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中堅企業におけるIoT導入の実践的アプローチ

ゲームチェンジ、勝ち残るプラットフォーム・エコシステムとサービスタイプ

2020年4月

はじめに

前回は、IoT成功は「プラットフォームとアプリケーション」どちらが先なのかというテーマでお話しました。その答えは、“顧客ニーズが求めているのは、ニーズに合致したアプリケーションを豊富に品揃えしているプラットフォーム”であるため、まず優れたアプリケーションを出来るだけ揃える必要があること。次いで、アプリケーションの品揃えを拡充するためにプラットフォーム上の開発しやすさや使いやすさを整えていくこと。他のプラットフォームには無いサービスを提供する独自性はプラットフォームに収集蓄積されたデータにあること。

つまり、IoT成功の鍵は他のプラットフォームと同じアプリケーションであってもそこに蓄積されたデータが違うことによる優位性にあることをお話しました。今回は、製造業のサービス化を成功に結びつくプラットフォーム・エコシステムと勝ち残るテーマの整理について掘り下げてみたいと思います。

日本の製造業がIoTで取り組むべきポイントはどこにあるのか

日本企業は、経験と強みを生かして「モノを製造・提供して、顧客から対価を得る」という考え方から、「顧客の経験価値を高めるために、モノに加え、サービス的要素を提供し顧客とともに価値づくりを行う」という考え方への変革、「モノづくり」から「コトづくり」への変革が求められるのではないかと思います。この変革はメーカー視点から顧客視点への変革であり、顧客の経験価値を最大化する取り組みです。

最近のトレンドだと、デザインシンキング(デザイン思考)への取り組みがこれに近いのではないかと思います。既に様々なメディアや書籍などが紹介していて、多くの企業が取り組んでいます。デザインシンキングとは、「ユーザーに寄り添うことでイノベーションを生むという考え方、さまざまな製品のコモディティ化(一般化、大衆化)が進む現代において、ものづくりの重要なポイントになっている。」と言う言葉が、製造業にはしっくり来ると思います。

顧客やユーザーのニーズは多様化していますから、製造業はこうした要望に応えるために製品(モノ、ハードウェア)とサービス(コト、ソフトウエア)の両方で顧客ニーズを満足させなければなりません。そのサービス提供の基盤となるのが、プラットフォーム・エコシステムです。「モノづくり」と「コトづくり」の両方の要望に応えるためには、自社だけで全て揃えるこれまでの垂直統合型のやり方だと、時間とコストとリソース(人材やノウハウ)を全部揃えられるのは一握りの大企業だけです。国内市場が成長していれば、企業も成長出来るのですが、既に人口減少、市場成熟・衰退が見えている状況では難しいでしょう。

サービス市場は、まだ成長出来る可能性がある市場ですが、国内製造業はサービスやIT技術に強みを持たないところがほとんどです。欧米の巨大プラットフォーマーや中国のように企業が国と一体化している相手と単独で戦うのはドン・キホーテのようなものです。そこで、重要となるのがオープン・クローズ戦略です。自社のみで内製化すべき領域(基本ソフト、データなど)と、パートナーシップを組んで他社と協力する領域(クラウドベンダ、各種アプリケーション開発者、これまでライバルだったメーカーなど)で共存共栄を目指します。互いに限られたリソースを持ち寄り、時間とコストを最適化します。重要なポイントは、デジタルの世界ではスピードと市場シェアが全てだと言うことです。

どれだけ安くて良いサービスを作ったとしても、3番手、4番手は生き残れない世界です。未完成でも先陣を切らなければ、市場のリーダーシップを獲ることは出来ないのです。MM総研の調査結果によると、日本企業におけるIoT技術の導入率は2割余りとのことですが、その3割を占める製造業の5割以上が「機械設備の稼働状況の把握」に取り組んでいるそうです。この内容では、製造現場のカイゼンには効果がありますが企業の競争力を高める差別化は難しいように思います。

