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IoT
ひと目で分かるIoTへの取り組み方、真似できないデータ活用こそ成功の秘訣(第1回)

コマツのICT建機から学ぶ、頭ひとつ抜け出るIoTの取り組みとは

“あなたの会社ではIoTで何に取り組んでいますか。その狙いはなんですか?”

IoTやインダストリー4.0という言葉がトレンドとして使われるようになって、まだ1年余ですが、新聞やネットには雨後の竹の子のように数多くの企業がIoTを利用したシステムやサービスなどに関する記事が並んでいます。いずれの内容も鼻息は荒いのですが、先行する欧米企業に簡単に勝てるわけでは無いように思います。既に、米国市場では競争に負けて淘汰された企業も出ているようです。

先日あるイベントの懇親会で、某大手金融機関の担当者から、「上司からIoTに取り組めと言われたのですが、どの企業と付き合えば良いのでしょうか?」というご質問を頂きました。また、ある中堅製造業の企画本部長から「社長がIoTをやれと言っているのですが、どのベンダの製品を買えばいいのでしょうか?」と質問されました。そして、極めつけは、あるITコンサルタントさんが言っていた言葉です「IoTなんてバズワードです。あと1,2年もすれば廃れて誰も話題にしないでしょう。これからは人工知能です、人工知能があらゆる製品やサービスに組み込まれていきます。我々が、人工知能の取り組みをコンサルティングしましょう。」とのことです。

この一連の会話は、5月に慶應義塾大学日吉キャンパスで開催された『第4次産業革命に向けた日米独ワークショップ2016』(注1)というIoTや人工知能などのイベント開催後の懇親会席上での実話です。たった2時間程の懇親会で、こんな話が飛び交っていました。熱しやすく冷めやすい、日本人の実態をあらためて認識した次第です。どうやら日本のIoTは、“カオス(混沌)”の中に要るようです。皆さんの会社では、IoTにどのように取り組んでいますか。その目的は、なんですか。

IoTやインダストリー4.0にどう取り組むか

さて、このコラムではIoTやインダストリー4.0についてご紹介してきました。第3回は、ここまでのまとめとして、皆様にこの動きにどのように取り組むべきなのかその糸口を見つけて欲しいと考えています。

賢明な読者の皆様は既に気付かれていると思いますが、ベンダが売り込んでくるシステムやコンサルティングはIoT取り組みのスタートにはなりますが、ゴールは見えてきません。目指すゴールは、それぞれの企業が自ら考えて他社が真似のできないニッチトップ戦略にあります。真似される程度のIoTでは、競争優位性が失われて、次第に市場で負けることになります。『IoTで入手したデータを活用して、自らのビジネスの強みとする』これが目指すゴールとなります。ここでひとつ事例をあげてご紹介したいと思います。

日本のIoT最先端事例

日本が世界に誇る最先端IoT事例は、建機大手コマツの取り組みです。KOMTRAX(コムトラックス)というシステムを使って、全世界に展開する建機40万台をネットワークで繋いで常時監視、遠隔制御するテクノロジーです。GPS(全地球測位システム)で建機1台1台の所在を個体認識して、盗難や暴走などトラブルが発生すれば遠隔操作で即時にエンジンカットできます。

最新鋭PC200iというICT建機は、サポートセンターからオペレーターをガイドして誰でも簡単に現場作業を進めることが可能です。免許取り立てホヤホヤの新人でも、オペレーター経験数年レベルの作業を行うことができます。嘘みたいな話ですが、これを分かり易く紹介した動画がYoutubeにアップ(注2)されていますので、一度ご覧になることをオススメします。

そのシナリオは次の通りです。2人の若い女性社員が建機の免許を取得して、いきなり3日間で法面整形(のりめんせいけい)を任されるという内容です。もちろん、建機を操縦するのは全く初めてです。法面整形とは、工事現場で建機を使って指定された通りに地盤を整形することです。今回の課題は、オペレーター経験数年レベルの作業内容で、初心者が3日間では無理と言われる作業です。

