ページの先頭です。
サイト内の現在位置を表示しています。
  1. ホーム
  2. ソリューション
  3. IoT
  4. IoTの展望「スマート製造業からスマート社会へ」、2020年から未来を予想する
ここから本文です。

中堅企業におけるIoT導入の実践的アプローチ

IoTの展望「スマート製造業からスマート社会へ」、2020年から未来を予想する

2020年1月

はじめに

2020年あけましておめでとうございます。

日本にとって、大きなターニングポイントとなる2020年を迎えることが出来ました。今年は、東京オリンピック・パラリンピック開催年です。しかし、ビジネス環境はこれからの厳しい見通しが予想されます。昨年2019年3月期の企業業績は、リーマンショック以来で最高の売上、最高の利益を上げた企業が多かったのですが、2020年3月期は一転して減収減益となる企業が急拡大しています。その背景には、英国の欧州連合離脱「BREXIT」や米中貿易摩擦、地球温暖化による異常気象などがあげられます。これまでIoTに対する取り組みは、好調な企業業績のもとにPoC(概念実証)レベルの試作的な意味合いが多く、IoTが企業業績に貢献している事例はごくわずかでした。しかし、今後は売上、収益に貢献するIoTが増えるととともに、成功の見通しが無いIoTの取り組みはバッサリ切り捨てられると予想されます。今回は、2020年というターニングポイントから5年先の2025年、10年後の2030年を想定したIoTの未来予想図について予測してみたいと思います。

DXレポート『2025年の崖』は本当にやってくるのか!?

2018年9月に経済産業省が公開したDXレポート『2025年の崖』はご存知でしょうか? これは、多くの日本企業では老朽化した基幹システムの維持管理にIT予算の8割を割いているという実情が、DXへの取り組みの足枷となっているのではないか?という問題提起した文書です。このDXレポートでは、老朽化した基幹システムを刷新しなければ2025年以降で毎年12兆円もの経済損失が懸念されるという内容になっています。事実、日本企業の競争力の低下を示唆されるニュースやデータが出ていて、IT人材不足などが企業競争力を低下させる要因となることを『2025年の崖』と称して危機感を喚起しています。

老朽化した基幹システムを、2025年以降も放置したからと言って突然何かトラブルや事件が生じるというわけではありませんが、2025年あたりがその先2030年の勝ち組と負け組を分けるターニングポイントとなるのは確実だと思われます。2025年をターニングポイントとしているのは、ドイツが取り組んでいるインダストリー4.0(第4次産業革命)のターゲットが2025年から2030年であること、これを見据えた中国が取り組んでいる「中国製造2025」が同じく2025年をターゲットとしていること。日本では、次世代無線通信5Gが全国で利用可能となり大阪で開催されるEXPO2025があります。また、既存の基幹システムを構築したIT人材が定年退職する頃です。いずれにしても、日本が世界トップレベルの競争力を誇っていた時代を知る人材が退職して、人手不足による技能継承やノウハウの分断化が懸念されるタイムラインがこの時期と重なるのです。

製造業のサービス化が『2025年の崖』を勝ち残る分かれ目

この連載コラムでは、IoTをテーマに企業や社会といった大きな括りではなく、製造現場やPoC(概念実証、実証実験)といったレベルでその取り組みについて紹介してきましたが、2020年という節目を迎えたことから中長期的な展望について考察してみたいと思います。まず製造業のサービス化ですが、製造業の業績が一転して厳しい見通しが予想されることからサービス化に成功する製造業と失敗する製造業では、生き残りの分岐点となるのではないかと思います。IoTを他社に先駆けて実装してビジネス展開出来れば、モノ(有形物)から売上に加えて、コト(サービス:無形物)や経験(ノウハウ:無形物)からの売上/収益が期待出来ます。アップル社は、iPhoneやiPadといった製品(モノ:無形物)が売れなくても、アプリやコンテンツ(音楽や動画など)といったコト(サービス:無形物)による売上で不足を補完しています。ICT建設機械に取り組むコマツは、NTTドコモ、オプティム、SAPジャパンと組んでLANDLOG(ランドログ)という合弁会社でIoTプラットフォームビジネスを展開しています。このIoTプラットフォームに50社以上のパートナー企業が集まり、アプリケーション開発して新しいビジネスモデルを作ろうとしています。詳細で膨大なデータを蓄積して、このデータを活用したデータ駆動形ビジネスに取り組んでいて、既に収益化に成功しているケースもあります。

出所:『デジタルファースト・ソサエティ』日刊工業新聞社、2019年12月10日刊

IoTへの取り組みには、3つの連携ステージがあって現在は「第1ステージ:自社内」のIoT導入のフェーズに居ると思われます。間もなく多くの企業では、IoTデータの可視化(見える化)が完了して、ここで蓄積、分析されたデータを利用した新しいサービスが多数登場すると思われます。これが製造業のサービス化です。次に、同じ業界内で似たようなサービスが連携、統廃合されて行くと予想されます。この段階が「第2ステージ:コンソーシアム(業種内、エコシステム構築)」です。企業のIoTプラットフォーム間が連携して、相互にデータ利用出来るようになります。最終的には、業界としてまとまってエコシステムが形成され、エンドユーザーはそのベンダの製品を利用しても同じアプリケーションを使って欲しいサービスを利用することが出来るようになります。これは、AndroidとiOSで同じアプリが利用出来ることと同じです。メーカーごとに製品は違っていても、1つのアプリで全て操作、利用出来るというメリットを享受出来ます。ここから外れた製品は、誰も使わなくなる可能性が高いと思われます。更に「第3ステージ:社会基盤(異業種間連携)」へ段階が進むことになります。例えば、自動運転車と行政システム(スマートシティ)が連携すると、災害発生時には自動運転車を安全に誘導することが可能となります。また、災害の状況は自動運転車のカメラからのデータを収集してリアルタイムで状況把握することが可能となります。平常時と緊急時で、その状況に合わせたデータ共有、データ活用が可能となります。

出所:『デジタルファースト・ソサエティ』日刊工業新聞社、2019年12月10日刊

まとめ

今回は、2020年という節目に合わせてIoTがどのように発展していくのかについてご紹介いたしました。この内容は、筆者が編集著作者として書いている『デジタルファースト・ソサエティ』(日刊工業新聞社より刊行)でご紹介しています。この内容では、これまでの経緯やアーム、東芝機械、ウイングアーク1stといった実際にIoTに取り組んでいる企業の事例も紹介していますので、より具体的な取り組みや各社の狙いを読み解くことが出来ます。(すみません、宣伝入っています)このコラムを読んで頂いている皆様は既に良くご理解されていると思いますが、IoTは目的ではなく手段なので目指すゴールは自社の競争力を高めることにあります。これまでのIoTは、繋げること、データを収集すること、「見える化」することなどが中心でしたが、2020年以降はデータ駆動型のビジネスモデル実現を目指してデータ活用による本格的な戦いが始まることになります。時代のターニングポイントに立っていることを実感するとともに、この先2025年、2030年を見据えて共に勝ち残る未来を目指して皆様とチャンスを一緒に掴みたいと思います。

ページ共通メニューここまで。

ページの先頭へ戻る