院の施設規模に見合った無駄のない予算策定を。

最後に・・・

予算策定に関して、筆者の経験と考えが少しでもお役に立つことができれば幸いです。

次回は、第3回目として「プロジェクトの人的配置や進行・・・」といった内容を中心に書かせていただきます。
ありがとうございました。

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