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中堅企業におけるIoT導入の実践的アプローチ

PoCの考え方でIoTに成功する企業と失敗する企業が分かれる

2019年11月

はじめに

前回は、ITサービスとIoTサービスの違いについて整理してご紹介しました。IoTデータを利用したサービスを考えるうえで、ポイントとなるのが、「(1)データ収集→(2)データ解析→(3)データを利用したサービス利用」の3つのステップで考えることです。さて、今回はこのIoTサービスについて具体的に考えてみたいと思います。製造業が取り組むIoTとして、ほとんど全ての企業は製造現場の設備(予知保全)や見える化(現状把握)などからはじめるのですが、PoCで息詰まってなかなかその次につながらないという話を良く聞きます。その理由は、既に事例のあるいろいろなPoC(実証実験)をそのまま真似しているため、自社のビジネスとの関連性や親和性が低いからです。こうしたPoCの繰り返しに陥らないIoTサービスへの取り組みについてお話したいと思います。

PoCの繰り返しに陥らないIoTプロジェクトの考え方

日本企業がIoT導入に取り組んで、そろそろ3年以上経ちましたが、未だにPoCを何度も繰り返している企業が多いようです。いつまで経っても「社内で横展開できない」、「独自のIoT事例を作れない」、「PoCは成功したがビジネスには貢献していない」という企業が多いようです。

これは、そもそも失敗しないPoCプロジェクトをやっているため、現場の困りごとやビジネスニーズを起点としたテーマ設定をしていないことによるものです。さらに、PoCが成功してもその成果(効果)は小さく、全社を動かすだけのメリットや訴求が出来ていないという理由もあるようです。問題はテーマ設定にあると思われます。失敗したくないという思いから、事例をそのまま真似して自社のビジネスとの関連性や親和性をあまり考慮していなため、PoCが成功しても展開出来ないのです。

数あるIoTプロジェクトのなかで、誰でも出来るPoCプロジェクトから、社内で横展開出来て、その企業独自の強みを訴求するIoTプロジェクトの参考例を紹介します。

ユースケース:「工場の電力消費の見える化から、コスト削減とCO2排出量の削減対策に取り組む」

ある工場では、2年以上にわたって工場全体および主要な設備の電力消費量の推移データを収集して、これを解析してコスト削減とCO2排出量の削減対策に取り組みました。

工場の電力消費は、1日のうちでも昼と夜で異なり、1週間のうちでも週始めと週末で差があり、季節変動や天候などにも左右されます。1時間ごとに電力消費量のデータを工場全体と設備毎に収集した結果、ボトムとピークの差が大きいほどムダが多いと言うことが分かりました。この工場で電力消費量の変動が最も大きい設備は、コンプレッサーと空調機器(エアコン)でした。また、CO2排出量については、電力会社から購入する電力は火力発電なのでCO2の排出量を増やす電力と考え、逆に太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーに置き換えればCO2を減らすことになります。但し、再生可能エネルギーは、設備など電力コストが高くなるためこれを抑える仕組みなど考えて、電力コストの差額とCO2排出量の収支についてバランスに留意する必要があります。

この工場では試行錯誤していろいろな組み合わせを検討し、他の工場への展開も無理なく実現出来て偏らない電力消費を考えました。電力会社から購入する電力は、昼間は高く夜間は安い。CO2排出量は、火力発電による電力を再生可能エネルギーに置き換えれば削減することが可能となりますが、電力コストは上昇する。こうしたデータを収集した結果、使用する電力のピークを抑えて可能な限り平準化することでムダを減らせることが分かりました。

収集したデータにもとづいて、電力会社との基本契約を見直した結果、この工場では電気代を約4分の1減らすことに成功しました。また、電力消費量の変動を減らすためには、工場の屋根に太陽光パネルを置いて自家発電し、これを蓄電して電力会社から購入する電力を減らすとともに、余剰電力がある場合には夏場など積極的に売電するなどしました。こうした取り組みをまとめて、環境活動としてCO2排出量削減量として分かりやすい指標で社内外に発信したところ、取引先や株主などから高い評価を受けたそうです。

つまり、このIoTプロジェクトは電力データの収集を環境活動へ展開することが本当の狙いだったとのことです。時間を掛けてデータを収集したことで、企業としての姿勢や社員の意識改革にもつなげることに成功しています。

独自の評価指標を考えることで、分かりやすく効果を見せる

電力消費量のデータを収集するIoTプロジェクトは、多くの企業で取り組んでいますが、今回ご紹介したこのユースケースのように2,3年という時間を掛けて電力消費量を減らすだけではなく、CO2排出量削減や他工場への展開を考えた取り組みまで進めた企業は見当たりません。また最初にテーマを設定したときに、成果をどのように展開するかという議論をしていたことが大きいと考えられます。

先行事例として、IoTプロジェクトで様々なデータを収集しているケースはあるのですが、そのデータをどのように活用すれば良いのかは、企業によってそれぞれ異なります。

この工場の狙いは、「電力消費量の平準化とCO2排出量の削減をバランス良く両立する」ということです。この工場ではIoTから環境活動に繋げていますが、こうした電力管理ノウハウをサービス化して、他社へソリューション展開する事業を考えることも可能です。工場を持つ製造業だからこそ、同じ悩みや課題を共有してそのノウハウを提供することが可能です。

電力消費量を削減することやCO2排出量を削減することは、社会全体の課題として取り組むべきテーマでもあります。同じ製造業でも完成品メーカーと部品メーカーでは役割と顧客が違うため電力消費量の削減という取り組みは同じでも、その先は少し変わります。ここでは、機械や機器などの完成品メーカーを想定して、この先の取り組みについて考えてみたいと思います。

同じ製造業でも、環境や状況が全く異なるため電力消費量の見える化に取り組んだとしてもそれぞれ異なるのですが、実績と経験からポイントを見極める力は強くなります。IoT導入効果を分かりやすく見せる評価指標の考え方や見せ方が、他社に提供する大きな価値となります。分かりやすい評価指標やアプリ(システム)は、多くの企業から高い評価を受けることになるでしょう。

IoTプロジェクトのPoCのテーマ設定は、社内で行うPoCを社外へ展開するという発想に向いています。工場内の設備監視をIoTプロジェクトで成功すれば、それはお客様に販売した製品のアフターサービスやメンテナンスサービスにも応用できます。この場合には、設備の稼働時間や稼働データをお客様に販売した製品の利用状況や故障データに置き換えて考えることが出来ます。

ある企業では、型落ちした製品や中古で戻ってきた自社製品を、販売ではなく貸出サービスとして、従量課金ベースで提供するというビジネスを考えたところもあります。従来ならば新品でも安売りするしかない新古品や、純正部品で完璧にメンテナンスした中古品を利用時間や利用データをIoT対応することで新しいビジネスに甦らせることが出来ます。

まとめ

今回は、「工場の電力消費量を削減する」というIoTプロジェクトのユースケースを事例として、IoTサービスの考え方についてご紹介しました。PoCを繰り返すのではなく、PoCを社内展開や事業化する考え方についてもご説明しました。次回は、IoT導入における製品(モノ)とサービス(コト)の役割や使い分けについて掘り下げたいと思います。

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