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IoTの見える化とは(4)

IoTビジネスの取り組み
「モノの見える化をコトに変えてサービスビジネスを作る」(2)

IoTビジネスの先行事例を紐解いてビジネスモデルを整理する

欧米企業のIoT先行事例を整理すると、ほぼ全てのケースで次のような仕組みになっていることがわかります。

  1. 設備や機器に搭載されたセンサーから、膨大なIoTデータを収集して、ここから価値のあるデータのみを解析する。
  2. このデータをネットワークでクラウドサーバに集めて、独自開発したソフトウェアを使い、IoTデータを処理してサービス化する。
  3. サービス化した数値や結果がひと目見てわかるように「見える化」してスマートフォンやタブレットなどで提供する。

IoTのほとんどのケースで、スマートフォンやタブレットをユーザーとのインターフェースに利用しています。そのため画面デザインや操作性は、最も重視されています。前回前編でご説明した通り、“データ(サービスの素)”、“ソフトウェア(サービス化の手段)”、“インターフェース:見える化(ひと目で価値を表現する仕組み)”の3つがIoTビジネス成功の3大要素になります。

IoTビジネスで優位性を保つためには、自社だけが入手可能で独自に所有する“データ”がある方が良いでしょう。このデータを処理する“ソフトウェア”も独自開発されたもので、他社が簡単に入手できない方が良いと思います。可能ならば内製化して門外不出とした方が良いかもしれません。そして、“インターフェース:見える化”を提供する画面デザインや操作性が優れていることも重要です。国内のIoT先進企業として有名な建設機械大手コマツのICT建機にも、この3つの強みがあります。

ICT建機に搭載されているセンサーから入手した独自の“データ”。そのデータを処理するクラウドシステムと独自開発した“ソフトウェア”、そしてその処理結果をICT建機のタッチパネルで表示・操作できる操作性の良い“インターフェース”がサービスとして提供されています。

IoTビジネスで難しい価格戦略と料金体系についての考察

IoTビジネスで難しいのは、サービスに価格を付けることです。IoTビジネスでは、これまで人が無償で提供していたコトを、デジタル化してサービス契約を結んでお金を貰う必要があります。ハードウェアならば比較する製品を参考に値付けできますが、こうしたサービスの価格は比較することが難しいのです。

例えば、GEの航空機エンジンのIoTデータを活用したサービスでは、1年間に削減できた燃料費用を試算してこれを達成出来たかどうかでサービス契約価格を決めています。GEは、インダストリアル・インターネットの効果を『Power of 1%』(1パーセントのちから)というキーワードを使って、「当社の顧客のすべてが、資産(Asset)の効率を1%改善できれば、顧客は年間利益を200億ドル(日本円で2兆円以上)増やすことが可能だ。」とメッセージしています。

このメッセージは幅広く知られていて、GEのデジタルビジネスを大きく成長させる原動力となっています。ちなみに、2016年度のGEのソフトウェア事業の売上額は約50億ドル(約6,000億円)で、2020年度にはこの売上額を3倍の150億ドル(1兆8,000億円)まで伸ばす計画です。

IoTビジネスにおける価格戦略は、顧客が価値を認めて支払ってくれる適切な価格設定と、これを説明する明確な根拠が必要となります。そして、その価格体系には3つのパターンがあります。

  1. 従来の保守契約と同じエンジンなど設備や機械1台ごとの年間保守料金(または月額保守料金)という定額サービス
  2. 会社ごとの規模やサービス内容ごとに異なる使い放題料金
  3. IoTビジネスで最も多い従量課金型サービス

このサービス価格体系は、携帯電話やクラウドサービスとほとんど同じ価格体系です。サービスを利用した分だけ支払うというスタイルは、顧客の納得感が高く価格透明性が高いため費用対効果を測りやすいというメリットがあります。

「見える化」がIoTビジネスの中心となっている理由

国内におけるIoTに対する取り組みは、社内の工場やオフィス向けの内向けがようやく始まったところです。今後は、自動車や機械、運輸、流通サービス、医療など幅広い産業でIoTを活用したさまざまな外販ビジネスが登場すると予想されています。いずれの場合も、ユーザーや顧客にデータを裏付けとしたサービスを提供する上で、数値や具体的な効果でそのメリットを明示しなければなりません。これがIoTで「見える化」を最も重要と考える理由です。

