再興させた、かつての駅前の“華”滞在型図書館をにぎわい創出の切り札に

大型商業施設の撤退が相次いだ県南の商都土浦市。隣接するつくば市が日本屈指の学術都市へと発展していくなかで、特に土浦駅周辺はかつてのにぎわいを失っていった。

そこで土浦市は、再開発の手段として市立図書館に注目。茨城県内で最大規模の市立図書館を駅前に設けることで、にぎわいを取り戻そうと考えたのだ。

平成29年11月27日、駅周辺の再生の切り札として図書館がオープン。副館長の大貫氏に、取り組みの詳細を聞いた。

「どんな方にも気軽に入りやすい」を重視し従来の図書館とは一線を画す

土浦市が抱えていた課題について教えてください。

これまで茨城県南部の商圏は、土浦市に集中していました。しかし、各地で郊外型のショッピングセンターが建立されるようになり、平成17年には都心と直結する鉄道「つくばエクスプレス」が開業し、さらに商圏や交通網が分散。土浦駅前に集中していた大型の商業施設は、平成の時代に入った頃から、京成百貨店、小網屋、丸井、イトーヨーカドーなどが相次いで撤退。それにより、駅前の空洞化が一気に進みました。平成27年にはイトーヨーカドーの跡地に市役所本庁舎を移転しましたが、市役所が閉庁する土日や祝日の人出は減少傾向が続いていたのです。

そのようななか、新しく市立図書館を整備することで、かつてのにぎわいを取り戻そうと考えたのです。

土浦市立図書館 副館長
大貫 三千夫(おおぬき みちお)氏

なぜ駅前の再開発に図書館を選んだのでしょう。

図書館は、公共施設のなかでも、「最も集客力が高い」と言われていたからです。また、従来の市立図書館が駅から約1.5km離れた住宅街にあり、築45年も経っていて老朽化も進んでいました。当市が行った市民の満足度調査でも、新しい図書館を求める声が最も多く出ていました。

新図書館の概要を教えてください。

駅と直結する利便性を活かし、滞在型の図書館として活用いただけるように設計が施されています。新図書館はペデストリアンデッキで土浦駅と直結し、さらに、市役所や県南生涯学習センターともつながっているため、立地的にも地域の交流拠点となっています。

市民ギャラリーや屋上ガーデンを併設した再開発ビル「アルカス土浦」の2~4階に入っていて、図書館の総床面積は5,120m2です。土浦駅と直結する2階には児童書コーナーと、待ち合わせ場所にも利用できる300タイトルの雑誌が置かれたブラウジングコーナーがあります。

そして3階部分は、一般書や専門書が配架された図書館本来の中心部。蔵書数は館内全体で約35万冊、最大で56万冊まで収蔵できます。4階はさまざまな世代が交流できるコミュニティスペースと、約100席の学習室が配されています。

エントランス

どのような図書館を目指したのですか。

まず重視したのは、どんな方にも気軽に入りやすいようにしたことです。従来型の図書館では会話や物音を立てることにデリケートになりましたが、それらをあまり気にしなくても利用できる空間を設け、ベビーカーを押す子ども連れの方も気軽に立ち寄ってもらえるようにしました。授乳室や子ども用トイレも備えています。

もうひとつは居心地のよさです。ガラス張りで開放的な吹き抜けの空間にし、屋上や4階から取り入れた光を2階まで届くような明るい図書館にしました。毎週火曜日の10~14時には、ゆっくりと図書館を利用してもらえるように、土浦市民を対象に託児サービス(事前予約制)も行っています。

ICTを導入したそうですが、その狙いを教えてください。

ひとつは利用者の利便性の向上、もうひとつは業務の効率化です。自動貸出機、自動返却機、座席管理、蔵書検索などの図書館システムを導入。自動貸出機は、スタッフが利用者にレクチャーしながら利用率100%を目指しています。実際に、子どもたちも率先して利用していますね。自動貸出機や自動返却機は順調に利用率が高まっていて、現在は開館時の混雑時を除けば、土日でも本の貸し出しや返却に行列ができることはありません。