ゲームチェンジ、勝ち残るために取り組むべき競争力を高めるサービスとは

国内製造業のIoT技術の利用動向で「機械設備の稼働状況の把握」が最も多い理由を考察すると、失敗するリスクが小さく効果が出しやすいテーマだからではないかと推測出来ます。日本企業は、失敗を嫌う社会であるため“新しい取り組みをトップ主導でやる”と宣言しているにも関わらず、求められて斬新な提案をすると必ず言われるのが「前例はあるのか?費用対効果を具体的な数値でコミットしろ」と言われます。

斬新で新しい取り組みなので当然事例などなく、期待する効果は予想出来ても費用対効果を数値でコミットなど出来るわけがありません。ずっとPoCだけやっていれば失敗はしませんが、成功もありません。定年まで逃げ切りたい経営者や役員はみなさんそうしています。大企業、中小企業を問わず、こうした際に筆者が必ず毎度言われる言葉です。恐らく、ベンダに無意識に言う口癖になっているのでしょう。冗談はさておき、他社事例のマネでは競争力強化にはなりません。その他企業も同様にマネ出来るので、失敗はしませんがたいした効果も期待できません。たぶんこれが、「機械設備の稼働状況の把握」に取り組む企業が多い理由です。

ゲームチェンジで勝ち残るためには、他社よりも一歩先へ行かなければなりません。

IoT技術の導入で、慣れるためにPoC(実証実験)を事例ベースで行うまでは良いとして、勝ち残るための取り組みは事例のマネでは意味がないと思います。そこで、テーマのパターン分けしてみたいと思います。まず、「既存の製品やサービス」をベースとする場合と、「新しい製品やサービス」をベースにする2つのパターンが考えられます。前者はリスクが少ないのですが勝ち残るレベルの差別化を生み出すのが難しく、後者は新しい挑戦なので成功する確立が低くなります。業種やターゲット市場にも寄りますが、デジタル化でどこまで尖ったビジネスモデルが生み出せるか、どれだけ数多くの試行錯誤(球出し)が出来るかがポイントです。

また、もうひとつのパターン分けとして“儲ける仕組み”で2つに分ける事が出来ます。それは、従来通りのビジネスよりも深堀り専門化してニッチで尖ったニーズの顧客開拓を行うやり方(深化型)と、従来のやり方を否定(定石を外す、打ち壊す)して誰もやらなかったビジネスを生み出すやり方(創造型)が考えられます。4つの軸があるので「プロセス改革型」、「市場創造型」、「秩序破壊型」、「ビジネス創造型」の4つのタイプに分けることが出来ます。さらに、他社からの追撃を振り切るためには、自社だけが持つ独自のデータを収集蓄積する必要があります。同じ仕組みを他社がマネしても、持っているデータが優れていれば勝ち続けることが出来ます。この考え方が、データ駆動型ビジネスと呼ばれる所以なのです。

まとめ

国内企業におけるIoT技術導入は、確実に増えつつあります。しかし、その内容は他社事例ベースに偏っていて競争力強化や事業化などにはつながりません。来年度以降の計画を立てるために、中長期な視点で企業それぞれがゲームチェンジを起こすような取り組みを考える必要があります。先行する欧米、追撃する中国、アジア新興国よりも一歩先へ行く必要があります。デジタルでプロセス改革、市場創造、秩序破壊、ビジネス創造のいずれかを選択して行動に移さなければなりません。

スマートフォンの基本ソフト競争では、iPhone(アップル)とAndroid(グーグル)に次いで、ブラックベリーやノキアが敗退しました。端末の競争では、アップル、サムソン、ファーウェイなどが熾烈なシェアを争い、日本勢は敗退して現在はシャオミやOPPOなど中国勢が台頭しています。日本企業が生き残るためには、箱根駅伝やラグビーワールドカップなど、日本が得意とするONE TEAMで戦うスタイルにあると思います。日本の強みを最大限生かして、パートナーを組める国や企業と協力して巨大プラットフォーマーに負けないプラットフォーム・エコシステムで勝ち残る取り組みを目指したいと思います。

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