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特集

TDM(交通需要マネジメント)とは? 2020年夏、企業はどう対応すればいいのか

2019年9月

TDM(交通需要マネジメント)とは? 2020年夏、企業はどう対応すればいいのか

TDM(交通需要マネジメント)は、2020年夏に向けた大きなテーマだ。鉄道の混雑、交通渋滞や道路の規制が予想される中、企業にとっても通勤手段、勤務時間・スタイルなど様々な対策が必要となってくるだろう。2020年夏にはどのような交通状況が想定されるのか、また、企業としてどういった対応が求められるのか。ここではTDMの基本に加えて、必要となる取り組みについて説明する。

2020年夏は都心部の交通混雑解消が大きなテーマ

TDMは「Transportation Demand management」の略で、日本では「交通需要マネジメント」と呼ばれる。簡単にいえば、鉄道や自動車をはじめとする交通利用の方法を管理し、混雑緩和に役立てる考え方である。

現在、企業の業務活動や通勤などにおいて、特に都心部では鉄道が利用されるケースも多いが、国民的一大イベントが開催される2020年夏には東京を中心に観客や関係者による利用が増え、さらに混雑することが想定される。

また、道路においても、交通量の増加に加えて規制などにより、激しい渋滞が発生することも考えられる。そこで企業にとっても、TDMの考え方を採用し、通勤などにおける鉄道利用や業務などでの自動車利用を調整・管理することで、影響を最小化し、かつ都心部や周辺地域での交通混雑を解消もしくは緩和することが重要なテーマになるわけだ。

実は、2020年夏に向けたTDM推進は、国や東京都によってすでに始まっている。例えば2017年から国などによって実施されている国民運動「テレワーク・デイズ」は、2020年夏の交通混雑回避という狙いも背景の一つにある。これを受けて関係諸機関もテレワーク推進に向けて動き出しているほか、国や東京都などによって2018年に「2020TDM推進プロジェクト」が発足し、2020年に向けたアクションプランの作成を企業に求めている。

2012年のロンドンでは在宅ワークや時差出勤が奨励された

2020年夏、東京をはじめとする地域ではイベント開催時に鉄道利用が集中することが予想される。また、自動車の交通混雑回避のために進入禁止エリアや通行禁止エリア、迂回エリアが設定されるほか、多数の道路で専用レーン・優先レーンが設けられる。

東京都は「大会輸送影響度マップ」を作成、期間中にTDMをはじめとする各種対策が行われなかった場合に想定される交通状況をシミュレーションし、鉄道や高速道路・一般道路における具体的な影響を説明している。同マップを見れば、企業や官公庁、さらには一般市民も協力したTDMの重要性を理解できるだろう。また東京都の資料によると、何らの対策も打たない場合、鉄道は特定時間に利用者が集中するため混雑し、通勤などにおける効率利用に向けた対策の立案は必至の状況。首都高速でも現在の倍の渋滞が発生するなど高速道路・一般道路の渋滞が深刻化し、物流や業務車両が大きな影響を受けると予測している。

選手やメディア関係者は約6千台の車を使って移動するので、1日につき約5~6万台に相当する交通量増加になる予定だ。鉄道においては、延べ1000万人の観客の来訪が見込まれている。1日最大約80万人の観客が鉄道を利用すると考えられており、首都圏の鉄道利用者の約1割に相当する。

出典:2020TDM推進プロジェクト『TDMハンドブック』P1-12の図を基に作成

また、マラソン、競歩、トライアスロンのような路上の競技のコース内にある道路は交通規制がかかることもあるので注意が必要だ。物流においては、競技用品や会場での飲食物、物販品などの物流、ゴミなどの静脈物流があり、搬入は数カ月程度で入ってくるものが多いが、搬出は大会終了後短期間に集中すると予定されている。道路や物流においては、交通混雑の影響を受けそうな日や時間帯を影響度マップ(注1)などで確認しておくことが必要だろう。

出典:2020TDM推進プロジェクト『TDMハンドブック』P1-3の図を基に作成

7月24日、26日に首都圏で行われた大規模交通規制テストでは、高速道路を中心に交通量を制限。一方で一般道は大渋滞が発生してしまった。政府の目標としては、2020年のイベント開催時には、平日の15%程度交通量減(休日並み)を目指しており、自動車利用者の交通行動の変容を促していくという。

