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特集 情シス事情を知る

サプライチェーン全体で対応が急がれる「カーボンニュートラル」
―今、企業がすべき取り組みとは―

【後編】「企業価値を高める」選ばれる企業になるために必要な『変化対応力』とは?

2023年11月

前編で解説したようにカーボンニュートラルの実現に向けて、CO2排出量削減の対応を企業は求められます。 こうした規制強化が進むと、ペーパーレス化や省エネなどの自社努力だけでは追いつかず、サプライチェーンやビジネスモデル全体の変化を見越した取り組みが必要になります。ただ、この機会を「法規制によって企業へ課せられた義務」ではなく、「製品や企業の価値を高めるチャンス」と前向きに捉えることが、長期的なカーボンニュートラル対応、ひいてはビジネス機会の拡大や企業価値向上につなげる鍵となります。後編では、社会の変化に対応し、企業価値を高める取り組み方について解説します。

CFP推進で「選ばれる企業」と「選ばれない企業」が二極化

自社のサプライチェーンに影響する「CFP(カーボンフットプリント)」とは?

2030年までにCO2排出量46%削減(2013年比)という中間目標が掲げられている中で、カーボンニュートラルに対応しなければ、今後、対応できない企業のビジネス機会は減少すると予測されます。

例えば、製造業ではサプライヤーとして選ばれなくなる可能性があります。カーボンニュートラル対応策の一つに「グリーン調達」という考え方がありますが、これは、環境負荷の少ない原材料や部品・製品などを優先して購入することです。もしサプライチェーンの川下にある企業がグリーン調達を実施すれば、自社の製品がカーボンニュートラルに“非”対応であった場合、ユーザの入札条件や購買条件を満たすことができず、機会損失につながるでしょう。

このように川下企業がグリーン調達によって製品を取捨選択するための主な指標となるのが、製品別の「CFP(カーボンフットプリント)」です。CFPとは、製品の原材料調達から生産、流通・販売、使用・維持管理、廃棄・リサイクルまでの製品ライフサイクル全体におけるCO2排出量を算出し、製品・サービスに表示することです。

【出典】経済産業省 カーボンフットプリント検討会「サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けたカーボンフットプリントの算定・検証等に関する検討会 報告書」
[NEW WINDOW]https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/carbon_footprint/pdf/20230331_1.pdf


ヨーロッパでは、すでにCFPがスタンダードになりつつあります。例えばEU市場で取引される電池について、CFPの申告や上限を義務づけた「欧州バッテリー規則」が2023年8月に発効されました。2024年から段階的に施行されていきますが、CFPが製品の評価に直結するのは時間の問題です。

日本国内でも、経済産業省が2022年9月にCFP検討会*1を設け、CFPの算定や検証、活用に向けて議論を交わしてきました。すでに「CFPレポート(案)」や「CFPガイドライン」が公表されており、日本企業にもCFPの申告が求められるようになる可能性が高まっています。

*1:サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けたカーボンフットプリントの算定・検証等に関する検討会

サプライチェーンでの物流・ロジスティクス業でもCFPの取り組みが加速

サプライチェーンにおいては部品調達だけでなく、物流においても検討する必要があります。物流・ロジスティクス業では輸配送手段に化石燃料を使用することが多く、業界全体で排出ガス規制への対応を進め始めています。今後、製造業や商社・卸業など荷主からの要望によりCO2排出量の情報を開示しなければならない場面が増えるかもしれません。なぜなら、荷主が製品のCFPを算出するためには、輸配送時の排出量も欠かせないからです。

こうした動きが拡大すれば、輸配送時の排出量がより少ない物流・ロジスティクス業者が選ばれるようになります。そのため、単に排出量を見える化するだけでなく、より効率的な配送手段・内容へと改良し、排出量を抑えることが物流業者の新たな企業価値として評価されるでしょう。

変化する製造・物流業界において選ばれる企業になるためには、「ペーパーレス化した」「空調を効率化した」といった自社努力だけでは残念ながら不十分です。外部サプライチェーンの変化に合わせて、柔軟な「変化対応力」を持った企業に変革しなければなりません。

「変化対応力」を持つ企業に変革するためには

サプライチェーンの中での「変化対応力」とは?

ここで言う変化対応力とは、すでに持っている自社の資財や技術、人材などのアセットを活かしつつ、時代のニーズに合った製品開発や業務プロセスの改善をしていくことです。

変化対応力の例として、ヨーロッパにおけるヒートポンプ搭載暖房設備の需要増が挙げられます。冬の暖房機器には、ヒートポンプ搭載暖房設備に限らず、ガスヒーターやエアコンなどいくつも選択肢があります。しかし、2022年の世界情勢の変動によりヨーロッパで天然ガスが高騰し、ガスヒーターの使用が経済的に厳しくなったことにより、ヒートポンプ技術に注目が集まりました。日本のヒートポンプ暖房設備メーカーの中でも、特にヨーロッパの環境規制に適合するよう改良した製品を扱う企業に売上拡大のチャンスが訪れたのです。

