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中堅企業におけるIoT導入の実践的アプローチ

IoTデータ収集と活用の考え方、IoTプラットフォームを利用したサービス化とそのエコシステムとは

2019年9月

はじめに

前回、IoTのテーマは“困りごと”からはじめるべきだというお話をいたしました。現状の(AS-IS)の“困りごと”からあるべき姿(TO-BE)を具体的にイメージして、明確なゴールを決めて実行しなければIoTプロジェクトは成功に至らず途中で止まってしまうという内容でした。今回は、そのIoTプロジェクトのあるべき姿(TO-BE)で描いたイメージで重要なIoTデータの収集と活用についてご説明します。

IoTプロジェクトで最も重要なのは「データ収集とその活用」というのを聞いたことがあると思いますが、ではどのようなデータをどのように収集してどのように蓄積すれば良いのか。まずは、この大量のIoTデータを利用するための基盤システムはどのような機能が必要なのかを考えてみたいと思います。

IoTデータはどのように収集/蓄積すれば良いのか

IoTに取り組むときに、まず考えておくべきことはどのようなデータをどれだけ管理する必要があるのかということです。IoT導入の目的は、現状の“困りごと”を解決するためのサービスを提供することです。そのサービスのモトは、収集したIoTデータを活用したソリューションから生まれます。

例えば、設備の稼働率を上げるためにはチョコ停(ちょっとした不具合などで設備の稼働が止まるコト、記録が取りにくくログに残らないケースも多いが生産計画への影響は大きくないと考えられている)やドカ停(故障やトラブルなどで設備の稼働が止まるコト、生産計画に大きな影響を及ぼす)を減らすためにIoT導入を考えてみましょう。まず、設備が稼働停止する原因について出来るだけ詳細に洗い出し、これを整理してパターンを分類します。次に、停止する前後のデータを詳細に収集します。

具体的には、音、振動、温度(設備と室温など)、光、時刻、外観、電力系(電源・電圧など)といった取得できるあらゆるオペレーション・データを取得します。さらに、どれくらいの粒度と頻度でこうしたデータを収集するのかも重要です。こうしたIoTデータは、センサーやコンピュータを使って自由自在に収集できます。しかし、どれくらいのレベル感でデータを収集するのかを決める必要があります。

これまで人間がマニュアルで取集してきたデータは、1日に1回、1時間毎1回などの頻度でしたが、これを自動化すれば1秒毎1回、1ミリセカンド(千分の一秒)毎1回、1マイクロセカンド(百万分の一秒)毎1回のデータ取得が可能となります。最新のロボットや工作機械では、1ミリセカンドレベルで稼働出来るため自動化を進めて生産性を高めることを考慮しなければなりません。1秒1回データを取る場合と、千分の一秒に1回データを取る場合ではデータ量が1,000倍違います。そして、振動データやノイズなど音声データは、データが高精度であれば設備停止の原因究明の精度も高くなります。

参考例ですが、1つの生産ラインで設備のオン/オフ稼働データをパトランプから取得した場合、1年間でギガバイトレベルのデータが蓄積されます。これを全工場の全部の設備で行った場合、軽くテラバイトレベルのデータが毎年溜まることになります。このデータをどのように解析して活用するのか、さらにこのデータを何年間保存するかなどを決める必要があります。

先行してIoTプロジェクトでPoCを行った企業の多くが直面するのが、「膨大なIoTデータをどのように収集・蓄積し、然るべきタイミングで廃棄・削除すべきなのか」ということです。膨大なIoTデータを収集/蓄積することは、そのままコスト負担となりますから、この見極めは重要です。

IoTデータを効率的かつ上手く活用するための産業用IoTプラットフォーム

効率的かつ最適にIoTデータを収集・蓄積し、さらにそのコストを抑える手段として産業用途に特化した基盤システムを利用することが出来ます。従来のシステムは、オンプレミスが中心で工場内の設備は閉鎖系の工場内ネットワークでのみ収集・蓄積されています。膨大なIoTデータを従来の工場のシステム内に貯め続けるのは、現実的ではありません。また、基本システム(OS)も産業用途向けの基盤システムを利用して、IoTデータの収拾・蓄積を行う方が効率的です。

この産業向け基盤システムを「産業用IoTプラットフォーム(IIoTプラットフォーム)」あるいは簡単に「IoTプラットフォーム」と呼びます。国や産業などによって、様々なIoTプラットフォームがありますが、メジャーなものではドイツのシーメンス社がクラウドで提供している“MindShere(マインドスフィア)”や建設機械大手コマツなど4社が共同で提供している建設業界向けIoTプラットフォームの“LANDLOG(ランドログ)”、ファナックが提供する工作機械業界向けIoTプラットフォーム“FIELD system(フィールドシステム)”などがあります。それぞれのIoTプラットフォームは、産業や用途に特化した機能や特徴があります。IoTプラットフォームの基本的な機能は次の4つです。

  1. データの収集/蓄積
    シーメンス(MindShere)やコマツ(LANDLOG)、ファナック(FIELD system)が、独自のIoTプラットフォームを開発したのは、産業用IoTプラットフォームとして必要な基盤システム(プラットフォーム)が見つからなかったことと、膨大なIoTデータの収集と蓄積に対応するため。
  2. データの解析
    収集したデータをサービス化するうえで、最も重要な機能。自社製品からのデータだけではなく、他社製品からのデータも集めてこれを解析することで自社の強みを更に高めたサービス化が可能。
  3. ソフトウェア開発環境/アプリケーション・ストア(サービス提供)
    iPhoneとアップストア(配布)のビジネスモデルが成功モデル。IoTプラットフォームは、サービスを提供するアプリケーションの開発環境であるともに、アプリケーションを提供するマーケット。多種多様なアプリケーションを揃えることで、IoTプラットフォームの価値が高まる。パートナー・プログラムやアライアンス戦略が無いIoTプラットフォームは成功の見込みが無い。
  4. 他IoTプラットフォームとの連携によるデータの相互利用
    他IoTプラットフォーム間連携によるメリットは、データ相互互換性によって収集するデータが拡大できる。(他社製品ハードからのデータも利用する)

IoTプラットフォームは、膨大なIoTデータを効率良く収集して蓄積したそのデータを活用するための基盤システムです。IoTデータの収集/蓄積だけではなく、アプリケーション開発と配布といった機能も担います。また、他IoTプラットフォームと連携して更に多くのIoTデータを相互利用することで、利便性を向上することが可能となります。1つの企業が、ユーザーが望む全ての機能を揃えることは難しいため、これを補完するパートナーの存在が重要となります。このように複数の企業が協力して、多様なサービスを提供する仕組みを生態環境になぞらえて「エコシステム」と呼びます。

まとめ

今回は、IoTデータの収集/蓄積を担う産業用IoTプラットフォームについてご説明しました。IoTデータは、基幹システムのERPやSCMなどと違って膨大なオペレーション・データやユーザーの作業データなどを取り扱います。目標とする課題やテーマを解決するサービスを、IoTデータを活用したアプリケーションで提供します。次回は、IoTデータを活用したアプリケーション開発とそのサービス提供のビジネスモデルについてご説明いたします。

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