ページの先頭です。
サイト内の現在位置を表示しています。
  1. ホーム
  2. ソリューション
  3. 総務人事
  4. 従業員のメンタル軽視は許されない時代。時代に即した対策をしていますか?
ここから本文です。

特集

従業員のメンタル軽視は許されない時代。時代に即した対策をしていますか?

2018年7月

従業員のメンタル軽視は許されない時代。時代に即した対策をしていますか?

従業員が安心して安定的に働くためには、職場の環境だけでなくメンタル面のケアも重要だ。ところが中堅企業においては、メンタルヘルスへの取り組みはなかなか進んでいないのが実情。

なぜメンタルヘルス対策が必要なのか、どう取り組めばいいか、どのような効果を期待すればいいのかなど、総務人事が知っておくべきメンタルヘルスのイロハを説明する。

メンタルヘルスを実施している企業は56.6%。まだまだ対策が遅れている

仕事の充実においてメンタル面の安定はいうまでもなく重要だ。メンタルヘルスの不調と聞くと、従来は特別な病気だととらえられがちだった。しかし現在、メンタル不調は誰もがなり得るものであるというように意識が変わってきており、政府が進める働き方改革の実行計画にもメンタルヘルス対策の目標が盛り込まれている。

2016年に厚生労働省が行った「労働安全衛生調査」によると、1年間にメンタル不調で連続1カ月以上休業した労働者の割合は0.4%、退職した労働者は0.2%となっている。これはあらゆる業種・従業員規模を平均した数字だが、単純計算で250人中1人が長期休業していることになり、無視できる数字とはいえない。

2014年の労働安全衛生法改正に基づき、労働者が50人を超える事業場には15年12月からストレスチェックの実施が義務化された。ストレスチェックを実施しないことにより罰則を受けることはないが、実施の有無にかかわらず労働基準監督署への実施報告書提出を怠ると罰則対象になるので注意が必要だ。こうした状況を受け、前出の2016年の調査では、メンタルヘルスに関して何らかの取り組みをしている企業は、従業員1000人以上の大企業においてほぼ100%に達している。しかしながら大企業以外を入れるとその数字は56.6%と急激に低くなり、中堅や中小の企業では対策が進んでいない実情が浮き彫りにされている。

では、企業はメンタルヘルス対策になぜ取り組まなければならないのか。

企業におけるメンタルヘルス対策の本質は、経営問題である。上の厚労省調査にも表れているように、メンタル不調を起こした従業員は長期休業に至る可能性があり、深刻な場合は退職にもつながる。不調を訴える従業員が休業・離職することで職場に穴が開くと、とりわけ人材不足が深刻な中堅企業では人材の手当てに頭を悩ますことになる。不調の原因が職場環境など構造的なところにあるとすれば、人材流出につながったり、メンタル不調者から会社が訴えられるといった法的リスクに発展する可能性もあるだろう。仮に休業・離職者が出ない場合でも、メンタル不調によって仕事のパフォーマンスが下がり、企業業績に悪影響を与えることもある。

従来のメンタルヘルス対策は、うつ病などを発症した従業員に対する個別対応が中心だった。もちろんメンタル不調を起こした従業員に対しては、早期発見と産業医などによる面談、必要があれば医療機関の受診、さらに休職となってしまった場合は復職に関する支援を行うことが必要だ。その上で、対策の本質を経営問題ととらえることで、メンタルヘルス不調者が出ないようにするための予防的対策に重点が移ってきている。

過重労働、パワハラ、過剰競争がメンタル不調を引き起こす

メンタルの不調は誰にでも起こり得るが、一方で職場環境をはじめとした企業の特色が理由でメンタル不調が出やすくなるケースも多い。例えば、過重労働が常態化している、パワハラが起きている、営業など限られた部門内で過剰な競争がある、職場内にコミュニケーションがない、といった特徴を持つ企業では、メンタル不調者が出やすいとされている。近年は減ってきたが、労働時間の長さを美徳と考える風潮が浸透した企業もメンタル不調者が続出しやすいといわれる。

