総務人事向け
明日から始める働き方改革 ~長時間労働を削減する6つの打ち手~(第1回)
長時間労働を削減する6つの打ち手
2017年9月
働き方改革と生産性向上
労働人口は減少しています。働き手の中心となる15歳~64歳人口は現在7629万人(注1)で、23年後には6000万人を割り込む(5977万人)といわれています。
シニア層や外国人労働者の雇用も広がってきていますが、今後も働き手は減少していくことが予想されます。
働き手が増えないなか、今までは個人個人が労働時間を費やすことで成果を上げてきました。そうした「労働時間献身型の勤務スタイル」が定着し、日本は先進国の中でも、長時間労働の割合が多い国となりました。
しかし、そうした長時間労働は過労死やメンタル面の問題を生んでいます。現在、政府としても残業時間の上限規制を設けようという動きになっています。
また、日本は超高齢化社会で、かつ、共働き世帯が増加しています。働きながら介護や育児を行うことが理由で、転職や退職をされる方も増えています。ワークライフバランスという点からも、長時間労働は問題が生じてきています。
働く人が増えないなか、労働時間を削減する必要がある。「労働時間献身型の勤務スタイル」のままでは無理が生じてきており、まさに働き方改革が求められています。
では、働く時間を半減し、成果も半減で良いかというと、そういうわけにはいきません。企業としては、できる限り成果を維持・向上しつつ、長時間労働を削減したいというのが本音だと思います。
同じ成果をより短時間で出すといった生産性の向上により、労働時間を削減していくことが必要となります。
6つの打ち手
では、どんなことを行えば良いのでしょうか。
意識、質、量の視点で考えると、
- 意識:時間という意識を高める
- 質 :時間の質(使い方)を高める、仕事の質(能力)を高める
- 量 :仕事の量を減らす(効率化)
といった働きかけが見えてきます。
それを具体的に行うこと(=6つの打ち手)として、6回にわたって方法などを紹介していきます。
「ノー残業デーや残業事前申請などを行っている」
「時間外労働45時間超のチェックと改善指導を行っている」
「タイムマネジメントの教育をしている」
など、皆さんの会社でも何かしらの方策を打っているのではないかと思います。
しかし、お客さま先を訪問しますと、「行っているが、なかなか効果が上がらない」という声も耳にします。
長時間労働削減のお手伝いをしていて感じるのは、何か1つだけ行ってもなかなか効果が出てこないということです。この6つの打ち手は、どれか1つを行えば良いというのではなく、複合的に行ったほうが良いでしょう。
コラムの内容は、すでに自社で行っていることも出てくると思います。その場合は、ヌケモレがないか、ポイントを押さえているか、などの確認として読んでいただければと思います。
打ち手1:組織としてメッセージを発信する
打ち手の1つめは、「組織としてメッセージを発信する」です。具体的には、「経営層からメッセージを発信する」、「人事部門からメッセージを発信する」ことです。
経営トップからメッセージを発信する
経営トップからのメッセージは影響力が大きく、重要です。多くの社員は、今まで仕事に無駄な時間を費やしていたのではありません。これ以上時間を削れないと思っている人もいるでしょう。残業削減の意識を醸成するには、経営トップの強い意志とメッセージが重要となります。
メッセージを発信する際は、「目的と目標」を盛り込むことがポイントとなります。「何のために残業削減するのか、どれくらい残業削減するのか」ということです。「目的は残業代を削減するため」ですと、経営サイドの立場で考えていると思われてしまう可能性があります。「目的」は社員の立場で考えられているべきです。
また、「目標」は定量目標で示すことが重要です。定量目標は、少し高い目標のほうが意識づけされるようです。
全社を挙げて行う場合、プロジェクトとして掲げたり、スローガンを掲げたりすることも良いでしょう。実行への促進はもちろんのこと、印象度が高まり、本気度を示すことに繋がります。
「スローガンを掲げ、中期経営計画に盛り込み、今期の目標を具体化」している企業も増えています。
人事部門からメッセージを発信する
残業削減は、一朝一夕にできるものではありません。経営トップからのメッセージを受けて、人事部門は、継続的に意識できるように働きかけすることが必要です。具体的には、通達による情報発信、社内サイトで情報発信や情報共有、ポスターなどの掲示物、などが考えられます。
人事部門のメッセージ発信例
通達 |
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社内サイト |
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掲示物 |
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3カ月、6カ月経っても、意識が薄くならないように、事前にどのような働きかけをしていくか計画しておくことが望ましいでしょう。
まとめ
次回は、6つの打ち手「2. 労働時間の見える化と制度面の見直し」について、方法やポイントを紹介していきます。
- ※1:出典:総務省統計局2017年2月時点確定値、および、国立社会保障・人口問題研究所 日本の将来推計人口(平成29年推計)
- ※2:政府広報オンライン特集サイト「ゆう活- はじめよう!夕方を楽しく活かす働き方」内のポスター等
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