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中堅企業におけるIoT導入の実践的アプローチ

コロナウイルスと共存するニューノーマル時代のIoT導入とそのビジネス展開

2020年7月

はじめに

本コラムは、中小企業向けIoT導入について連載コラムとして書いています。当初の予定では、今回が一区切りとなりIoT導入とそのビジネスモデルについて説明して一旦完了する予定でした。しかし、2020年に入って新型コロナウイルス感染によるパンデミックがこれまでの生活と常識を一変させてしまいました。これを書いている2020年6月初旬で、全世界で感染者数は700万人以上、死亡者数は40万人を越えました。一部地域では感染者数が減少していますが、増加に歯止めが掛からない地域があります。近い将来この状況が終息に向かうと信じていますが、特効薬やワクチンであっという間に一掃されることは無く、人類は新型コロナウイルス「COVID-19」と共存しながら経済再生と生活再建に取り組むことになるでしょう。

この状況を考えないでIoT導入とそのビジネスモデルについて話すことは、目前の敵を無視して特攻を仕掛けた旧日本軍にも劣ると思います。この戦いに勝ち残るためには、刻々と変わる状況を踏まて冷静かつムダのない判断、迅速な行動にあると思います。我々は、コロナウイルスと共存する世界でIoTを考察しなければなりません。

新型コロナウイルスとの共存するニューノーマル時代のIoT導入について

新型コロナウイルスによって、人とモノの行動が大きく制限されることになりました。国内においても日本政府による緊急事態宣言が4月7日に発令され5月25日に解除されましたが、第二波・第三波に備え予断を許さない状況が続いています。治療薬として抗エボラウイルス薬のレムデシビルは国内で初の治療薬として承認され、抗インフルエンザ薬のアビガンなども早期に承認される見通しですが、充分量確保出来るまでには1年程度かかるとも言われています。

こうした取り組みによって、かろうじて医療崩壊を回避して死亡者数に歯止めをかけることが期待されています。さらにワクチンが開発されれば、新型コロナウイルスの影響も次第に治まっていくと信じています。それまでには、まだ1~2年掛かると思われます。つまり、我々はこうした状況を踏まえて新型コロナウイルスとの共存というニューノーマル時代を生きて行かなければなりません。

いずれにしろまずは分断されたサプライチェーンを再構築して企業の業績を安定化させなければなりません。製造業における新型コロナウイルス復興計画については、緊急提言として既に公開しています。対策のポイントは次の3つです。

  1. 3拠点生産体制の確立(チャイナ・プラスワンからジャパン・プラスツー)
  2. クラウドERP/RPA連携、モバイル対応システムの整備
  3. データ駆動型バリューチェーン・ネットワークの構築

これについては、こちらの記事をお読み下さい。

3つのポイントで目指すのは、製造業としてものづくりを止めないサプライチェーン再構築を短期間かつ最小限の投資で行うことです。これまで、コスト最適化が優先だったサプライチェーンを見直し、長いチェーンを短くしてリスク回避型にする必要があります。コスト最適化を掲げて、これまで多くの製造業が中国に生産拠点を集約してきました。しかし、中国と米国の貿易戦争が激化したこともあり近年では「チャイナ・プラスワン」(中国生産拠点に加えて、アジア新興国にも生産拠点を作る戦略)を進めてきました。

新型コロナウイルスは、中国のロックダウンを招きさらに世界中のサプライチェーンを分断する事態へと発展しました。ものづくりを止めないサプライチェーンを作るためには、再び国内に生産拠点をおいてキーパーツの生産をコントロールできるようにする必要があります。つまり、国内生産拠点を中心としてこれに既存生産拠点である中国とアジアを連携させる「ジャパン・プラスツー」(国内生産拠点が全てのキーパーツを最小限作り続ける機能を持ち、既存の中国とアジアの生産拠点を連携させる戦略)を採って、新型コロナウイルスが再燃して再び物流が分断するリスクを考慮した再編を行うことになります。新型コロナウイルスは人とモノの動きを止めてしまうため、再燃によって再び人とモノが止まることを想定し、新型コロナウイルスで再びロックアウトが生じても影響しないデータ連携によるリモートコントロールでものづくりを止めない手段を講じます。

