[2020年度診療報酬改定]注目の「働き方改革」を考える
~2025年その先の2040年を見据え中小病院がおこなう医療提供体制構築とは~

2020年度診療報酬改定(第1回)
2020年2月

執筆者:株式会社 Benett One(ベネットワン)
    代表取締役・診療放射線技師
    米山 正行(よねやま まさゆき)氏

2020年度診療報酬改定の概要が見えてきた。診療報酬全体としてはマイナス改定、本体部分は0.55%引き上げ(働き方改革推進分0.08%含む)と前回同様レベルでプラス改定、薬価は1%程度引き下げる方向で最終調整に入ったとのこと(2019年12月時点)。本体部分がプラス改定になったとはいえ、働き方改革推進分を考えると病院にとってはマイナス改定と考えるべきだろう。

そのような中、「2020年度診療報酬改定」と題して「働き方改革推進」は何をもたらすのか、また今後病院に何が求められるのかを2回に分けて考えてみたいと思う。

初回は「医療者の働き方改革はなぜ必要なのか、働き方改革推進で何をすべきか」を考えたいと思う。

三位一体改革と働き方改革

国は2020年度診療報酬改定で三位一体改革を掲げている。三位一体改革とは「地域医療構想、医師の働き方改革、医師偏在対策」(資料1)のことで、この3つの改革を2025年までに着手することを目標としている。

また、国は経済財政運営と改革の基本方針を2017年よりすでに出している(資料2)。その中にも地域医療構想実現が明記されており、2019年の方針において公的病院のダウンサイジング、機能連携・分化を進め、2020年でそれらを検証する方針を出している。これは2018年度診療報酬改定で病院機能分化推進のために改定した入院基本料による移行が思うように進んでいない背景があると考えられる。

出典:厚生労働省「経済・財政一体改革(社会保障改革)の取組状況」

高齢者人口は2040年をピークに減少するが、労働人口の減少がさらに進んでいくことが予想され、医療者の人材不足も考えられている。そのような状況でも安定した医療提供体制を構築するため、国は今回の診療報酬改定で「地域医療構想・医師偏在対策」実現に向けて「働き方改革」を加えた三位一体の改革推進を掲げた。

今回の診療報酬改定で“働き方改革が注目”されているのは、2025年その先の2040年に日本の安定的な医療提供体制を実現するための重要な改革と位置付けられているからといえるのではないだろうか。

働き方改革に向けて

さて、医師の働き方改革に向けては時間外労働(休日勤務含め)などの労働時間短縮が整備されることになるが、内容としては以下の施策が具体例として挙げられている。(資料3)

  • 1)医療機関内における労務管理や労働環境改善のためのマネジメントシステムの実践に資する取組の推進
  • 2)タスクシェアリング/シフティング、チーム医療の推進
  • 3)地域医療の確保を図る観点から早急に対応が必要な救急医療体制等の評価
  • 4)届出、報告の簡素化、人員配置の合理化の推進
  • 5)業務の効率化に資するICTの利活用の推進

これらの5項目について病院内でどのような改革が必要なのか、どのようなことが実現可能なのか、今後は各病院でそれらを考える必要があると考える。

出典:厚生労働省「経済・財政一体改革(社会保障改革)の取組状況」

働き方改革推進のためにまずやるべきことは

働き方改革を病院で推進するために、今からすぐにでも取り組まなければならないことが大きく3点あると考える。

1)医師の労務管理

これは医師の働き方改革の評価において、時間外労働などが病院の働き方改革推進によってどのくらい削減されたのか、というところが評価の指標になると考えられる。現在医師がどのような労働環境で従事しているのか、残業時間や休日出勤などの現状を把握することが重要である。

2)タスクシェアリング/シフティングの推進

労働環境の改善に向けては医師だけではなく、看護師も含めたタスクシェアリング/シフティングの推進が重要になる。医師のタスクシェアリング/シフティングを推進するにあたっては看護師業務、事務員業務への移行が重要である。

3)効率的なICTの利活用

ICTは現在院内情報共有ツールとして利活用されている病院も多い。今後はタスクシェアリング/シフティング運用を意識した効率的・効果的なICTの導入や利活用推進を考える必要がある。

上記の3点の取り組みを同時進行でおこなう必要があるのではないかと思う。

まとめ

今回は2020年度診療報酬改定で注目されている「働き方改革」について簡単に書かせていただいた。

2025年問題がクロースアップされていた前回改定、そして今回の診療報酬改定では2040年までを見据えた改定となっているところもポイントとなる。その中でも「地域医療構想・医師偏在対策」の実現は急務となっており、それらを推進・実現するためには「働き方改革」を確実にやらなくてはいけないということは間違いない。

この流れを組み込み、さらに地域医療ニーズにマッチした医療提供体制構築こそが中小病院に今後求められていることだと考える。

次回コラムでは、今回の内容を踏まえ、今後行うべき三位一体改革の中でも「働き方改革・ICTの利活用」に向けたポイントについてより具体的な事例と、中小病院がおこなう医療提供体制の方向性などを含めて考えたいと思う。

今回の内容が少しでも病院改革に向けた参考になれば幸いである。

最後までお読みいただきありがとうございました。

上へ戻る