2022年度診療報酬改定に関わる医療機関の取り組みについて(対談)
対談(医療コンサルタント)【前編】
2022年9月

執筆者:株式会社アイ・ピー・エム
    代表取締役 田中 幸三(たなか こうぞう)氏

今回からは、「2022年度診療報酬改定」に関して、医療コンサルタントの対談概要を記述したい。

A氏:放射線技師として、医療の現場で活躍しながらも、医療情報に精通し、現在は、医療コンサルタントとして、自治体病院等に対して、システム構築や診療報酬に関する影響などのアドバイスを行っている。

B氏:病院移転を現場で経験後、医療コンサルタントとして、自治体や独立行政法人、医療法人等に対して、経営改善、医療情報システム構築、診療報酬改定の影響、病院機能評価支援などを20年にわたり行っている。

1.診療報酬改定に対する印象

A氏
今回の改定は、厳しい言い方をすれば、いい加減に医療をしている病院に対していよいよ国がメスを入れ始めたのかな。といった感じです。病院は淘汰される時代に入ったのかなと感じています。

B氏
そうですね。早期に対策を講じないと、国公立・民間を問わず、継続が難しくなる医療機関がでてくると思われます。

A氏
また、以前から一部の先生方がおっしゃっていた「メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用」に変わっていくのではないかと感じました。
看護師、薬剤師、栄養師などの職種に対して○○経験5年とか、研修の修了者などの文言が多くなっていると思います。看護師は認定に加算が付くことが多く、これが薬剤師や栄養師の研修や経験に波及しています。
これらの人員を中小の病院では集めることが難しい状況が既にあります。ただ職員(医師、コメディカル)を集めて満足する時代は終わりそうです。

B氏
ただでさえ、人材の確保に苦労している医療機関も多い中、その職員の教育やスキルアップが求められてきました。それらをサポートする組織の体制も重要かと思います。

2.2022年度診療報酬改定

A氏
新型コロナウイルス感染症で浮き彫りになった地域包括ケアシステムの成熟化と、地域医療機関の協力体制(ピラミッド)の確立という現状の課題が感じられます。これらを適正化するために「感染症対策向上加算」が大きな役割の一つと国は考えているような気がします。
また、併せて適正な病院機能の改善に向けては「看護必要度」の改定も大きな役割を果たせるか? といった感じで捉えていますが、心電図モニタの削除はこれまで心電図でポイントを上げていた病院に対しては大きなダメージになると考えます。
このような中でもコロナでも最前線で頑張ったピラミッドの頂点にある救急医療機関に対しては加算が充実したと感じます。

【感染症対策向上加算1】

現行:390点 改定:710点

【急性期充実体制加算】

→総合入院体制加算と同時取得できない(14日最大で4,760点)

  • 総合入院体制加算1:240点(14日最大で3,360点)
  • 総合入院体制加算2:180点
  • 総合入院体制加算3:120点

総合入院体制加算よりも多い点数になる可能性も!

【重傷者対応加算】

→(14日最大で6,350点)など

B氏
上記の加算要件は厳しい内容となっているので、入院基本料1を算定していても救急体制等がしっかりしていない医療機関では取得はかなり厳しいのではないかと思います。
また、人員要件に経験5年、研修終了などの要件も多く200床から399床までの病院で、何とか「入院基本料1」を取得してきた病院は、取得できない可能性も大いにあります。

A氏
「地域包括ケア病床」に対しては、厳しい改定になったと感じています。
特に200床以上で、一般急性期入院患者の逃げ道として地域包括ケア病床を使っていた医療機関には厳しい状況になるかと思います。国は完全に『やめて下さい』と言っているようにしか思えません。
また、入院料・管理料1・2では「入退院支援加算1」の届出がない場合は10%減算されることとなり、減算が多い改定になったのではないかと思います。
ちなみに、地域包括ケア病棟での入院支援加算1の取得状況は45%とのことです。

【入退院支援加算1の要件について】

B氏
入退院支援加算1にあっては、入退院支援及び地域連携業務に専従する職員(以下「入退院支援職員」という。)を各病棟に専任で配置し、原則として入院後3日以内に患者の状況を把握するとともに、退院困難な要因を有している患者を抽出する。専従看護師の要件は緩和されましたが、これがなかなか難しい病院もあると思います。

A氏
「療養病棟」にもメスが入ったようです。看護職員の配置25対1、医療区分2・3の該当患者割合に定めがない経過措置病棟の減額(2年間の経過措置あり)、同病棟のリハビリ算定をする患者に対してFIM等の評価測定(月1回以上)がなければ「区分2→区分1」の減額(経過措置あり)。また、摂食機能に関しても機能回復に向けた体制が必要になります。
そのような体制がなくIVH使用の場合は区分3から区分2の減額になります。『機能向上に向けてやりなさい!』といっているような感じがしています。
ちなみに、「摂食嚥下支援加算」が見直され、以下のようになります。

【摂食嚥下機能回復体制加算(摂食嚥下支援加算より変更)】

現行:週1回に限り200点を所定点数に加算
改定:週1回に限り以下の点数を加算

区分 加算1 加算2 加算3
点数 210点 190点(新設) 120点
施設基準 摂食機能又は嚥下機能の回復のために必要な指導管理を行うにあたり、十分な体制が整備されていること。
摂食嚥下機能障害患者への看護経験5年以上、摂食障害看護を終了した専任の常勤看護師又は常勤言語聴覚士(注1) 摂食機能又は嚥下機能に係る療養についての実績等を地方厚生局等に報告していること。
摂食機能又は嚥下機能に係る療養について相当の実績を有していること。

注1:常勤言語聴覚士が要件に入ったことにより、看護師の要件は緩和された形となった。

A氏
仮に療養病棟で以前より「摂食嚥下支援加算」を取得していた場合、「摂食嚥下機能回復支援加算1」と取らなければ減額です。
また、摂食機能又は嚥下機能の回復に必要な体制を有していない場合には、「中心静脈栄養を実施している状態にある患者」について「医療区分3」でなく「医療区分2」の点数を算定することとなります。機能回復体制がなくIVHで寝かせていただけの病院は区分3から区分2の減額となるということです。

(例:療養病棟入院基本料1でADL3の患者が区分3から区分2になる場合)
 区分3:1,813点→区分2:1,414点(減額399点)

IVHに頼り摂食機能改善をしてこなかった医療機関では、「機材・人材」といった部分でもハードルが高いと思われます。
ちなみに、私が医療機関に在籍していた際にも、そのような患者が多くいたので「嚥下造影検査」などの提案をしましたが、人材がいない(言語聴覚士が嚥下検査をしたことがなかった)ため、できなかったという経験があります。

次回に続く

関連動画

「医学管理料における課題を指導管理算定フォローシステムでご支援」

2022年度診療報酬改定においては、今後の医療機関の方向性を決めていく上でとても重要な内容が数多くありました。

そのような中、要件変更などにより、医学管理料の適切な算定は、どの医療機関にとっても悩ましい課題です。
新たな要件の組み合わせ、指導内容のカルテ記載などへの対応が必要です。
病名や指導内容のカルテ記載漏れ等は、査定や返戻の対象になる場合があります。
指導管理算定フォローシステムの活用による適切な算定とカルテ記載の支援についてご紹介します。

関連資料

「指導管理算定フォローシステム」資料ダウンロードはこちら

上へ戻る