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情シス奮闘記 中小企業編

第11回テーマ 「顔認証」(後編)

2017年12月

顔認証はセキュリティだけでなく新しいマーケティングツールにもなる?

最近話題の「顔認証」技術が、オフィスや工場への入退室管理や防犯対策に使えることがわかったアミダ社の中村和人。「うちのような中小企業でも導入できるだろうか」。情報収集のため、加藤彩を伴って、最新の認証技術が紹介される展示会に参加してみることにした。

設定や保守サポートまでワンストップ型のソリューションも登場

「わあ、人がいっぱいですね。ブースも回りきれないぐらいたくさん出展されているわ」と、会場を見て加藤彩は驚いた。この手の展示会によく来ている中村も目を見張った。ブース出展は昨年よりも確実に増えている。同時進行で行われるセミナーも大小数十のテーマに及び、情報セキュリティや認証技術に関する社会的関心が日増しに高まっているのを感じたのだ。

「全部を見る必要はないよ。とりあえず今日は顔認証技術だから」と中村。

彼の関心は、部品製造のアミダ社でどのように顔認証が導入できるか、というところにあった。例えばフロアの入退室管理や工場の防犯対策で顔認証が利用できるのか。図面などの機密情報が入っているPCのログオン管理にも、顔認証技術は使えるのか。

これらをつぶさに把握して、社長宛にレポートを書かなければならない。

「工場だけでなく、総務部にとっても顔認証は関心がありますよ。人事給与や勤務管理、マイナンバーなどの個人情報管理はますます厳しくなるでしょ。そういうところにも顔認証技術って使えるのかしら」と、加藤も自分なりのテーマをもって展示会に臨んでいるようだ。

二人がまず近づいたのは、「PCを使った顔認証システム導入セット」という展示だ。

「様々な場所、用途で利用が広まりつつある顔認証システムですが、導入の敷居の高さや運用コストなどが気になり、導入に踏み切れない方も多いのではないでしょうか。そこで当社では、より簡単に導入できる顔認証システム導入セットをご用意しております。顔認証ソフトウェアから各種ハードウェア、設定サービス、保守サポートまでを一括提供するため、安心して導入・運用することが可能です」

と、説明員が来場者の一群を前に製品の特長を解説している。

IPカメラで撮影した映像の中から顔を検出し、あらかじめデータベースに登録された顔写真画像とリアルタイムでの特定人物の監視や本人確認が可能。本人確認や不審者検出を即座に行うことができ、セキュリティの精度を高める――というのが技術の売りのようだ。登録できる顔画像の件数は1万件まで。カメラ1台で同時に5人までが認証できる。特別なサーバは必要でなく、システム一式をPCに搭載して運用できるという。

「どんな会社で実際に使われているんですか?」

積極的に質問をする加藤を見て、中村はその熱心さにあらためて驚いた。

説明員の話によると、複数の企業ですでに社員の入退室管理に使われている。業種に偏りはない。社員1000人以上の大企業だけでなく、100人未満程度の中小企業の例もあるという。「これまではICカードでのチェックが一般的でしたが、ICカードは貸し借りや盗難・紛失でなりすましの可能性があります。よりセキュリティ度を高めるために、顔認証システムの導入に踏み切る企業が増えています」と説明員。

「機密漏えいや防犯対策が必要なのは、業種を問わず、大企業も中小企業も同じです。以前は設備・システムの開発費用がかかっていましたが、近年の顔認証技術の進展で、中小企業にも容易に導入できるまで、価格もリーズナブルになっております」

という説明に、「顔認証ってうちでも導入できる技術なんだ」という思いを強くする中村だった。

興味深い利用ケースにはこういうものもあった。

とある社会福祉法人では介護施設に導入。認知症の症状で勝手に外出してしまうリスクのある入居者を事前に登録。玄関にカメラをすえて顔認証で自動検知することで、こうした“ひとり外出”事故のリスクを防いでいるという。「これまでは職員が24時間目視で見守らなければならず、職員の心身のストレスが大きかったのですが、これによってずいぶん軽減されました」

