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これって嫌味?
「“せいぜい”がんばってください」

「せいぜいがんばって」という言い回しを聞くと、なんともいえない気持ちになる人は多いのではないでしょうか。「がんばって」という言葉自体は叱咤激励なのに、「せいぜい」は一体どういう意味…?
本心で激励してくれているのか、それとも嫌味を言われているのか、発言者の真意がわかりにくいことがありませんか。

「せいぜい」は、漢字では「精々」、または「精精」と書きます。「精」の字には「ひたすら」という意味があり、本来は「一生懸命に」「力を振り絞って」という意味の言葉なのです。実際、古い小説などではこの意味で使われている例が多く見受けられます。

ところが、時代の変化とともに「せいぜい」にはネガティブな意味が伴うようになりました。「せいぜい〇〇するがいい」といった具合に使われるなど、「がんばって〇〇したところで大したことはないだろう」という具合に、少々見下したようなニュアンスになってきたと考えられます。

ある調査では、この「せいぜい」の解釈には世代差があることがわかりました。「せいぜいがんばってください」の意味について、60代以上では「応援」ととる人が4割いるのに対し、20代では2割程度。若い世代ほど「嫌味」ととる人の割合が多くなるのです。

時代とともに意味が変化してきたと考えると、「せいぜい」を応援の意味で使える人は、日本語の意味をよく知っている人だとも言えます。が、相手が嫌味だと受け取る可能性があるわけですから、実際の会話で使うには注意を払った方が良さそうです。

時代とともに意味が変化した言葉といえば、「全然」もそうです。「全然~ない」と否定表現を伴って使うことが正しいとされていますが、一方で「全然いいですよ」など肯定の意味で使う人もいます。若者言葉の1つだと受け取られることが多いようです。

「全然」はそもそも「すべて、すっかり」という意味であり、肯定の文章で使われることは、実は最近始まったことではありません。芥川龍之介の「羅生門」(大正4年)では「全然、自分の意志に支配されている」という表現も見受けられ、「全然」を肯定の文章で使うことは一概に間違いだとはいえないわけです。ですが、これもビジネス上で使う場合はやはり注意した方がいいかもしれません。

他にも、「微妙」や「大丈夫」なども意味が変化している言葉といわれています。言葉の使い方や意味は、時代とともに変化し、話す人や受け取る相手によってもニュアンスの違いを生むことがあります。話すシーンや相手に合わせて、言葉をうまく使えるようになりたいものです。