食品製造業向けソリューション:コラム
食の安心・安全に向けて ~食品メーカーに必要な備えとは?~
トレーサビリティについて
2015年3月
はじめに
昨年来、食品メーカーや大手外食チェーン、廃棄商品の流用など、食の安心・安全に関わるニュースを目にすることが増えてきました。
実は、「食の安心」に関わる新聞記事の出現件数は2008年頃に比べると5分の1程度にまで減っているのですが、SNS等の身近な媒体により、我々が目にする機会はかえって増えているように感じられます。
各社の対応を見ると、企業側の責任とは思えないようなクレーマーを産んでしまうケースもあれば、生産停止のように傍目に見れば「過剰に反応し過ぎではないか」と思えるような対応まで様々でしたが、対岸の火事としてではなく、当事者として何を為すべきか、リスクマネジメントの難しさを考えさせられる出来事でした。
消費者にとって安心・安全とは何か?
そもそも消費者にとって安心・安全とはどのようなものでしょうか。
我々はよく「原料から物流・店頭に至るまで、徹底した衛生管理がなされているコンビニのおにぎり」と「実家の台所でおばあさんが手作りして持たせてくれたおにぎり」のどちらが「安全そう」ですか?どちらが「安心」ですか?と問う事があります。
多くの答えは、「コンビニのおにぎりの方が安全そうだけれども、おばあさんのおにぎりの方が安心」というものです。
この回答は、「安心」と「安全」はイコールではない、つまり、「安心」とは極めて感情的なものであり、企業による「食の安全」の追及は「消費者の安心」にそのままはつながらない事を示しています。
食品メーカーに必要な備えとは何か?
【その1】自社が安心に足る企業であると訴求し続ける
食品メーカーにおいて「実際に必要十分な安全管理が実行されている」ことは大前提ですが、一方で消費者が「安心」を感情的に捉えているのだとすると、食品メーカーは自社(製品)が「安心」に足るものである事を説明し続ける、または情報提供し続ける事が非常に大切になります。
また事故が起こった場合でも、その原因・範囲・対応を速やかに説明・情報提供できることが大事になってきます。
これら広報やCSRの活動において「自社が安心に足る企業である」事を如何に訴求し続けるか、が食品メーカーに必要な備えの一点目になります。
【その2】広報活動のコンテンツを用意しておく
食品メーカーに必要な備えの二点目ですが、一点目の広報活動のコンテンツそのものを用意しておく事があげられます。具体的には、
- 「事故」発生にすぐに探せる仕組みとしての「トレーサビリティ」
- 「日常」の問い合わせ(品質・安全・法律情報等)に対する即時情報提供の仕組みとしての「商品情報データベース」
の二つの仕組みが求められると考えられます。
消費者・小売にとってのトレーサビリティの意味合い
トレーサビリティが主にその機能は果たすのは、事故発生時においてです。
事故が発生した製品からその使用原材料を遡及し原因分析を即時に行ったり、また事故の発生原因となった原材料等から当該原材料を含む製品を追跡したいりして、影響を受けた製品や対応が必要な範囲を即時に分析することを可能にします。
つまり安全管理上の原因分析・影響範囲分析をいつでも行える能力がある食品メーカーであり、安心して頂くに足る企業であるということを遡及することが出来るツールであると言えます。
これは対消費者にとって重要な仕組みであると同時に、小売にとっても非常に重要で、特にクレーム対応責任等を小売が負うプライベートブランド製品においては、「プライベートブランド製品を当該メーカーに製造依頼するかどうか」に関わる(半ば)基本資格のようになってきている、と言えます。
企業/立場の違いを超えた、品質保証・情報公開ルートの確保
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【A】生産者
どんな品質の原料を使っているのか。
どのような生育暦を持ち、いつ収穫されたのか -
【B】協力工場
どんな環境/プロセスの協力工場を使っているのか。
どの様な基準で適正性を 審査・判断しているのか -
【C】原材料メーカー
収穫された原材料をどのような条件で、どれくらいの期間保管しているのか。
収穫後の品質をどのように担保しているのか -
【D】加工
加工ラインの衛生はどのように担保されているか。最終商品の品質(の安定性)はどのような仕組みで確認されているか
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【E】品質管理
新しい商品・工程の安全性はどのように審査・判断しているのか。製品の消費期限/賞味期限はどのような根拠で設定されているのか
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【F】卸店
製品はどのような環境(温度、日光など)で、どれくらいの期間在庫されているか
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【G】量販店
店頭/店内ではどのような環境(温度、日光など)で、どれくらいの期間在庫されているか。店内加工はメーカー指示通り適正に為されているか
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【H】消費者
消費者はこれらの情報にどの程度/どのようにアクセスすることができるか
食品メーカーにとっての「トレーサビリティ」ソリューションとは?
実態は「理想通りに進んでいない」
トレーサビリティは「食の安心・安全」のためには必須の機能です。ですがその一方で、多くの食品メーカーの製造現場では、
- 「理論的にはすべての原料に対してトレーサビリティを確保しないといけない、ということは分かっているが、全世界に散らばる調達先のすべてにわたって同じ基準で実施すると言うのは、現実的には無理な注文だろう。」
- 「ある製品に対してどんな原材料が使われているかをたどることは比較的容易だが、いったん問題があったときに、どの原材料がどんな製品に使われているのかをたどるには、予想以上に労力が取られている。」
等、費用・手間の問題から、理想通りに進んでいないのが実態かと思われます。
現実感のある導入可能なトレーサビリティの仕組みとはどのようなものか?
2016年2月に行われた食品製造業様向けセミナーにおいては、「原材料入荷から製品出荷まで工場内のモノの動きをトータル管理するトレーサビリティ取組み実践事例のご紹介」の演題でソリューションの説明が行われました。
当該ソリューションの特徴としては、
- トレース情報を安価且つ高精度(事務処理ミスの少ない方法)で適用可能
- 予算及びリスクに合わせた段階的導入(重要な管理対象・工程等から)が可能
- トレースバック(製品から使用原材料を遡及)、トレースフォワード(原材料から完成品を追跡)への対応
- 製造現場の状況に応じたデータ入力支援機能(ツール)の提供
があげられ、特にスモールスタートが可能な事務負担の少ない仕組みであると感じました。詳細はお問い合わせ頂きたいと思いますが、トレーサビリティを検討中の食品メーカーにとって、その手掛かりになると思います。
食品メーカーに必要なもう一つの備えである、「『日常』の問い合わせ(品質・安全・法律情報等)に対する即時情報提供の仕組みとしての『商品情報データベース』」につきましては、次回のコラムにてご説明します。