導入事例を紹介するビデオの中で、施設の職員の一人はそう語っていた。

「一般企業だけでなく、介護施設にまで! ずいぶん利用が広がっているんですね」と加藤も驚く。

顔認証でPCログオンを管理。情報の盗み見を事前に防止

加藤が関心を持っていたPCのログオンを顔認証で行えるシステムも展示されていた。PCのカメラに顔を向けると、登録ユーザーであると認識されればそれだけでログオンできる。業務利用中も一定間隔で顔認証を実施。PCの前に未登録ユーザーが着席すると、自動的に画面がロックされてしまう。認証NGとなった人物の顔画像をカメラで撮影して保存する機能もある。

「これなら、離席している間にパソコンの画面を誰かに覗き見されて、大切な情報が盗まれることがなくなりますね。」と、加藤は呟いている。

「実際の人物ではなく、その人の顔を撮影した写真をカメラに向けたら、ログオンできてしまうのではないですか」

中村は近くにいた説明員に尋ねてみた。

「その点はご心配なく。このシステムはリアルな人物の顔の動きをチェックしていますので、写真を見せただけでは反応しないようになっているんです」

「すごい技術が実用化されているんですねえ」と、加藤は目を丸くした。

「PC内蔵カメラを使うから、別にカメラを用意する必要がないよね。それとPC本体へのログオンだけでなく、ID・パスワードが必要な人事給与とか勤怠システムなどの業務アプリケーションと連携することも可能なんだな。これならうちの総務部でも使えそうだね」と、中村。

「一人ひとりがパソコンに座っている時間が管理できるわけですよね。うちの会社でも働き方改革で残業抑制が言われているから、各人の働き方を見える化するのにも役立つかもしれませんね」と、加藤は早速このシステムのアミダ社における応用イメージを思い浮かべた。

AIと連携して、広告・マーケティング分野にも応用が広がる

展示会場を歩くうち、「顔認証はセキュリティ管理だけ」という当初の二人の思い込みはだんだん変わっていった。AIと連携したマーケティング活用など、様々なパターンの認証技術が展示されていたからだ。

例えば、大量の顔情報から同一人物を見つけ出し、データマイニングを通して来店者属性、移動経路などの情報を抽出し、イベント計画、広告計画、セールスプランの立案に役立てるという使い方。大型のショッピングセンターではすでに実証実験が始まっているという。

あるいは、デジタルサイネージシステムに顔認証システムや年齢自動推定システムを組み合わせ、通りかかった人の年齢や性別を推測して、その人にあった割引クーポンや広告を表示するというソリューションの話も聞くことができた。広告業界では、新たなマーケティングを可能にする技術として顔認証に熱い視線が注がれているようだ。

「へぇ~、顔認証ってすごい広がりがあるんですね。うちの会社でも何か使えないかしら」

という加藤の感想を聞いて、中村も同感だった。

後日、中村は友人のシステムエンジニア、海田大輔と飲み屋でこんな会話を交わした。

「この前、展示会で顔認証の技術を見てきたんだ。想像以上に技術が進歩し、各社のソリューションもそろってきているのに驚いたんだよ。まだまだ実現は先の話だと思ってただけれどね」

「顔認証はまだまだ発展するよ。市場として大きいだけでなく、我々の生活を変える重要な技術になる。ただ、顔認証が人種差別や人権侵害などに使われる危険性もあるから、このあたりの法整備は今後必要になるだろうね」

と海田は教えてくれた。

中村は展示会で見てきたことや、海田から聞いた話などをベースに「最近の顔認証技術と当社セキュリティ強化への応用の可能性」と題するレポートをまとめ、江窪社長に提案することにした。どんな反応があるか今から楽しみだ。

今回のポイント

  • PCサーバで運用できる顔認証導入セットも登場。中堅中小企業への導入可能性高まる
  • PCログオンも顔で管理。情報漏えい防止や働き方の「見える化」にも役立つ
  • イベント計画、販売計画、ターゲティング広告などマーケティング分野での応用にも期待
  • 今後も高度化が進む顔認証技術。人権侵害対策など法的整備はこれからの課題
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