では、どのように「見える化」に取り組めば良いでしょうか? これは、先行事例やBIツールが持っているテンプレートや事例を参考にするのが良いでしょう。顧客に対して、インパクトがあって分かりやすい表現のものを探して下さい。気に入ったテンプレートや表示画面を見つけたら、収集したデータを処理した結果がこれと同じになるようなソフトウェアを開発します。その結果を顧客にテストしてもらって、操作性やデザインを少しずつ改善していけば良いのです。

こうしたやり方はアジャイル手法と呼ばれWebやクラウドの開発手法として普及しています。顧客に目に見えるかたちで、次第にサービスが良くなっていく見せ方がポイントです。

「見える化」の上手な見せ方、「見える化」のテクニックを総括する

IoTを上手に「見える化」するテクニックがあります。ここでは、その参考例をご紹介しましょう。

独機械メーカーのケーザーコンプレッサー社は、IoTビジネスとして自社製品のコンプレッサー(圧搾空気製造機械)の新しいビジネスモデルを開発しました。それは、顧客が支払う費用は、コンプレッサーが生産した圧搾空気の容積で決まるというモデルです。つまり、100立方メートル使えばその分だけ、1,000立方メートル使えばその10倍の費用を支払うというやり方です。

例えば、生産量が毎月大きく変動する工場ではコンプレッサーを購入すると大きな初期費用がかかり、その償却費用が毎年かかります。工場の稼働が少ないと、儲けは少なくなってしまいます。しかし、使った分だけの支払いならばそういうことは起こりません。逆に、稼働率が常に高い工場ならば、コンプレッサーは購入した方が割安となります。顧客は、コンプレッサーが作った圧搾空気が欲しいだけで、機種や性能は要件を満たしていれば実はあまり気にしていません。ケーザーコンプレッサー社は、在庫がダブついている機種や中古や再生品として回収した機種も、このビジネスモデルならば設備を売るわけではないので上手く活用することができます。旧型の機種を活用できるので、一石二鳥のビジネスモデルだと言えます。

IoTを活用するメリットは、アナログをデジタル化する以外にもあります。
IoTには、「時間と距離をゼロに近づける」という価値があります。具体的には、遠隔地にある製品や機器でもネットワークにつながっていればその状態や稼働状況をリアルタイムで知ることが出来るということです。製品や機器に遠隔操作機能が搭載されていれば、トラブルが発生しても状況に合わせて即時に対処することができます。

三菱電機製のレーザー加工機には、遠隔監視機能が搭載されていて故障やトラブルが生じると即時にサポートが受けられるようなサービスが提供されています(このシステムを開発・運営しているのはNECです)。不慮のトラブルや故障にもメーカーが即時対応してくれます。

独ティッセンクルップ・エレベーターは、世界で100万機以上のエレベーターを管理しています。この企業は、顧客のエレベーターをIoTで管理しています。顧客のエレベーターが故障や異常停止した場合、IoTで常時監視しているのでその状況をリアルタイムに察知することができます。

このシステムは、後付でどんなエレベーターにも取り付けることができます。エレベーターが停止してもエレベーター内に閉じ込められた人が助けを求めたり、ビルの管理人が通報したりしなくても、システムからの通知によりサポート担当者が現場へ向かいます。サポートセンターから対象のエレベーターやビル管理者へ、サポート担当者が急行するという連絡が入ります。実際にはゼロ時間にはなりませんが、連絡しなければ来ない従来のサービスと比べると顧客満足度は高くなります。

アナログとデジタルの違い:エレベータ管理のIoTユースケース

[図]エレベータ管理のIoTユースケース

このように設備や機器を扱っている企業は、IoTを活用したビジネスを今すぐに始めることができます。顧客に対する「見える化」の仕組みを作ってまず提供してみて、後は少しずつ改善してサービスを磨いていけば良いのです。みなさまもIoTの「見える化」で、IoTビジネスに取り組んでみてはいかがでしょうか。

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