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総務人事向け
これまでの常識は通用しない!売り手市場時代の人材確保術(第2回)

中途採用に必要なゲリラ的発想

2016年11月

最近、特に中途採用で「人が集まらない」「人が採れない」という話を聞くことが多くなっています。この傾向は正社員に限ったことではなく、パートタイマーやアルバイトなどの採用でも同様ですから、人材不足に悩んでいる企業はかなり多いのでしょう。

取引先から引き合いがあったが、人員に余力がないために断らざるを得なかった。事業拡大の芽があるのに、人材確保がネックとなって進められなかった。そんな話をよく耳にするようになりました。

厚生労働省の調査によると、有効求人倍率は2014年度に1.00を超え、求人数が求職者数を上回るようになりました。その後も有効求人倍率は上昇が続いており、2016年7月からは1.3倍を超える高い水準となっています。しかも、求人件数の実数は増加傾向にあり、逆に求職者数の実数は減少傾向にあります。

転職情報会社のデータでも、同じように求人件数の伸びと転職希望者数の頭打ち傾向が見られます。中途採用活動の担当者の実感は、有効求人倍率の数値以上に「厳しい」ではないでしょうか。

うまくいかないことが多い中途採用

かつては新卒採用だけしか行わなかった大企業も、今ではごく当たり前に中途採用を行うようになり、中途採用も競争が激しくなっています。しかし苦労を重ねて中途採用した人が、「入社前に期待したような能力、経験ではなかった」「前職のやり方を引きずっていて、会社にフィットしなかった」「すぐに辞めてしまった」という声は、昔からよく耳にします。その理由は、「転職者の中には帰属意識が薄い人もいる」「経歴書や面接だけで能力を見極めることが難しいこともある」などのようです。

また、「前給を考慮した結果、自社の給与水準に見合わない特別な待遇をしてしまった」「本人の能力以上の報酬になっている」など、採用を急ぐあまり、処遇上の問題が生じているという話もよく聞きます。

面接で人を見極める難しさは、新卒でも中途でも変わりませんが、新卒のように全員が初任給で同じ報酬ではなく、すでに職務経験を持っていて、それに伴う市場価値があるという点では、中途採用の方がさらに見極めが難しいのは確かでしょう。

そんな難しさを考えれば、新卒採用にも増した取り組みが企業には必要なはずですが、実際には新卒採用ほどの手間や時間をかけている企業はほとんどありません。中途採用の場合、どうしても早い者勝ちという部分があるので、短期決戦にならざるを得ません。会社説明もそこそこで、適性テストなどは行わず、数回の面接だけで採用を決めてしまうケースが多いようです。このあたりがミスマッチを増やす一つの要因であることは間違いありません。

今回は、こんな中途採用特有の事情も含め、競争が厳しい今の環境下で、どうすれば中途採用がうまくいくのか、いくつかの事例を交えながら紹介したいと思います。

採用手法を変えることで状況を改善

中途採用の場合、その手法の選択肢は意外に限定されています。中小企業で最も多いのは、ハローワークのような無料の求人媒体の活用、次いで雑誌や折り込み広告、求人サイトなど有料媒体の利用、さらに求める人材によっては、人材紹介エージェントなど仲介事業者の活用といったところでしょう。

中途採用の現場では、これらの方法を中心に考えるしかないのが実情です。その制約の中で、どんな媒体をいつ使うか、どんな内容の広告を出すか、募集条件をどうするかといったことに工夫を凝らしながら、試行錯誤を重ねています。ある会社が「○○を使って採用できた」などと聞けば同じものを試したり、専門事業者の勧めや提案にもいろいろ応じたりしてみたものの、あまり効果的とは言えなかったことも多いのではないでしょうか。

しかし、これは今の厳しい人手不足の環境を考えれば当然のことです。基本的な採用手法が同じであれば、媒体や広告内容などの細かな工夫の効果は、しょせん誤差の世界であり、画期的な解決策とはなり得ません。たまたまうまくいったからといって、同じことを繰り返してもあまり再現性はありません。せっかくの工夫や労力が実を結ばないという、残念な結果になってしまいます。

中途採用を行う際に、転職市場での活動が中心になるのは仕方のないことですが、市場競争ではどうしても「強い者が勝つ」結果になり、特に中堅中小企業の勝ち目は少ないということになります。競争が激しくなればなるほど、その傾向は強まります。

転職市場に頼らない方法を考える

その状況を打破するためには、市場によらない採用方法、すなわち「ゲリラ的発想」を考えなければなりません。では、市場によらない採用方法というのは、いったいどんなことが考えられるのでしょうか。