前述のような環境規制への対応やグリーン調達の管理が求められることに考慮する、つまり、自分たちのビジネスがどこにあるのか、市場はどう変化しているかといった情報を把握し、業務に活かす、という一連の取り組みを柔軟にできるようになることが「変化対応力」と言えます。

PLM(製品ライフサイクルマネジメント)で設計・製造工程の各種情報を捉えて製品単位で一元管理し、変化対応力を実現

例えば、製造業ではカーボンニュートラル対策として、CO2排出量の見える化を検討する(分析やモニタリングを含む)、もしくは、生産計画や生産実績、各種デバイス・センサーなどからCO2排出に関する情報を収集しようとしてつまずきがちと聞きます。

しかしながら、そもそもの検討として、自社製品がどのような部品構成、どのような購入品(サプライヤーの情報含む)、どのような製造工程で出来上がっているか、これらの各種情報を捉えて製品単位で一元管理するという根底が希薄なように思います。むしろこれが真っ先に着手すべき最優先課題で、製品別CO2排出量の集計にも使用する情報になります。

そこで効力を発揮するのが「PLM(製品ライフサイクルマネジメント)」という考え方です。PLMとは、製品のライフサイクル全体に渡って発生するあらゆる情報を共有するプラットフォームのことです。

製品ライフサイクルで発生する、自社製品、調達部品、製造工程等に関する情報を、BOM(部品表)とBOP(工程表)を核として可視化し、社会の変化に対しても迅速に対応できる環境を整えます。データ同士をつなぐことで製品開発リードタイムの短縮、品質向上、環境規制への対応、ゆくゆくは競合との差別化やシェア拡大が実現可能です。

PLMは従来、エンジニアリングチェーンのためのものとされてきましたが、このような社会変化への対応の中でサプライチェーンにも、より一層寄与するものとなりました。社会の変化に対応したサプライチェーンを構築して、それをエンジニアリングチェーンに素早くつなげて製品開発や企画戦略をこれまでより早く行っていくこととなります。

PLM領域で28年間国内トップシェア*2を誇るNECの「Obbligato」は、2022年7月からクラウドサービスでの提供を始め、含有化学物質管理の機能も備えており、変化を察知・迅速・柔軟に対応しサスティナブルなものづくりを実現します。

*2:株式会社テクノ・システム・リサーチ「2023年機械系CAD/PLM関連ビジネス市場分析調査」(2023年8月)

時代のニーズに順応する「変化対応力」が企業価値向上にも寄与

NECネクサソリューションズが変化対応力の実現をサポート

今後、サプライチェーンにおいてカーボンニュートラル実現に向けた動きが加速していく中で、製品別CFPの申告および改善は選ばれる企業になるために欠かせません。とはいえ、現時点で製品別CFPの提供を求めている企業はまだ少数に限られることもあり、手作業で算出している企業がほとんどです。将来的な法整備によってCFP利用が拡大すればシステム化が必要となり、部品表管理や基幹システムの機能・構造も変わっていきます。

今回、紹介したカーボンニュートラルを取り巻く製造業や物流・ロジスティクス業での変化は、あくまで一例です。カーボンニュートラルに限らず、AIや円安といった予測できない社会・市場の変化に対応していくことが、まさに「変化対応力」であり、変化対応できる企業体質になることで、どのような変化が訪れようともビジネス機会の拡大や企業価値向上につなげられるでしょう。

NECネクサソリューションズでもカーボンニュートラルの実現を見据えてさまざまな取り組みに注力しています。代表的な取り組みに、2023年11月1日より、NECネクサソリューションズは炭素会計アドバイザー協会*3に法人会員として入会したことが挙げられます。同協会の“炭素会計アドバイザー資格3級”は「環境省認定制度脱炭素アドバイザー ベーシック」に認定されており、カーボンニュートラルに関してお客様とのコミュニケーションの前線に立ち、お客様の状況に応じて必要な対応を見定める人材を今後も増やしてまいります

*3[NEW WINDOW]炭素会計アドバイザー協会

筆者プロフィール

松田 健佑(マツダ ケンスケ)

松田 健佑(まつだ けんすけ)
NECネクサソリューションズ 製造・装置ソリューション事業部
ソリューションプロデュース部 マネージャー
製造業向けの営業担当として16年、その後、PLM事業のプロデュースを担っている。製造業の開発設計部門だけでなく、生産技術・サービス技術・品質保証部門等とも連携し、Obbligatoオンプレミス・SaaSを中心としたエンジニアリング領域の導入実績多数。
<取得資格>
環境省認定制度 脱炭素アドバイザー ベーシック
AWS Certified Solutions Architect Associate
Microsoft Certified: Azure Administrator Associate

亀山 優樹(カメヤマ ユウキ)

亀山 優樹(かめやま ゆうき)
NECネクサソリューションズ 流通・サービスソリューション事業部
第二営業部 マネージャー
物流・ロジスティクスおよび卸業のお客様を中心に12年ソリューション営業を対応。パッケージありきの提案よりも業界全体の課題を踏まえた顧客課題志向での提案にて基幹~インフラまで幅広い実績を持つ。

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