ちなみに2012年のロンドンでは、2年前から企業への情報提供や対策支援が始まり、1年前には一般市民に対しても情報提供が行われている。特定地域内の大企業は関係機関のアドバイスのもとで輸送行動計画を策定し、対応を強化したほか、在宅勤務や時差出勤が奨励され、結果的に混雑の低減に成功している。

注1:影響度マップ(2020TDM推進プロジェクト)

企業としてはどういう対応が必要なのか

それでは具体的に、企業はTDMにおいてどのような対策を行えばいいのだろうか。

東京都環境局では、TDMの取り組みとして

  • 手段の変更
  • 時間帯の変更
  • 経路の変更
  • 自動車の効率利用
  • 発生源の調整

の5つを挙げている。

まず「手段の変更」では、自動車の利用自体を減らし、鉄道など公共交通機関の利用を促している。自動車を利用する場合も一定の駐車場に車を止めてその先はバスなどの交通機関を利用する「パーク&ライド」スタイルの活用を提唱。そのほか、自転車利用の環境整備も課題の一つとなっている。企業としても、業務などにおける自動車利用を減らす方策が求められる。

とはいえ前述のように鉄道も混雑が想定される。そこで次に「時間帯の変更」だが、こちらは時差出勤(オフピーク通勤)やフレックスタイムの推進により、朝夕をはじめとするピーク時に鉄道利用が集中しないような取り組みが推奨される。混雑時間帯の公共交通機関の利用をなるべく避けようという発想だ。自動車についても物流などでピーク時の配達を避けるほか、通勤時間・商習慣の見直しなどによって、混雑を避ける対策が求められる。

「経路の変更」は、通勤や業務車両などがいつも利用しているルートを変更し、混雑が想定される地域の交通量を平準化しようという提案。企業としても前出のマップなどを参考に、混雑を避けるルート設定が必要となるだろう。

「自動車の効率利用」は、カーシェアリングや相乗り、共同配送などの活用により、自動車の乗車率や貨物車の積載率を高め、自動車というソース自体を効率的に利用しようという考え方である。

最後の「発生源の調整」とは、公共交通機関も含めた交通のそもそもの利用量を減らし、混雑を抑制しようというもの。企業としては例えば在宅勤務やモバイルワーク、都心部から離れたサテライトオフィス活用などによって、交通需要の調整に寄与できる。

TDMを実施することで働き方改革が推進できる?

こうした数々のTDM対策の実施は、東京周辺の交通量低減・混雑緩和に貢献できるのはもちろんだが、まず何より企業にとっては業務活動の停滞を避けることにつながる。従来と変わらない鉄道の利用スタイルでは激しい混雑に遭遇し、出勤すら思うように行えない可能性が高いからだ。また、自動車利用で業務車両が都心部を走行すると、渋滞に巻き込まれ、業務が円滑に進まず、事業に大きな損失をもたらす可能性が指摘される。

TDM対策は、企業にとって別のメリットも考えられる。例えば、これを機会にテレワーク導入や勤務時間変更などを実施し、働き方改革に役立てることが可能だ。また、近年は大規模自然災害やパンデミックなどへの対策としてBCP(事業継続計画)の重要性が各企業で認識されているが、この機に拠点の多様化といった施策を実施することで、効果的なBCP対策の立案につなげることもできるだろう。

2020年夏に向けた具体的な対策として、まずは企業として何をしておくべきかを検討し、計画を策定することが重要だ。もちろん計画を作るだけでなく、事前に徹底的な準備を行っておくことも求められる。1年近い時間がある現時点であれば、トライ&エラーを重ねながら、より有効な対策を導き出すことが可能だろう。それに加えて、テレワーク推進といった働き方改革に活用するなど、副次的なメリットも考えられるので、関係機関が出す情報を参考にしながら自発的な取り組みを進めるべきだ。

2020年夏まであと1年。このまま無策で臨むと、人やモノの移動が制約を受け、企業活動が滞る可能性は高い。そこで企業としては、通勤時の鉄道など利用時間帯・方法の変更もさることながら、在宅勤務やサテライトオフィスの活用も有効な選択肢となるだろう。それは同時に働き方改革の推進にもつながる。総務人事担当者が中心となり、東京都や国のTDMに向けた取り組みを逐一チェックするとともに、交通混雑によって起き得る事態を想定し、その問題を低減・回避するためのアクションプランをぜひ推進していただきたい。

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