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奥深き将棋の世界
タイトルの歴史を覗いてみよう

藤井 聡太棋士が史上最年少で挑んだタイトル戦など、将棋が大いに話題となっている昨今。しかし将棋は難解というイメージを持つ人も多く、将棋のタイトルや歴史について知っている人は多くはありません。今回は、将棋のタイトルについてみていきましょう。

そもそもタイトル戦に参加できるのは、原則としてはプロ棋士のみです。日本将棋連盟が運営する奨励会という棋士養成機関に入り、6級から三段まで進級したのち、年に2回の三段リーグで上位2名に入れば四段に進めます。ここまできて初めてプロ棋士に仲間入りすることができ、タイトル戦に挑むことができます。

そして、現在は8大タイトルがあり、それぞれ新聞社や通信社が主催者として創設されたものがほとんど。主催企業は対局の報道だけでなく、勝者への賞金を提供しています。賞金の額はタイトルによって差があり、それがタイトルの序列にもなっているといわれます。

最も歴史があるのは名人戦で、江戸時代までさかのぼります。当時は世襲制で名人が決まっており、名人となると将軍の前で腕前を披露するという役割を担ったそうです。明治以降も実力で一番強いのかを決する仕組みはなかなか構築されずにいました。このままでは将棋界が発展しないと危惧した関根 金次郎十三世名人が自ら名人位を返上、毎日新聞社(当時は東京日日新聞)が主催者となり名人戦を創設し、昭和10年に実力名人制が始まりました。

逆に最も新しいタイトルはIT系の企業が主催する叡王戦(えいおうせん)です。トーナメントでの勝者は“人間代表”として将棋ソフト(AI)と対決するという異色の一般棋戦として2016年にスタートしました。2年後に「叡王戦」と名付けられタイトル戦に昇格しましたが、まだ創設から3年ほどしか経過していない新しいタイトル戦です。

さて、タイトルがこんなにいくつも存在するのに意味はあるのか、と思ってしまいませんか。
タイトルが多すぎればファンにとってはわかりにくく、いったい誰が強いのかと思ってしまいますが、将棋の世界はそうでもないのです。

例えば名人戦と叡王戦で比較すれば、名人戦は2日間かけて行われ、持ち時間は1人9時間。一方の叡王戦は、前述通り元々はAIとの対局を想定していました。持ち時間は1人1時間の場合もあり(5時間、6時間などもある変則制)、1日で決着がつきます。持ち時間をうまく使うには持久力か、はたまた瞬発力か、ひらめき力か…脳の使い方や戦術の立て方にも違いが出てくるともいえます。条件が違うからこそ、棋士それぞれが違う強みを発揮できるというわけです。

タイトルの最多獲得数を調べると、羽生 善治棋士が1人で王座戦を24回、王位戦18回、棋聖戦16回(大山 康晴十五世名人、中原 誠十六世名人とタイ)、棋王戦(13回)…と群を抜いた実績を収めています(2020年10月時点)。

史上最年少で棋聖と王位のタイトルを獲得した藤井 聡太棋士の快進撃で、熱い注目を集める将棋界。現在200名以上いる棋士と女流棋士はそれぞれ得意な戦術や勝ちパターンがあったり、テレビの解説に工夫があったりと、興味深いポイントがたくさんあります。奥深い将棋の歴史にも目を向け、今後のタイトル戦の行方にも注目したいですね。