スマート総務人事術
有休取得率をアップさせるには?
2019年3月
有休取得率をアップさせるには?
相談
有給休暇の取得率がなかなか上がりません。世間では働き方改革を進める流れが強まっているので、当社も有休取得率をアップさせていきたいのですが、どうすればいいでしょうか。
回答
働き方改革の流れを受けて労働基準法が改正されることにより、2019年4月から年次有給休暇の取得が義務化されます。国としても有休取得率の向上を目指している状況で、今後、社員に有休を取得させることができなければ罰金を科される可能性もあります。取りやすさへの工夫や制度面の配慮も含めて有休取得率アップに向けた環境整備を行い、企業としてしっかり対応することを考えましょう。
まだまだ有休取得は「怠け」だと捉えられ、取得へのハードルがある
2017年の日本の有休取得率は51.1%(厚生労働省の就労条件総合調査より)で、国は2020年までに70%へ引き上げる成果目標を掲げています。実際に取得促進に向けて労働基準法が改正され、2019年4月1日から年10日以上有休の権利を持つ従業員に対して、5日以上の有休を取得させることが企業に義務化されます。
とはいえ、人員不足への対応と長時間労働の是正という相反する課題を解決することが必要であり、多くの企業が有休取得率向上に困難を感じていることでしょう。
従業員としても、有休取得に対して「怠けている」「サボっている」といったネガティブなイメージをまだまだ持っており、取得率向上にはハードルがあるのが現実です。
有休が権利であることをしっかりアナウンスし、意識改革をする
有休取得率向上に向けて人事担当者が注意したいポイントを挙げましょう。
まずは、有休申請に対して理由の説明を強要しないこと。有休は労働者が持つ権利で、本来は理由を示す必要がありません。にもかかわらず理由を強要すると、取得率は上がらないのです。有休が権利であること、働き方改革を成し遂げるために有休取得が重要であることをしっかりアナウンスし、従業員特に管理職の意識改革を促しましょう。
また、「労働時間短縮」を錦の御旗のように振りかざすのも考えものです。仕事量が変わらないのに有休取得を求められても、従業員の立場からすれば板挟みになります。安心して有休を取得できるように、仕事量・配分の調整といった取り組みが求められます。
有休取得率アップに効果のある具体的施策としては、例えば社内で一斉に有休を取得する方法が考えられます。全員が同じ日に休めば、従業員の抵抗感や罪悪感もなくせます。
また、チーム内で交代制で取得させる方法もあります。一部従業員だけが有休を取得する状況では、心理的ハードルを持つ従業員が不公平感を覚えます。交代制で休むことにすればその不公平感はなくせますし、有休取得者の偏りも排除できるでしょう。
このほか、1日単位ではなく時間単位での有休取得を可能にするなど制度面での配慮も有効です。数時間であれば罪悪感を覚えず、プライベートの事情や通院などのために有休を使うという意識が生まれ、取得率もアップするでしょう。
有休取得率をアップさせた成功例を紹介
ある広告業者では、飛び石連休の合間の平日や3連休のない月の金曜日、また土曜が祝日の際にその前の金曜か翌週月曜に有休を取得できる「プラスワン休暇」制度を導入。会社の業績を伸ばしながら有休取得も増え、69%の取得率を達成しています。
またあるIT企業では「ずる休み休暇」という制度を実施しています。「ずる休みさせてください」と申し出ればいつでも有休を取得できる制度です。「ずる休み」という表現がプラスに働き、従業員は罪悪感なく有休を取れているといいます。同社のようにユニークな名目(家族の誕生日、勉強のため、など)で有休取得を推進する企業が近年増えており、効果も上げています。
これからは有休取得率が高いことも、選ばれる企業の条件として必須になります。働き方改革の実現に加えて良い人材を集めるため、また離職を減らすためにも、有休取得率向上を成功させましょう。
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