ページの先頭です。
サイト内の現在位置を表示しています。
  1. ホーム
  2. ビズサプリ 総務人事ポータル
  3. 多様化する働く場。オフィスは本当に必要ない?
ここから本文です。

総務人事向け
「月刊総務」編集長が語る
新時代の戦略総務 ~変わるモノ、継続するモノ~(第1回)

多様化する働く場。オフィスは本当に必要ない?

2020年10月

多様化する働く場。オフィスは本当に必要ない?

コロナ禍で強制的に在宅勤務を実施した企業も多かったと思います。そして、「案外、仕事ができるよね」、「このまま在宅勤務を継続したい」、そのような感想も多かったのではないでしょうか。その結果、出てきた議論がオフィス不要論です。本当にオフィスは必要ないのか? 在宅勤務とのすみ分けは可能なのか? 今回はオフィスの在り方について考えてみます。

在宅勤務が進み、オフィスを解約する企業も出てきた

コロナ禍により実施された在宅勤務。緊急事態宣言後、働く場をどこに定めるか、企業の対応もさまざまです。原則出社とする企業もあれば、出社は週に2日、出社率を50%に抑える、といったハイブリット型。さらには、無期限に在宅勤務を認めるところもあれば、この機会にオフィスを解約し全社員フルリモートに移行、そのような企業もあります。

一方で、長期にわたる在宅勤務により、さまざまな課題も現れてきました。まずはコミュニケーションの問題です。雑談やちょっとしたコミュニケーションが取りづらくなった、というものです。確かに、Web会議システムで会議自体は簡単にできるようになりました。この部分は大きな進化です。しかし、リアルの場での会議、会議後の雑談、横に席を並べることでのとりとめのない会話、このような雑談的コミュニケーションの量が激減したのです。コミュニケーションの量が減ったことにより、「仕事の進捗が分かりづらい」、「一体感が薄まりつつある」、「ちょっとした問題が相談できず、不安を抱えたまま仕事をしている」、そのような状態がじわじわと広がってきているようです。

組織の維持、つながり感の維持のためのオフィス

課題はまだあります。メンタル不調の可能性です。独り暮らしをしている場合、場合によっては、一日中誰ともコミュニケーションを取らないという日もあり、それが続くと孤独感にさいなまれるというものです。不安感や孤独感を抱えながら、難しい仕事に一人取り組む。会社で仕事をする場合には考えられなかった状態が現出します。

そもそも、人間は群れて暮らしてきた生き物です。約20万年にホモ・サピエンスが現れ、一貫して、家族・地域コミュニティ・社会的な組織、という群れの中で生活してきました。在宅勤務のような一人で生活することにそもそも慣れていないという側面もあります。

さらに、組織の維持という面でも、同じ時間に同じ場に居ることで、つながり感やコミュニティ意識を醸成してきました。企業では、このつながり感をリアルなイベントを通じて醸成してきた経緯もあります。

群れて暮らす人間がつながりを維持し、仕事の効率性を高めるための装置として作ったのが、集まって働く場であるオフィスです。ですが、このコロナ禍において、オフィスの在り方そのものが問われ始めているのです。

新時代の戦略総務 ~変わるモノ、継続するモノ~

リモートワークも含めたABWで考える

オフィス作りの最新のソリューションと言えば、ABW(Activity-based working)です。ABWとは、仕事内容に応じて、働く人が自由に作業場所を選べるワークスタイルのことです。例えば、「企画書を書く」「集中作業ができる集中スペースがある」「二人での作業(付け合わせ、読み合わせ)や複数人での作業に適したスペースがある」「複数人でもミーティングに適したスペースがある」「話しかけられても良い状態での一人で仕事をする場がある」など、さまざまな仕事内容や働き方に適したスペースを提供することが、最新のオフィスの在り方となっているのです。

在宅勤務だけ、オフィス勤務だけ、という考えではなく、オフィス、自宅、サテライト・コワーキングスペース、他スペースも含めた働く場の中で、各自の仕事が最も捗る場を探す、そのような意味でのABWを考える必要があります。つまり、働く場の多様性という考え方につながるのです。

働き方改革も多様性が大事だといわれます。さらに価値観も多様化しています。多様な働き方に応えられる、最大限の選択肢の提供が企業側には求められるのです。となると、オフィスを閉鎖して、リモートワークだけの提供となると、その選択肢の幅を狭めてしまうことになります。

オフィスに求められるのは、コラボレーション、偶発的な出会い、つながり感

とは言え、従来のオフィスを維持するだけでいいというわけにはいきません。先にABWと記しましたが、この機能に特化した場としてのオフィスを考えなければならないのです。大事なのは、コロナ禍により、オフィスが不要という論点ではなく、オフィスの真の在り方が問われているのです。

皆さんも経験した在宅勤務。家庭環境にも左右されますが、この働き方で最も捗るのが集中業務、ソロワークです。社内にも集中スペースはありますが、声をかけられるケースもあるでしょう。しかし、在宅であれば、完全に集中することができます。さらに、書類をクラウドに保存し、いつでも取り出すことができれば、事務作業も難なくこなせます。Web会議システムを使えば、社内外を問わずいつでも打ち合わせが可能です。

では、オフィスでの仕事は何が適しているのでしょうか。

一つは、ブレスト的なコラボレーションワークです。Web会議で難しいのが、ブレストやわいわいがやがやとしたコラボレーションワークです。声がかぶると聞きづらいですし、相手の間を考慮しながら発言しなくてはならず、なかなか熱い議論がしにくいものです。このようなブレスト的なコラボレーションワークは、オフィスの方が適しているでしょう。

もう一つが、偶発的な出会いの場の提供です。フリーアドレス、コピー機を一カ所に集めるマグネットポイント、長居ができるリフレッシュルームなどが、出会いを提供するための制度や場所になります。例えば、コピーを取っていたら、予期せず他部門の同期に出くわして、何気ない会話から、新規事業のアイデアが浮かぶ。そのような偶発的な出会いによるイノベーション創出の場です。在宅勤務だとこういう状況を作り出せません。

最後の一つが、先述したつながり感です。コミュニティ意識の醸成と強化の場所としてもオフィスは役立ちます。

コロナ禍によって在宅勤務が浸透しつつある企業では、オフィス不要論がでているケースもあるでしょう。ですが、オフィスには「コラボレーション」「偶発的な出会いの場」「つながり感」という在宅勤務にはない3つの機能があります。まずは従業員にどういう働き方をしてほしいかを考え、その上でオフィスの在り方を検討してみてはいかがでしょうか。

いまほしい栄養(情報)をピンポイントで補給できる“ビジネスのサプリメント”
「ビズサプリ」のご紹介

ページ共通メニューここまで。

ページの先頭へ戻る