初日こそ、酷いオペレーションで2人とも首を傾げながらの作業でしたが、操縦席にあるタッチパッドのガイドに従って操作を続けるだけで、次第に作業に慣れていきます。2日目には戸惑いがなくなって、タッチパッドの指示に沿って予定通りに作業を進め、3日目には見事に作業を完了してしまいます。指導したオペレーター歴10年の熟練者もびっくりの仕上がりです。

この事例が示している事実は、初心者でもICT建機を使えば中堅クラスの作業が出来ることを証明しています。コマツがここまで来るには、15年以上の時間と毎年数百億円の投資が必要でした。この成果は、膨大なデータと限りない失敗や試行錯誤が繰り返されたことによるものです。

IoTで結果を出すには

IoTで結果を出すということは、データを活用してデバイス(モノ)を自在に制御することです。コマツの競合メーカーである、米キャタピラー社や日立建機なども同様の取り組みを行っていますが、コマツがこの領域で大きく先行しています。その強みは、株価や企業業績に反映されています。

コマツは、コムトラックスをさらに進化させた“スマート・コンストラクション”を掲げて、その最新システム「KomConnect(コムコネクト)」を投入しています。データ活用をさらにレベルアップさせて、工事現場にドローンを飛ばして3次元測量データを取得、このデータを読み込んで作業計画やシミュレーションに利用することができます。従来の測量との比較は一目瞭然で、その違いがひと目で分かる動画がYoutubeにアップされています。(注3)

この2つの動画を良く観ると気づくと思いますが、これらの動画を作成したのは建機大手の小松製作所ではなく、コマツの建機をレンタルしているコマツレンタルです。つまり、コマツレンタルは熟練オペレーターが居なくても作業できるICT建機をレンタルしてもらうためにこの動画を作成したのです。その狙いは、建設業界における人件費の高騰と人手不足の深刻な状況を解決する手段がICT建機にあるとメッセージしているのです。

オペレーター経験5年以上の熟練者を集めるのは難しい状況です。しかし、「事務職の女性や新人が即戦力として現場作業で熟練者並に使えるかもしれない!」と考える建設会社の経営者は多いことでしょう。こうしたニーズを踏まえて、投入されたのがこのICT建機なのです。

IoT成功の秘訣とは

このケースをひと言でまとめると「IoT成功の秘訣はデータの蓄積とその使い方にある」となります。建機にセンサーを搭載して、ネットワークで繋ぐのはどのメーカーでも出来ます。しかし、この膨大なデータを活用して初心者を熟練者に変えるシステムを作りあげるのは簡単に出来ることではありません。コマツが生み出したビジネスモデルは、機能が豊富な建機ではなく、初心者が即戦力となる誰でも使える建機です。恐らく5年前にはユーザーの誰もが思いもしなかった新しいニーズです。

IoTをビジネスに利用して成功するために大切なのは、誰にも真似の出来ないデータ活用にチャレンジすることにあります。コマツは、次の一手としてドローンを使った新しい測量技術を使って情報化施工の更なる進化を目指している。これは、工事現場を数センチ単位の3次元画像で精密に再現して、ICT建機を使って高精度で整地するものです。さらに、ここに人工知能を組合せて、シミュレーション精度を飛躍的に高めていくようです。2020年頃の工事現場では、ロボット建機があたりまえのように使われているのかもしれません。ここで働くのは、女性や若手作業者でこれまでひと月掛かる作業を1週間で完了させてしまうのかもしれません。

頭ひとつ抜け出るIoTの取り組みとは、これまでの延長線上で製品や技術を進化させるのではなく、お客様が考えもしなかった未来のニーズや夢のようなサービスを先取りすることです。お客様が“欲しいと声をあげたそのタイミングで、目の前に一番欲しいモノを置いてみせるようなサプライズの演出こそIoT活用の本質かもしれません。かつてアップルのスティーブ・ジョブスが、iPhoneで携帯電話の世界を変革したように、これまでの常識に捕らわれない発想が必要です。

IoTをビジネスに活かすコツは、従来の考え方を変えていくところから始まります。コマツが実現したIoTによるイノベーションは、建設業界のニーズをガッチリと捉え、あらゆる産業に変革のチャンスを与えることになりました。次はあなたの会社が、そのチャンスを掴む番かもしれません。

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