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コンサルタントのコラム

正しいIT戦略のつくりかた

[最終回]方針から方策を導き出す

2010年9月(2020年10月改訂)

前回は、「IT戦略における方針(何を何に変える)を、現場の問題意識から抽出する」方法について述べました。
今回は、「方針」から「方策」を導き出してIT戦略を完成させる方法について考えてみます。

ロジカルシンキング(論理的思考)の大切さ

私たちコンサルタントはもとより、全てのビジネスパーソンにとって「ものごとを論理的に考える」ことは、日々のビジネスを効率的に進めるためにとても大切です。
なぜなら、自分ひとりでできる仕事には限界があるので、自分の考えたことを相手に受け入れてもらい相手が行動を起してくれることがビジネスにおいては必要だからです。

ロジカルシンキングの目的のひとつに、難しいものごとを単純にし構造化(誰が見てもわかりやすく)することがあります。
それにより、相手が納得してくれる可能性が高くなります。

方針から方策までを構造化する

では、どうやって方針(何を何に変える)から方策(どうやって変える)までを構造化すれば良いのでしょうか?

世の中には課題解決の手法がそれこそ無数に存在し、そこで使われる図式もさまざまです。私たちは、できる限り効率的かつ効果的にという観点で「成功要因ワークシート」と呼ぶフォーマットを採用しています。

成功要因ワークシート

[図]

現在の状態

  1. クレームの記録や分析ができていない
  2. 「クレーム対応が悪い」とお叱りを受ける
  3. 問題が燃え上がってから上司が知ることになる
  4. クレーム対応をどうしていいかわからない
  5. 担当者にクレームが届かない
  6. クレームを次の商談やサービスに生かしていない
  7. 人によってクレームの重要度の認識が違う

原因

  1. クレームであるかどうかの基準の決定が難しい
  2. 利益以外の尺度(顧客満足など)は重要視されていない
  3. クレーム受付~処理の仕組みがない
  4. 定型的なクレーム事例が共有されていない
  5. 他部門に気軽に相談できない社風である
  6. 苦情の内容を理解して伝えていない
  7. クレーム責任の所在があいまい
  8. 引継ぎに関する規定がない
  9. 顧客満足が評価指標となっていない

KGI(注1)

  1. 顧客満足度調査の「対応について」項目中の、クレーム対応に関する「不満足」回答を、現在の○○%以下にする
  2. 顧客満足の現状を把握し、クレーム数、対応時間を半減する
  3. クレーム対応が原因での解約がゼロ
  4. 紹介件数が増える

KPI(注2)

  1. クレーム管理の仕組み(システム)を構築する
  2. クレーム対応の実態を把握する
  3. クレームに対する当日のファーストレスポンス率 100%
  4. お客様への月次報告書に、クレーム報告を盛り込んでいる
  5. クレーム登録率 100%

SF(成功要因)

  1. クレーム管理機能を持つCRM(顧客管理)システムを構築する(クレーム受付~処理の仕組み、クレーム情報の共有、クレーム内容の分析・集計機能、顧客満足度調査など)
  2. 顧客満足を測定するための指標を再定義する
  3. 部門や社員の評価指標に顧客満足の要素を取り入れる
  4. CRMシステム運営・管理の責任者(部門)を明確にする

成功要因ワークシートの特徴

これは上野則男先生(システム企画研修株式会社)の目的達成型課題解決手法「MIND-SA」で使われる「丸い三角形」と呼ばれているフォーマットをアレンジしたものです。
このフォームは「目的・ねらい、問題点、改善目標、原因、解決策」の関係をまとめて図示したものです。
このワークシートの特徴は以下の3点です。

  1. IT戦略における目的・方針・方策の関係を、わかりやすく表現できる
  2. 方針が完遂され目的が達成された状態をKGI(注1)として、方策検討の最初に決定できる
  3. 方策の進捗状態を測定する対象をKPI(注2)として、方策検討と同時に定めることができる
  • 注1:経営目標やCSFが達成されたと判断するための具体的な尺度
  • 注2:CSFやアクションプランの進行状況を測定するための具体的な尺度

成功要因ワークシートによる方策の検討手順

成功要因ワークシートを使って方策を策定する作業の進め方を述べます。

手順1

方針(重要課題)を「課題」欄に記入する。
目的を「上位目的・目的」欄に記入する。

手順2

重要課題の抽出元となった問題(本コラム第2回)を参照し、「現在の状態」欄に問題となっている状態を記入する。

手順3

目指す姿(方針が完遂され目的が達成された状態)を検討し、「KGI」欄に記入する。
目指す姿は「現在の状態」の反対の状態をヒントにして、出来る限り客観的で測定可能(定量的)な指標で表現することが望ましい。

手順4

現在の状態を引き起こしている原因を検討し、「原因」欄に記入する。
この作業には、問題の当事者が参加することが望ましい。
原因の検討にはロジカルシンキングの手法が有効である。多くの原因が考えられる場合は主要な要因であり解決の可能性があるものを何点か選抜する。

手順5

原因をなくするための手段を検討し、「成功要因」欄に記入する。まれに「現在の状態」の反語が成功要因となることもある。
成功要因にはITで何とかできるもの(IT系成功要因)とITとは無関係なもの(人間系成功要因)が混在する。

手順6

成功要因の進捗をチェックする対象を検討し、「KPI」欄に記入する。
測定指標のヒントは「現在の状態」欄に書かれていることが多い。

手順7

ここまでの検討結果を逆に読み、論理的整合性をチェックする。この作業は声に出して読み上げることが効果的。

読み上げの例

「成功要因」が行われると、「原因」が解消し、「現在の状態」が→「課題」を解決し→「現在の状態」が「KGI」となり→「課題」が解決し→「目的」が達成する。

成功要因ワークシートのメリット

第1回のコラムからお読みになっている方には、この「成功要因ワークシート」には正しいIT戦略の構造である「目的・方針・方策」がわかりやすく論理的な構造で表現されていることがお分かりになると思います。
加えて、KGIが投資対効果の検討材料となり、KPIがIT戦略実施フェーズでのPDCAサイクルの指標となるといったメリットもあります。

こうして明らかになった「IT系成功要因」と「人間系成功要因」はともにIT戦略における「方策」です。
目標達成のためにはIT系と人間系の方策をともに実施していくことが必要であることを最後に記しておきます。

まとめ

  • 正しいIT戦略とは、経営目標や事業目標の達成に寄与するものであり、「目的・方針・方策」のセットで表現する。
  • 現場の問題意識をもとに有効な「方針」を抽出することができる。
  • 効果的な方策を導き出すために「成功要因ワークシート」を利用すると効率的である。
  • 目標達成のためにはIT系と人間系の方策を連携して実施すること。

執筆

NECネクサソリューションズ
シニアコンサルタント 冨澤 雅彦
[日本TOC推進協議会 正会員、日本UML推進協議会 BPMN研究会副主査]

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