IoT技術は、各生産拠点をつなぐデータ連携実現に必要となります。各生産拠点のデータは、クラウド上のデジタル・プラットフォーム(IoTプラットフォームと呼ぶ)にデータ収集され、そのデータを解析、共有して各拠点をつなぎます。データを活用するのは人ですが、遠隔で精密に制御するところが従来とは違います。IoTでは膨大なデータを収集しますが、そのデータ活用の目的の1つはこうした遠隔制御にあります。

IoTのゴールはデジタルツインの実現とデジタルバリューチェーン構築

IoT導入のゴールの1つは、IoTで収集したデータを解析してシミュレーションした結果で得た制御データをネットワークで製品や装置に送り込んで遠隔制御することです。制御するのは、自動車やドローンといったものから発電所や製造装置などが考えられます。さらに、そのフィードバック稼働データを受け取って制御データを更に調整すれば遠隔制御のレベルはどんどん向上することが出来ます。これをデジタルツインと呼んでいます。サイバー空間であるネットとリアル空間のモノや機械をデータで双方向につなぎます。デジタルツインという言葉は、サイバー空間とリアル空間にまたがる双子をデジタルがつなぐという意味です。

2020年の現時点では、IoT技術で入手したデータを見える化する事例は多くあるのですが、そのデータを活用した遠隔制御するレベルを実現出来ている企業はごく一部です。建設機械メーカーのコマツが取り組んでいるICT建機の遠隔制御や、ドイツの重電大手シーメンスが取り組んでいる電力や工場などのリモート制御など既に先行する事例も出てきていますが、こうしたサービスが実用化されて普及するまでには、まだ10年以上掛かると予想されます。

デジタルツインには、3つのステージがあります。モーターやエンジンと言った1つの部品をリモートコントロールするところがステージ1です。リアルタイムで精密にコントロールするためには、5G(第5世代無線通信)が必要となります。ステージ2では、複数のモノを制御したり、異なるメーカーや世代のモノを一括制御したりすることが出来ます。そして、ステージ3では、あらかじめ指示しておけば複数のモノが集団として自律的に動く群制御が可能となります。人はその稼働状況を見ながら、適宜指示してスマートなリモートコントロールを実現出来ます。最小限の人員で、複数の場所にあるモノを簡単かつ精密に制御することが可能となります。

新型コロナウイルスによって、クラウドとデジタルへの発展は更に加速されることが予想されます。人の密集がリスクとなるため、非接触と、モノや機械の自律稼働による無人化/省人化が求められると考えられます。例えば工場の製造ラインに人が居なくても、センサーやカメラがあれば、どこからでも遠隔制御で人がモノや機械を動かすことが出来ます。その基本となるのがIoT技術によるデータの収集・蓄積であり、デジタルツインはデータ駆動型サービスの完成形だと言えるでしょう。

我々人類は、新型コロナウイルスと共存するニューノーマル時代で生き残らなければなりません。これまでIoTは、いずれ取り組まなければならない技術として本気で取り組む企業は多くありませんでした。しかし、IoTは人とモノが移動できないニューノーマル時代において有効な手段となり得ます。

膨大なIoTデータ活用は、デジタルツインのリモートコントロールの精度を高める事が出来ます。IoTで先行していた欧米や、これを追撃する中国も新型コロナウイルスによる甚大な被害により政治、経済ともに停滞を余儀なくされています。後塵を拝していた日本が逆転を狙えるのは今をおいて他にはないでしょう。どのみち、生き残るためには欧米中企業に勝たなければなりません。日本企業同士で協力し合って、可能ならば海外企業も仲間に加えて、先ゆく欧米の前に行かなければならないと思います。大企業には巨大な資本とリソースがありますが、組織が大きく従業員も多いため機動力に劣ります。多数の従業員の維持に掛かるコストも膨大です。中小企業の資本やリソースは限られていますが少数精鋭で機動力では勝ります。かつて恐竜が滅びて哺乳類が地上の覇権を握ったように、ニューノーマル時代によってルールが変更された世界で中小企業が生き残るチャンスは低いとは思いません。賢く立ち回って、ムダな時間やコストを掛けなければ大企業より先回りできる領域もあるに違いないと思うのです。

ピンチをチャンスにかえる一発逆転をIoT導入が拓くことが出来ると考えています。ここでご紹介した話や取り組みは、現在取り組んでいるものもありますしこれからはじめるものもあります。環境に誰よりも早く適応して、自ら進んで変わる組織や人が次の時代をリードすると思います。みなさまと一緒に、そんな世界でお会いしたいと願っています。

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