また、閉架書庫には自動書庫を取り入れ、作業の効率化を図りました。ICTの導入は人員の削減にもつながり、当初は「新図書館のスタッフは40人ほど必要だ」と想定していましたが、現状30人程度で運営できています。

図:西側外観イメージ

子どもから高齢者まで多世代が集う市民の生涯学習や交流の拠点に

移転オープン後の状況を教えてください。

ブラウジングコーナーがある図書館の2階は駅とペデストリアンデッキで直結していますので、当初の狙い通り、通勤や通学など土浦駅を利用する多くの人に来館していただいています。オープンから半年後の段階で来館者数は、平日は1日平均で約1,600~1,700人、土日は2,000人を超えます。これは、当初想定していた旧市立図書館の2倍を上回る、3倍もの来館者となります。

午前中からお昼過ぎまでは、お年寄りや子ども連れの方の来館が多く、15時を過ぎると学校帰りの学生たちが集まってきます。とくに来館が増えているのが高校生です。土浦市内には高校が多く、市内に8校あります。高校生は放課後や休日に4階の学習室を利用してくれます。最近の高校生は家で勉強するよりも、友達同士で集まってフードコートやファストフード店で勉強することが多く、学習室も有効活用されています。今後は高校生にもっと本を読んでもらえるようにしたいですね。

また、平日の夕方過ぎはビジネスパーソンの利用が当初の予想以上に増えています。旧市立図書館からの移転を契機に、平日の開館時間を19時から20時へ延長したことが、仕事帰りの利用拡大につながっています。

さらに来館者を増やすために計画していることなどはありますか。

1階のギャラリーと連携した美術関連のイベントや、屋上のイベントスペースでコンサートなどをさまざまなカタチで開催したいと考えています。

図書館内では、オープニング企画で開催した参加者同士で本を紹介し合いながら、読みたい本を投票で決める「ビブリオバトル」に、これまでの開催時の30人を大きく上回る100人もの観戦者が集まり、大いに盛り上がりました。このように本に興味をもってもらう機会づくりにつながるイベントは、今後も定期的に開催したいと考えています。

また、移転オープンして初めての学生の夏休みを迎えますが、期間中、市立図書館を有効活用してもらえるように、自由研究や宿題を応援する講座も予定しています。

子ども用書籍検索(OPAC)

今後の展望について教えてください。

駅に隣接する滞在型図書館の特性を活かしながら、市民の生涯学習や交流の拠点として、これからもより多くの人に利用していただきたいと思っています。また、土浦市が推進する生涯学習や健康増進の普及にも努めながら、地域の活性化に取り組んでいきたいと考えています。

市の福祉部門などの担当部署で健康講座を開催することもありますが、市立図書館内でがん検診に関する健康講座を開催したところ、より多くの参加者でにぎわうことができました。気軽に立ち寄ることができる滞在型図書館は、啓発が難しいテーマの講座やイベントでも、集客が見込めることがわかりました。市が推進する健康などのテーマに関する講座を、市立図書館内で積極的に開催していく機運が高まっています。

また、土浦市は都心への通勤圏である一方で、霞ケ浦や筑波山などの自然に恵まれ、縄文時代の貝塚や、江戸時代に築かれた土浦城跡など史跡が数多く残されています。それらを活かすべく、市内にサイクリングロードを整備し、駅ビルにレンタルサイクル場を設けていくなど「自転車のまち」を推進しています。

市立図書館でも、郷土資料を活用して、土浦市の歴史を学んでもらうとともに、市内の見どころや魅力を伝えて観光支援にも積極的に貢献し、土浦市全体のにぎわいにつなげていきたいと思っています。

土浦市

  • 人口:13万9,480人(平成30年6月1日現在)
  • 世帯数:5万9,198世帯(平成30年6月1日現在)
  • 予算規模:909億6,000万円(平成30年度当初)
  • 面積:122.89km2
  • 概要
    昭和15年、土浦町と真鍋町が合併して誕生。平成18年には新治村を編入し、新たな土浦市となった。東に霞ケ浦、西に筑波山を臨む、水と緑に恵まれた歴史ある茨城県南の中核都市として発展してきた。筑波研究学園都市に隣接し、東京から60km圏内、成田国際空港から約40kmの地理的条件にも恵まれている。