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総務人事向け
弁護士が回答する! 総務人事が知っておくべき制度(第26回)

新型ウイルスへの感染リスクを理由に出社しない社員にどう対応すべきですか?

2020年6月

Q. 新型ウイルスへの感染リスクを理由に出社しない社員にどう対応すべきですか?

新型ウイルスに関する緊急事態宣言が解除され、社会一般的に出社を求める企業が多くなっています。当社も業務上の必要から殆どの社員は出社に応じていますが、「感染がこわいから出勤したくない」と出社を拒む社員も一部存在します。どう対応すべきでしょうか。

A. (1)欠勤と扱うか、(2)命令違反を理由とする処分を行うかは分けて考える

(1)欠勤と扱うかどうか

第1に、感染者数の減少等を受けて緊急事態宣言が解除され、社会一般的に出勤を求める企業が多数という状況であれば、業務命令権に基づいてオフィスへの出社を指示することは可能です。

これに対し、従業員が「感染がこわい」などの理由から出社を拒む場合、労働者側の都合により会社が指示した労務提供が履行されないということですから、労働契約の債務不履行として「欠勤」と取り扱い、給与も欠勤控除とすることができます。この場合、会社として労務提供の履行を受領する体制を整えていることを示すため、三密の回避(換気、ソーシャルディスタンスの確保、テレビ会議の活用、会議の人数制限など)、アルコール消毒液の設置といった感染予防策を講じていることも重要です。職場の感染予防策については、一般社団法人日本渡航医学会・公益社団法人日本産業衛生学会「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」が参考になります。

本人が「オフィスへの出社はしないが自宅で仕事をする」と述べた場合でも、勤務と認めず欠勤扱いとすることは可能です。労働時間とは会社の指揮命令下に置かれた時間を意味します。会社の出社指示に反して自宅で勤務しても、会社の指揮命令下の活動とは評価できない以上、労働時間には該当しないからです。

(2)命令違反を理由とする処分を行うかどうか

第2に、欠勤と扱うことが可能だとしても、それを理由とする懲戒処分や解雇が可能かはまた別の問題です。

災害時の事案ですが、阪神・淡路大震災の頃の裁判例として神戸地裁平7.6.26決定(労経速1571号23頁)があります。震災による自宅倒壊、親族宅の全焼・全壊に伴い約20日間会社への連絡なしに欠勤した従業員が懲戒解雇された事案です。裁判所は「当時の震災地の異常な諸事情を考えれば、従業員のうちの少なからぬ者が震災後間もない時期に出勤している事実があるとしても、被災者個々にはそれぞれの事情が存する」と述べて懲戒解雇は無効と判示しました。

他の従業員が出勤する状況であっても、懲戒解雇に値するほどのことかは「個々の事情」を見なければならないという判断です。事案は異なるものの、災害や感染症といった状況のもと、欠勤があったときに懲戒処分や解雇まで行うかは個々の事情を勘案して判断すべきという点では参考になります。

社会一般的に出勤を命じる企業が多い中、単に「感染がこわい」という抽象的理由では命令違反と見ざるを得ませんが、たとえば、落ち着いたとはいえ毎日一定数の感染者が発生する状況のもと、妊娠中の者や基礎疾患を有する者が通勤中・業務中の感染リスクを懸念して出勤に応じられないのはやむなきことといえます。あるいは、保育園の休園が続いており出勤できないといった事情も考えられます。これらも本人側の事情である以上、欠勤控除は可能ですが、懲戒処分や解雇の対象とするのは相当ではありません。

このように、出社命令違反を理由とする「処分」まで行うかは、従業員個々の事情も見た上で判断すべきことです。さらに、会社として特に配慮すべき事情があると認めた従業員については、一定期間中、可能であればテレワークや時差出勤などの選択肢も示しながら、必要に応じて出社してもらうといった対応も考えられるところです。

弁護士が回答する!総務人事が知っておくべき制度

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筆者プロフィール

橘 大樹(たちばな ひろき)

橘 大樹(たちばな ひろき)

石嵜・山中総合法律事務所 弁護士
専門分野 労働法(経営側)

慶應義塾大学法学部法律学科、一橋大学法科大学院卒業。司法試験合格後、司法修習を経て弁護士登録、石嵜・山中総合法律事務所に入所。労働法を専門分野とし、訴訟、労働審判、団体交渉などの紛争対応、顧問企業からの法律相談のほか、執筆やセミナーに活躍中。

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