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総務人事向け
弁護士が回答する! 総務人事が知っておくべき制度(第25回)

新型ウイルスに感染した疑いのある者に休業手当を支払う必要はありますか?

2020年5月

Q. 新型ウイルスに感染した疑いのある者に休業手当を支払う必要はありますか?

新型コロナウイルスが流行する中、社員から「3日ほど発熱が続いている。味覚にも異常がある」という報告がありました。社内の感染拡大防止のために休ませる必要がありますが、休業手当を支払う義務はありますか。

A. 厚生労働省は「発熱のみ」で一律に休業なら必要との見解

新型コロナウイルスへの対策が危機管理上重要な課題となっており、企業においても、感染者や濃厚接触者の対応、テレワークや時差出勤の導入などに取り組むべき状況にあります。中でも相談が多いのが「感染疑いを理由に出社しないよう指示したときに休業手当を支払う必要があるか」という点です。

「使用者の責に帰すべき事由」により休業させるときは休業手当(60%)を支払わなければなりません(労働基準法26条)。同条は労働者の生活保障を趣旨とするため、必ずしも企業に落ち度(過失)がない場合でも、経営サイドの事情に起因するのなら休業手当が必要と解釈されています(依存していた取引先から原料、材料が供給されず稼働できなかったなど。企業自身に過失がある場合は民法536条2項により賃金100%の支払義務が生じます)。

他方、「不可抗力」といえる場合に休業手当を支払う義務はありません。ここでいう不可抗力とは、(1)その原因が外部より発生した事故であること(外部要因)、(2)事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることができないこと(休業不可避)の2要件を満たす場合をいいます。

「会社判断で休ませたら休業手当必要」という言い方を聞くことがありますが、正確ではありません。会社判断であっても不可抗力で休ませざるを得ない場合(上記(1)(2)を満たす場合)は、法的には休業手当不要です。

Qにある感染疑いの事例ですが、行政見解は「発熱などの症状があることのみをもって一律に労働者に休んでいただく措置をとる場合」は、休業手当を支払う必要ありと述べています(新型コロナウイルスに関するQ&A・企業の方向け)。

しかし、37.5度以上の発熱者に勤務を命じること自体が安全配慮義務の観点から問題ですし、新型コロナウイルスを含む社内の感染予防のために休業を命じる必要性が存在します。(1)要因は労働者側の発熱にあること(外部要因)、(2)発熱を認識しながら勤務を命じるわけにはいかないこと(休業不可避)から、上記の行政見解には疑問があります。

このように、発熱者については法的に休業手当を支払う義務なしと解する余地がありますが、上記のとおり行政見解は「発熱のみ」なら必要という解釈です。しかし、行政見解を前提とする場合でも、単なる「発熱のみ」にとどまらず「発熱の継続」「倦怠感」「息苦しさ」「味覚・嗅覚障害」といった新型コロナウイルス感染を示唆する症状が見られれば、休業は不可抗力というほかなく、法的には休業手当不要と解されます。もっとも、本人申請により年休を当てはめたり、社員の生活配慮の観点から休業手当を支給したりすることは差し支えありません。

また、同居の家族が感染したという場合、社員は「濃厚接触者」に該当しますから、労働者側の要因(外部要因)により休業の必要性が生じたといえます。ただし、社員自身の体調に問題なければ、テレワークにより業務に従事することが可能かを検討します。業務の性質上テレワークは困難ということであれば「休業不可避」として法的には休業手当不要と解することができます。

弁護士が回答する!総務人事が知っておくべき制度

筆者プロフィール

橘 大樹(たちばな ひろき)

橘 大樹(たちばな ひろき)

石嵜・山中総合法律事務所 弁護士
専門分野 労働法(経営側)

慶應義塾大学法学部法律学科、一橋大学法科大学院卒業。司法試験合格後、司法修習を経て弁護士登録、石嵜・山中総合法律事務所に入所。労働法を専門分野とし、訴訟、労働審判、団体交渉などの紛争対応、顧問企業からの法律相談のほか、執筆やセミナーに活躍中。

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