メンタルヘルス対策で重視すべきは予防の観点だ。不調者への個別対応はもちろん重要だが、それだけでは根本的解決にならない。メンタル不調をいかに予防し、不調者が出た場合は再発をいかに防止するかを優先的に考えたい。

そのために必要なのが、円滑なコミュニケーションができる環境の醸成と、社内各部門間の連携だ。前者については、上司や同僚に相談しやすかったり、元気のない若手社員に「大丈夫?」と声をかける先輩社員がいる職場など、いわゆる風通しのよい企業では不調者が出にくい。不調予備軍に対する“気づき”も得やすく、予防に向けた有効な対策を実行できる。

後者については、様々な部門が連携してメンタル不調の予防に臨む体制がある企業は、不調者が出にくくなり、仮に出た場合でも効果的対応が可能になっている。メンタルヘルス対策を人事労務担当部門など一部の部署や社員に任せてしまう企業が多いが、各職場の管理者はもちろん、経営層や社内の状況を広く知る総務部門、衛生委員会、健康管理室や産業医・保健師、必要があれば外部の専門家なども含めた体制づくりが重要だ。

実際にメンタルヘルス対策を行うにあたり、具体的にどのような手法が考えられるだろうか。

まずは上にも挙げた産業医の活用。中堅企業では、人事部門に対応部署を設置したものの、実情は担当者が一人だけ……といったケースも見られる。そこで、産業医をメンタルが不調になった従業員の相談対応や復職判断だけでなく、予防に向けた活動の起点として活用することが効果的だ。企業全体に対して日頃から予防対策の重要性を発信し続けてもらうことで、経営者も巻き込んだ風土の醸成につなげられる。

また、相談窓口となる職場の管理職にメンタルヘルス対策研修を受けさせることも意義が大きい。管理職の意識が高まることで不調の原因になり得る職場環境の把握が進むうえ、従業員が相談しやすい環境をつくれれば予防や早期把握を実現できる。このほか、個性の強い社風がある企業であれば、採用時に社風に合った人材を選ぶことも大切だろう。

社員の年代別にケアすべきポイントを整理することも効果が大きい。若手の独身者は食事や睡眠のリズムが乱れていることが多く、そうした日頃の生活スタイルもメンタル不調に結びつくので、生活指導を行うといった対策が有効に機能するだろう。

メンタルヘルス対策を実施した2事例を紹介

従業員約700人の中堅製造業では、産業保健スタッフが中心となり、ストレスチェックを軸とした職場環境改善活動に取り組んでいる。ストレスチェックの結果を単に管理者へフィードバックするだけでなく、メンタル不調予防に活かすための施策を検討。管理職との個別面談で職場に応じた具体的なアクションプランを考案し、人事や社内カウンセラーなどとも連携して、ランチミーティングをはじめとするワークショップを開催した。その結果、各職場の課題となっていたコミュニケーションやエンゲージメントの向上につなげられたという。

従業員約300人の社会福祉事業者では、相次ぐ制度改正と人員不足から従業員にストレスがたまりがちだった。そこで、過去の不調者への対応経験をもとに組織全体で「心の健康づくり」に取り組むための上司を軸とした相談体制を構築。管理者を対象に専門医・産業医との連携や休業・復帰支援に関する研修会を実施した。また、メンタルヘルス推進委員会を発足させ、相談窓口も開設した。従業員のメンタルヘルスに対する意識が向上したことが大きな成果だという。

メンタルヘルス不調を予防する対策をしっかり行うことが、長い目で見れば自社の利益につながる。すでに取り組んでいる企業も多いが、今後取り組みを始めたい、あるいはさらに効果的な対策を模索しているという中堅企業の総務人事は、今回紹介した内容を参考にしていただきたい。

いまほしい栄養(情報)をピンポイントで補給できる“ビジネスのサプリメント”
「ビズサプリ」のご紹介

ページ共通メニューここまで。

ページの先頭へ戻る