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コンサルタントのコラム

変わるIT部門

[第1回]IT部門の役割変化への対応

2011年1月(2020年10月改訂)

引き続き厳しい事業環境が続いている中で、ITには組織目標達成への貢献と説明責任がより強く求められています。
それに伴い、IT部門に求められる役割も大きく変化してきています。
企業がクラウドコンピューティングの活用を積極的に検討するようになり、ITの所有から利用へのシフトが進むことも役割の変化を後押しする結果になります。

期待される役割の変化に対応するのは簡単ではなく、現状の正確な認識と中期視点での計画的な取り組みが必要となります。
本コラムでは、IT部門の変革のために検討すべき点について、数回に分けて考えてみたいと思います。

IT部門は人的リソース不足

当社ではIT部門の抱える主な課題を次の5つに整理しています。

IT部門の抱える主要課題

  1. 事業・ITの戦略整合を図り、投資対効果の見える化を実現する
  2. 全体最適の観点で業務プロセス変革に取り組む
  3. 削れるところを徹底的に削り、新規投資に振り向ける
  4. スピード対応、柔軟性確保でクラウド活用含め内外製を見直す
  5. ライフラインとしての安定稼動を目指し、リスク管理を強化する

これらの主要課題は、当社が主催するセミナーでも何度か紹介していますが、参加していただいたお客様の多くが同じように感じているようです。
しかしながら、多くの企業では、IT部門の要員が現在の情報システムの運用や保守対応に追われ、主要課題にじっくり取り組めていないのが現実ではないでしょうか。

経済産業省から2010年8月に公表された「平成21年情報処理実態調査結果報告書」では、民間企業の平成20年度における情報処理要員の状況として、1社あたりの平均人数が3年ぶりに増加したことが報告されています。
情報処理要員数(社内要員)の対従業員数比を見ると、製造業(従業員301人~1,000人)で2.3%、非製造業(従業員301人~1,000人)で3.9%という結果になっています。
今回はやや増加していますが、平成19年度までの過去3年間では1社あたりの平均人数は平成17年度の半分以下に減っているので、現在でも4年前の水準には及びません。

このように限られた人的リソースで、前述の主要課題に取り組み、組織目標達成への貢献と説明責任を果たすにはどうすればよいでしょうか。
やるべきことは非常にたくさんありますが、どこから手をつけたら良いのかをこれから考えていきます。

経営への影響度の大きい業務を優先すべき

IT部門での必要な業務とは何か

ITに対する経営からの期待は、前述のとおり組織目標達成への貢献です。
これは、企業規模の大小、IT部門の人数や予算に関わらず共通です。
言い換えれば、この目的を実現するために必要なことは、IT部門の人数に関わらず組織として実行する必要があるということです。

IT部門に必要な業務機能を経営への影響度と業務特性(プロジェクト型/ファンクション型)の二つの軸で配置したのが図1です。

[図]【図1】IT部門の業務機能

経営への影響度とは、ビジネス価値創造につながるかどうかの軸です。
例えば、経営・事業戦略の実行にどうITで貢献するかを決めるIT戦略策定やそのモニタリング・評価のような業務は経営への影響度が高く、ITインフラの管理に関わる定例的な作業は経営への影響度が小さいと考えます。

業務特性のプロジェクト型とは、所定の期間内に所定の目標を達成するための有期の業務で、目的が達成された時点で終了する業務です。
ファンクション型とは、組織の機能に落とし込まれた定常業務で、繰り返し業務で継続的に一定の成果を出す業務です。業務の重要度とは関係ありませんが、マネジメントのポイントが異なります。

自社要員は経営への影響度が大きい業務に携わっているか

図1の各業務の配置はあくまで一般的な例なので各企業がどの業務を重視するかによって位置が変わることはありますが、基本的にどの企業でも必要な機能です。
皆様のIT部門では、これらの機能をどこまで実行できているでしょうか。

IT要員を豊富に抱える大手企業のIT部門の場合でも、管理対象の情報システムの数が多くてその管理に追われ、全ての機能を十分なレベルで実行できていることは少ないのではないでしょうか。
IT要員が少ない企業の場合にはなおさらです。

もちろん、現実には時間(工数)、予算、スキル等の様々な要素を勘案して優先順位をつけ、外部リソースも上手く活用しながら必要な機能を実現していくことになります。
図1で示した経営への影響度が大きい業務ほど本来は優先順位が高く、自社の要員で対応すべき業務です。
もし限られたIT要員が、経営への影響度が小さい業務に多くの時間を取られている場合には、その業務を標準化した上で外部リソースの活用を検討するのが有効です。

