総務人事向け
弁護士が回答する! 総務人事が知っておくべき制度(第12回)
パワハラ防止策の義務化とは何か?
2019年5月
Q. パワハラ防止策の義務化とは何か?
職場のパワハラ防止策を義務付ける改正法案が国会に提出されたと聞きましたが、改正法が施行されたら、企業はどのような対応をとる必要がありますか?
A. 方針策定や相談窓口が基本線だがパワハラ特有の内容も
職場のハラスメントのうち「セクハラ」「マタハラ」に関しては、すでに現行法で企業が防止策を講じるよう義務付けられています(均等法11条、11条の2、育児介護休業法25条)。
企業の具体策は厚労省指針に定められており、(1)セクハラ・マタハラを許さない旨の会社方針を明確化し、社内に周知・啓発すること(方針策定)、(2)相談窓口を設置すること(相談窓口)、(3)相談に応じて事実確認を行い再発防止や必要な処分を行うこと(事後対応)などが挙げられています。
これに対し、「パワハラ」に関しては、これまで法律に条文が置かれていませんでした。そこで、2019年3月に政府が改正法案を国会提出し、今国会中の成立が見込まれる状況です。労働施策総合推進法30条の2という新条文において、パワハラを「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」と定義した上で、企業がその防止のために「雇用管理上必要な措置」を講じるよう義務付けます。
企業が講ずべき具体策はやはり厚労省指針で定められることになっており、基本的にはセクハラ・マタハラと同じ上記(1)~(3)のような措置になる予定です。そのため、各企業が現時点でセクハラ・マタハラにつき実施済みの措置(方針、相談窓口など)に「パワハラ」も追加するのが対応の基本線になります。施行日は大企業が2020年4月1日、中小企業が2022年4月1日です。
一方、厚労省指針ではパワハラに特有のトピックも明らかにされる予定です。パワハラに該当する例/該当しない例、パワハラ発生の要因解消に向けた取組み(コミュニケーションの円滑化)、顧客からの迷惑行為(カスタマーハラスメント)といった点について、厚労省指針がどのような内容を示すのか、要注目です。
弁護士が回答する!総務人事が知っておくべき制度
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管理職編
筆者プロフィール
橘 大樹(たちばな ひろき)
石嵜・山中総合法律事務所 弁護士
専門分野 労働法(経営側)
慶應義塾大学法学部法律学科、一橋大学法科大学院卒業。司法試験合格後、司法修習を経て弁護士登録、石嵜・山中総合法律事務所に入所。労働法を専門分野とし、訴訟、労働審判、団体交渉などの紛争対応、顧問企業からの法律相談のほか、執筆やセミナーに活躍中。
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