労働法専門弁護士が回答! 労務管理担当者が知っておくべきFAQ集(第8回)
管理職についても労働時間把握が義務付けられるのでしょうか?
2019年1月(改訂:2021年4月)
Q. 管理職についても労働時間把握が義務付けられるのでしょうか?
働き方改革関連法により、2019年4月1日から管理職についても労働時間把握を義務付ける条文が新設されたと聞きました。詳しく教えてください。
A. 労働安全衛生法(以下、労安衛法)で労働時間の状況を把握する義務が新設
現行法上、残業月100時間を超える者から申出があった場合には、医師の面接指導を実施する義務が定められています(労安衛法66条の8、同規則52条の2)。これは大企業も中小企業も実施しなければならない義務です。管理監督者や裁量労働者も適用対象です。
今回の改正により、この義務が生じる時間数が「月80時間超」に変わります。そのため、2019年4月1日以降は、残業月80時間を超える者から申出があった場合に医師の面接指導を実施しなければなりません。
ここからが本題ですが、働き方改革関連法は、医師の面接指導を実施するために「労働者の労働時間の状況を把握しなければならない」という条文を新設しました(労安衛法66条の8の3)。この条文の施行も2019年4月1日です。企業が医師の面接指導を実施する義務を果たすには、誰が「月80時間超」の残業をしたのかをきちんと把握する必要があるからです。
したがって、従業員の労働時間を適切に把握することは、時間外労働の上限規制(三六協定)や割増賃金支払いは勿論のこと、労安衛法上の義務を果たすためにも必要なことといえます。注目すべきは、労安衛法の条文にいう「労働者」に管理監督者や裁量労働者も含まれる点です。厳格な時間管理の対象とされていない管理監督者や裁量労働者についても、労安衛法により労働時間の状況把握が義務付けられるという点は認識しておくべきです。
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