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中堅企業におけるIoT導入の実践的アプローチ

製造業IoTの取り組みは全社で共有する“困りごと”からはじめる

2019年8月

はじめに

大手調査会社IDCジャパンが、国内企業3,300社以上を対象にIoTについて調査した結果によると、IoTを利用する企業は211社でIoT利用率は6.4%だったそうです。
(出所:IDCジャパンホームページ、プレスリリースより)

IoTを推進する企業の課題としては「IoT活用を主導する人材の不足」が最多で、次いで「組織間連携の不足」が多く、他にも「予算準備が不十分」や「収益性が見通せない」といった課題が上がっていたそうです。IoTの取り組みを行う企業は増えていますが、それとともにPoC(Proof of Conceptの略で「概念実証」の意味、本来は新しい概念や理論、原理、アイディアの実証を目的とした検証やデモンストレーションという意味だが、最近では先行事例の再現もPoCと呼ぶケースが増えている)から先へ進めないと言った声も多く上がるようになっています。経営トップなどから、IoTに取り組むよう指示を受けた現場部門や担当者が他社の事例やベンダからの提案を受けて実施しているプロジェクト大半で概ねPoCは成功しています。しかし、PoCで得た知見やデータを横展開したり全社展開したりすることはなく、その先が続かず行き詰ってしまう企業が出てきています。

選んだテーマは全社で取り組むべき“困りごと”なのだろうか

2015年頃から国内で注目されてきたIoTへの取組みですが、経営や上層部からの指示で、IoTに取り組んで成功した担当者の悩みが尽きません。それは、PoCの成果が社内で広がらないのです。内容に問題があるわけではなく、担当者が横展開、全社活用を掲げてもどの組織も興味は示すものの本気で取り組もうとはしないのです。「人手不足だからリソースを割けない、業績が好調なので必要性を感じない、今までのやり方でも効果が出ているので今更やり方を変えたくない」など理由はいろいろですがIoTの導入に積極的では無いのです。工場における生産性の向上を訴求しても、数パーセント程度の生産性向上ならばIoTなどやらなくても出来る。IoTプロジェクトよりも、人手不足や働き方改革を優先したいという優先度や緊急性で見劣りしているようです。また、PoCで得られた効果やその内容は特定の領域や限られた範囲でのみ利用できる技術であることが多く、説明する組織や部門で反応がバラバラなのです。事業部門や組織ごとで、優先度の高い課題やテーマが異なるため、ピンポイントで実施したPoCの事例では全社を巻き込んだ展開につながりません。

つまり、IoTに行き詰まった企業が失敗したのは“IoTのテーマ選定”にあると言えるでしょう。トップからIoTに取り組めといった指示が、曖昧だったためその内容や次の展開を考えずに実行した結果です。こうしたケースの多くは、IoTプロジェクトで失敗したくないという思いから、その企業の優先度が高い課題に取り組むIoTではなく、失敗しないIoTを選んでいます。IoT担当者に「なぜ、そのテーマをPoCとして選んだのか?」を聞くと、その大半が「失敗するリスクが低いから。難易度の高いテーマよりも、少ない費用と短い期間で成果が期待できるから。」という理由でした。つまり、“困ってない”テーマを選んでPoCを実行しています。当たり前のことですが、困ってもいないのに誰もカイゼンや見直しに取り組むわけがありません。

“AS-IS”現状と“TO-BE”あるべき姿から目指すべきゴールをイメージする

経営トップが、何を考えてIoTに取り組めと言ったのかは分かりませんが。自社が抱えている重要な“困りごと”を解決するためにIoTに取り組めと指示していたならば、もう少し状況は変わっていたのではないでしょうか。費用と時間は掛かっても、重要な“困りごと”を解決できるPoCならば、横展開、全社展開する道が開けていたかもしれません。正しい答えは、「全社で取り組むべき重要な“困りごと”」をテーマとして決めてから、IoTプロジェクトに取り組むことです。

自社の重要な課題とその現状“AS-IS”を洗い出して、あるべき姿“TO-BE”を考えて、そこからゴールを思い描きます。「製品を利用するユーザーの満足度を高める」、「生産設備の故障ゼロを目指して生産性を高める」、「働き方改革の実現を目指して、現状の体制で生産性を高める」など全社で共有できる重要度の高いテーマを選んで、IoTプロジェクトに取り組むことが行き詰まらないポイントとなります。日本におけるIoTの取り組みが行き詰まる理由として考えられるのは、海外や他社に遅れないために実施したケースが多く、テーマ選定やコール設定を曖昧なままに取り組んでしまったからではないでしょうか。筆者が所属するインダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)では、今回ご紹介したように、まず共通する重要な“困りごと”をテーマとして選び、その現状“AS-IS”とあるべき姿“TO-BE”を議論してから、実際に工場や現場でPoC“概念実証”を実施する手法を用いています。

(参考記事:なぜPoCは失敗するのか? 「つながる町工場」3社の事例にみる成功の条件

まとめ

今回は最近良く聞くPoCの失敗について、その理由と対処方法の参考例についてご説明しました。冒頭の調査会社の調査レポートで触れているように、IoTを推進する課題には「IoT活用を主導する人材の不足」、「組織間連携の不足」、「予算準備が不十分」、「収益性が見通せない」などありますが、こうした課題に隠れた重要な課題は「全社で共通するテーマを選択出来ているのか」という点です。ここで選択をミスれば、その行く先は必ず行き止まりとなってしまいます。テーマ選定こそ最も重要です。

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