まず挙げられるのは、直接のスカウト、もしくは知人からの紹介です。これらは今までも行われてきたことで、決して珍しいことではありません。ただ、今までのこうした活動は、経営者や一部の幹部社員が、ごく個人的に行っているケースが大半でした。

しかし最近、こうした取り組みを意識的に、かつ戦略的、組織的に行って、成功している企業も出てきています。良い人材を転職市場の競争に巻き込まれる前に採ることができれば、人材要件のミスマッチが少ない、お互いの納得性が高いなど、数々のメリットが得られます。そうしたメリットにも注目し、力を入れていこうというのが、その企業の方針です。

本当の意味で優秀な人材は、実は市場に出てくる前の段階で、すでに次の転職先が決まっているということが少なくありません。その決め手は、個人的なつながりや人脈になります。そんな事例を、2つ紹介しましょう。

事例1 情報サービス企業A社の例~スカウトリストを自ら作成~

最初は、ある情報サービス系の企業のケースです。この企業では、社長や役員はもとより、社員全員が常に採用のことを考え、入社が誘える相手をストックして、自社なりのスカウトリストを作成しています。いわば、社員紹介制度の進化版といったところでしょうか。

ミスマッチになることも多い中途採用の中で、紹介などによる人的なつながりがあれば、入社希望者の様々な評判を周辺から聞くことができ、その人の仕事ぶりも事前によく分かります。実際、海外の企業は、その人の周辺から伝手を頼って評判を集めることを盛んに行っています。こうしたスカウト戦術は、ミスマッチを減らす上で、大きなメリットがある手法なのです。

ここで問題になるのは、こうした動きを組織的に行うと、顧客先や取引先など、あまりにも近しいところからの露骨な引き抜きにつながる場合もあり、企業のモラルが問題になる恐れがあることです。

ただ、転職というのは、原則としてあくまで本人の意思によるものであり、本人の意思さえ固まっていれば、きちんと手順を踏み、相手への仁義を尽くすことで、企業モラルの問題は最終的には解決ができることです。この企業では、こうした注意事項を社内で共有し、行き過ぎた動きを防止した上で、人材確保の取り組みを行っています。

例えばスカウトしたからといって、100%入社がOKになるわけではありません。それなりの選考プロセスを実施することを義務付けています。無理やりの引き抜きでは不採用になってしまうので、紹介した本人にもメリットがなく、これもトラブル防止策の一つとなっています。

この会社は社員100人ほどの会社ですが、この活動を通じて、年間5~6人の中途採用者をコンスタントに確保できているそうです。効果的な手法を構想して「全社的に取り組む」、トラブルを恐れず、「トラブルにならない方法を考える」という姿勢は、参考になるはずです。

事例2 IT企業B社の例~内定辞退者との付き合いを継続しあえて戦場では戦わない~

もう一つは、あるIT企業の事例です。この企業では、経営者や幹部社員が、主に新卒採用での内定辞退者と個人的な交際などの名目でつながりを作り、付き合いを続けているのです。

内定辞退者というのは、少なくとも最終段階までは自社に興味を持ってくれていた人であり、会社としても採用に足ると判断した人です。そうした人が社会に出て数年が経過してくると、自分の職業人生のことをいろいろ考えはじめ、中には転職を考え始める人も出てきます。そんな時に入社の誘いができる距離を保っていると、採用に結び付くことがあるそうです。

お互いの関係は内定辞退になった当時よりも深まっているので、誘うか誘わないかの判断も含めて、よりミスマッチの少ない採用が可能になります。

もちろん、個人的な友人関係なので、すべてが採用のためということではありませんが、この企業では、そういう効果も考えて、定期的なアプローチを意図的に行っています。ミスマッチが少ない人脈の広げ方ということでは、参考になる部分もあるでしょう。

ただし、こうした活動は、比較的長期にわたって、できるだけ多くの人が、コンスタントに取り組んでいかなければ、結果につながりません。対象になる人材のストックが少なければ、採用につながる可能性は限りなく低く、人数が計算できるレベルにはなりません。

しかし、数年という年月をかけて、人材のストックがそれなりに増えてくると、毎年何人かがコンスタントに入社するようになってきます。こうした方法で、確実に戦力になる経験者が、年に数人でも入社してくれれば、特に中堅中小企業にとってはかなり大きなことです。

これからの中途採用活動は、さらに厳しくなることが予想されます。優秀な人材を確保するためには、市場競争になる前のインフォーマルな段階で、声をかけられる人、コンタクトできる人をいかに増やすかなどという方法も考えていかなくてはなりません。そのためには、あえて戦場では戦わないという「ゲリラ的な発想」も必要なのではないでしょうか。

次回は、採用と関係が深い早期離職の問題について考えてみたいと思います。

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