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IoTの見える化とは(3)

IoTビジネスの取り組み
「モノの見える化をコトに変えてサービスビジネスを作る」

「IoTの見える化」は、新しいビジネスのチャンスとなり得るのか?

前回はIoTの「見える化」について、社内向けIoTとして、エネルギー消費量を「見える化」するケースで紹介しました。手頃なテーマであり、誰でも取り組めるIoTプロジェクトの進め方やコツについて、お話ししました。今回は社外向けIoTとして「ビジネスとして事業化する」というテーマで、IoTの「見える化」について考えて行きたいと思います。

IoTをビジネスにするということは、最終的に顧客から対価としてお金を貰う必要があります。つまり、金額に見合ったメリットが無ければ顧客はお金を支払ってはくれません。こうした取り組みが進んでいるのは、建設機械や自動車、機械などの業界です。製造業では、こうした取り組みを「製造業のサービス化」と呼んでいて、モノを作って売るビジネスではなく、モノから入手できるデータを活用して、サービス化して顧客に売るビジネスに取り組んでいます。そしてこの取り組みを最も積極的に行っているのが、米国ゼネラル・エレクトリック(GE)です。その具体的な取り組みについて、まずご紹介しましょう。

GEのIoT事例からIoTビジネスの取り組みを考察してみると

GE社は、発明王エジソンが設立した会社がその前身で、GE社として創業したのは1892年です。航空機エンジンや医療機器・鉄道・発送電機器・産業用システムの開発など、事業領域は多岐にわたります。2016年の売上は約124億ドル(約14兆円)で、従業員数は30万人の巨大企業です。GE社は、「インダストリアル・インターネット(産業のインターネット)」というコンセプトを掲げて、「製造業のサービス化」という新しいビジネスへの取り組みを進めています。グループ会社であるGEアビオニクス社は、航空機のエンジン製造とそのアフターサービスなどを行う事業セグメントです。GEアビオニクス社のIoTビジネスは、その航空機エンジンに300個ものセンサーを搭載して、ここから入手した膨大なデータを活用したサービスを顧客へ提供するというものです。

航空機エンジンに搭載されたセンサーから得られるのは、回転数・振動・温度・加速度といったさまざまなデータです。この膨大なデータを収集して解析することで、顧客にとって価値のあるさまざまなサービスを提供することができます。

例えば、特定の航路を飛ぶ旅客機のエンジンからは、どのルートで飛べば燃料消費が少なくなるのかということが分析できます。季節や条件で変わる風向きが分かれば、気流に乗って燃料消費を抑えることができます。天候による変動も考慮して、安全なルートを提示できます。また、航空機エンジンの振動や音・画像などのデータから部品の故障を予知することができます。こうしたデータを活用したサービスを利用すれば、不慮のトラブルや故障を未然に防いで、機体不良による欠便などがなくなり、安定した運行を行うことが出来ます。

このようなサービスの価値は、数値化して効果を費用に換算することが出来ます。顧客はその効果が収益に貢献していることがひと目で分かるため、このサービスを高く評価しています。つまり、膨大なデータを収集分析して、具体的な効果や価値を「見える化」して、その情報をサービスとして売っているのです。GE社の航空機エンジンシェアは世界の約3割を占めていますから、信頼性やデータの正確さに疑う余地はありません。

GE社は、航空機エンジンビジネス(航空機エンジンは、販売されるのではなく、エンジンの貸し出しと保守サービスの提供からなります)の売上に加えて、センサーから収集したデータを活用した、このIoTサービスを追加した売上を得ることができます。1つの製品から2つの売上を得る仕組みを作ることができた理由が、IoTの活用にあります。

アナログからデジタルへ、何をどのように「見える化」すれば良いのか

IoTデータを収集分析してサービス化するとは、これまで人がアナログで提供していた保守やサポートがデジタル化されて「見える化」を使ったサービスという形で提供されているということです。顧客は、従来のアナログなサービスよりも、IoTデータを「見える化」したサービスの方が、具体的で誰でもひと目で分かるところに大きなメリットを感じています。このサービスが詳細なデータを裏付けとしていることから、曖昧さが無く適確にリスクを抑えることが出来ると認識しています。

従来のサービスでは、人が提供する部分が属人的で曖昧であり、またその内容や相関関係を見ることも、理解することも難しいと感じていました。アナログからデジタルへ「見える化」することで、こうした曖昧さや不明瞭さを払拭することが出来ます。

この事例から分かることは、IoTビジネスのポイントはエンジンなどのモノにセンサーを搭載してデータを収集解析するところよりも、この膨大なデータを「顧客に分かりやすく見せる」ことの方が重要であるということです。現在日本におけるIoTの取り組みは、データを集めることばかりに注力していますが、これだけではIoTビジネスにはならないことがわかります。顧客の誰にでもひと目見てわかりやすい「見える化」が重要だと言えるです。

「見える化」を新しいビジネスにするポイントを整理する

IoTビジネスに取り組むポイントは、次のように整理することが出来ます。
ポイントは、

  • データ(サービスの素)
  • ソフトウェア(アプリケーション、サービス化の手段)
  • インターフェース:見える化(ひと目で価値を表現する仕組み)

で、これがIoTビジネスを成功させるための3大要素です。

[図]IoTビジネスを成功させるための3大要素

顧客に対して訴求する点

  • 顧客がひと目見て分かる表示、誰でも分かる内容、シンプルな結果が好まれる
  • アナログ(人)のサービスが、IoTデータ(デジタル)へ変換されて表示されている
  • IoTデータを解析した結果が、省エネや故障予知など具体的な内容として提供される
  • 費用対効果や結果が数値化され、IoTの効果を評価しやすい、メリットが分かりやすい

など

ベンダー側が留意すべき点

  • ユーザー(顧客)は「見える化」からIoTのサービス価値を認識しているか?
  • IoTのサービス価値は、他社サービスと比較してどうか?(優位性の維持が重要)
  • 独自に入手・所有するIoTデータを活用したサービスは、他社には真似されないか?
  • 独自に開発したソフトウェアを使ったサービスは他社と差別化できているか?
  • スマートフォンやタブレットの画面デザインは顧客とつながる接点。操作性や機能と同じレベルでユーザーを繋ぎ止める手段となっているか?

など

欧米では既にIoTビジネスが積極的に展開されていて、今回紹介したGEのような事例も多数報告されています。こうしたIoTビジネスで共通しているのは、「データ」・「ソフトウェア」・「インターフェース:見える化」にそれぞれ強みを持っているところです。ハードウェアは日本のものづくりが得意とする領域ですが、これら3つはいずれもソフトウェアやサービスの領域です。IoTビジネスが成功するためには、この領域に強くならなければなりません。

さて、後編ではIoTのビジネスモデルと料金体系について欧米の先行事例から整理してみます。

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