影響度が大きい業務のシフトには時間がかかる

ただし、これまで経営への影響度が小さい業務を中心に携わってきたIT要員が、時間(工数)に余裕ができれば、すぐに経営への影響度が大きい業務ができるわけではありません。
数年前からシステム運用業務をアウトソーシングに切り替えた企業でも、IT要員の企画系業務へのシフトがなかなか進んでいないのが現実のようです。
IT戦略立案や業務システム企画のような業務とITインフラの日常的な管理業務とでは必要なスキルが異なるためです。

これは個々のIT要員の能力の高低の話ではなく、これまでの経験と育成方針の問題が大きいと考えます。
人材育成は時間がかかるので、必要であればすぐに着手することが望まれます。
人材に関するテーマについては、別の機会に改めて紹介したいと思います。

まずは業務とスキルの実態把握から

【手順1】調査シートを作成する

経営への影響度の大きい業務に優先的に取り組むために最初にやるべきことは、IT部門の実態の把握です。
IT部門のマネージャーであれば、できている事とできていない事のおおよその見当はつくとは思いますが、今後の計画立案とその達成状況のモニタリングのために、始めにしっかり見える化しておきましょう。

IT部門の中で、

  • 誰が、どの業務に、どの位の時間をかけているのか(作業割合)
  • その業務に関するスキルレベルはどうか
  • その業務の標準化レベルはどうか

を調査します。
図2のような調査シートを作成し、IT要員一人ひとりにIT部門の業務機能(図1)の各業務について、1~2ヶ月間の実施状況を記入してもらいます。

[図]【図2】調査シート例

  • 作業割合

    各人の1ヶ月の全業務時間を100とした場合の各業務に費やした時間の割合です。
    個人調査の段階では実際の時間数も記入しておけば、作業ボリュームの分析にも使用できます。
    新システムのリリース等の大きなイベントがある場合には、一時的に作業割合が大きく変動するので考慮が必要です。

  • 標準化レベル

    各業務が特定の個人に依存せずに実行できるようになっているかどうかを確認します。
    これは後に業務の担当者変更やアウトソーシングを検討する際に必要な情報となります。
    尚、標準化レベルについては、個人調査をしなくても判断できる場合には個人調査に含めなくても構いません。

  • スキルレベル

    IT要員の個人スキルを棚卸しして、各業務を実行できる要員が何人いるのかを確認します。
    調査期間中の作業割合がゼロの業務についてもスキルレベルは確認します。

【手順2】調査シートを集計する

個人毎の記入が完了したら、調査結果を集計して部門全体での作業割合、標準化レベル、スキルレベルをまとめます。
調査結果の例を図3、図4に示します。

[図]【図3】業務比率(例)

[図]【図4】スキルレベル(例)

業務比率については、一般的な正しい比率が存在するわけではないので、現状の業務比率が適正かどうかは業務品質等の他の要素も含めて判断する必要がありますが、必要な業務の実施状況を分析する基礎情報としては有用です。
図3の例では、IT戦略等に関わる業務の比率が非常に小さく、システムの運用・保守に大半の時間をとられていることが伺えます。

IT戦略等に関わる業務の比率を高めるには、システム運用やITインフラに関わる業務について、問合せ件数を減らす工夫やサーバ統合等による業務量の低減、一部業務のアウトソーシング等を検討することが有効です。
業務比率を今後増やしていきたい業務については、先行してスキルレベルの向上を図る必要があるので、そのための方策も合わせて検討する必要があります。

今回は、IT部門の役割の変化に対応するための最初のステップとして、業務の優先度を整理する考え方と現状把握の方法について紹介しました。
次回は、自社のIT要員を経営への影響度の大きい業務へシフトするための有効な方法のひとつであるアウトソーシングを活用するためのポイントについて整理してみます。

当社の「コンサルタントのコラム」にこれまでに掲載されたコラムの中には、IT部門に求められる機能についてわかりやすく解説したものが多数あります。
必要に応じて、これまでのコラムも参照していただければ、より多くのヒントが見つかると思います。

執筆

NECネクサソリューションズ
シニアコンサルタント 日下部 公
[CISA公認情報システム監査人,システム監査技術者,ITコーディネータ]

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