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IoT

モノづくりIoTソリューション(リードタイムの短縮) 第2回

成長のサイクル

2017年7月

はじめに

中堅製造業を取り巻く環境は、大きな成長が期待できない中、サステナブル(sustainable)な時代といえます。そんな中、成長し続けている企業もいます。今回は、製造業の成長のサイクルについて考えてみましょう。

製造業の成長のサイクル

この図は、製造業の成長のサイクルを示しています。

[図]製造業の成長のサイクル出典:柊紫乃 山形大学、上總康行 京都大学名誉教授
ものづくり管理会計研究会 「生産現場の改善と原価計算 改善の見える化」 2015.10.16

これは、将来に渡って継続的に成長する製造業の「成長のサイクル」です。

まず、「(潜在的な)受注」 から出発します。一般に、需要が供給を上回ることは少ないと考えられていますが、そうとは限りません。確かに、現実の受注は少ないかもしれませんが、価格がもう少し安ければ、納期がもう少し早ければ、品質がもう少し良ければ、より多くの受注が見込めるでしょう。このように潜在的な受注があるにもかかわらず、「こなせない仕事」として見過ごされている(潜在的な)受注残は数多くあります。

(潜在的な)受注残を獲得するために最も必要なものは、対応するリソースです。そのリソースを確保するために現場改善が行われます。その結果、生産能力は増大し、余剰のリソース(人、金、設備)を獲得することができます。余剰のリソースを抱えていることは、度々、稼がないリソースを抱えていると考えられ、機会損失と判断されることがあります。その結果、従業員の流動性が高い欧米では、従業員の解雇が行われます。

しかし、これは非常に大きな勘違いです。むしろ、現場改善により、新たなリソースを生み出し、新たな機会収益を上げるチャンスを得たと考えるべきです。新たに得たリソースを使って、新たな事業、新製品、既存事業の新たなビジネスモデルを展開し、受注を拡大します。リソースを有効に活用することにより、機会収益を得ることができ、利益が拡大し、更なる「受注」が増えていきます。これが、製造業の「成長のサイクル」です。

IoTに対する期待効果

新たな事業や、新製品は、一朝一夕にはできませんが、既存事業の差異化は可能です。業務費用(設備、人件費)としての固定費は変わりませんので、材料費を下回らなければ、特別値引きが可能です。初めての取引では大幅な値引き対応で切り込むこともできるかもしれません。

また、余剰リソースを使って外注を内製化することによって、付加価値を増大することができます。外注単価が自社で作るより、はるかに安いからといって安易に外注することは大きな間違いです。外部へ費用が流出することは、その分、付加価値が減ることになります。「自社でできることは、自社でする」これが、付加価値を確保するための鉄則です。

更に、余剰リソースを使って、需要変動への対応も可能です。製品ライフサイクルの短命化や、季節変動に対応した生産の平準化は必須です。余剰リソースを使って計画的な在庫を作り込むことによって生産の平準化を実現します。(残業代、外注費の削減)

従業員の流動性の高い欧米で現場改善が定着しない理由は、雇用の維持に対する考え方の違いにあるのかもしれません。現場改善により余剰のリソースを創り出すことは自らの首を絞めることになりかねません。また、新たな事業を始める場合は、必要なリソースを外部から調達し遂行します。

この考え方の違いが、IoT(Internet of Things)に対する期待効果についても明確に表れています。

[図]IoTがもたらす期待効果出典:アクセンチュア「グローバルCEO調査2015」

アクセンチュアが世界の経営者1405名(日本では50人)に対して、「グローバルCEO調査2015」として意識調査を実施しました。その中で、IoTがもたらす期待効果に関しては、世界各国の経営者の約60%が、新たな収益源の創出に貢献すると考える一方、日本企業の経営者の大半(68%)は、オペレーションの効率化や、生産性向上のツールとして捉えています。

このことから、日本企業の経営者は、経営改革よりも現場改善を重視し、IoTは新たな収益源に貢献しないという考え方は短絡的であり、間違った認識だと思います。これは、優先順位の問題です。雇用の維持を重視する日本企業は、現場改善により余剰リソースを創出し、そのリソースを使って新たな収益を創り出すことを目指します。

しかし、資金、労働力の流動性の高い欧米では、新たなビジネスを創出するスピードは、日本企業と比べると圧倒的に早いことも事実であり、現場改善、経営改革を同時に行うことを前提とした中期計画の立案/遂行が重要です。

次回は、成長のサイクルの両輪の一つ「現場力」について掘り下げていきます。

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