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IoT

モノづくりIoTソリューション(リードタイムの短縮) 第3回

「グローバル能力(現場力)構築」の時代

2017年8月

製造業の競争力の源泉は現場力にある

今、現場力に注目が集まっています。
その大きな理由は海外工場で働く従業員の賃金の高騰です。工場が生み出す付加価値(スループット、キャッシュ)を考える時、次の関係で表すことができます。この時、雇用の維持に重点を置く日本の場合は人件費を固定と考え、現場の生産性向上に注力します。

付加価値 = 賃金差 * 生産性(現場力)

1989年12月、地中海に浮かぶ島国マルタで行われた米ソ首脳会談(ブッシュ米大統領とゴルバチョフ・ソ連書記長)で、「米ソ関係は新しい時代に入り冷戦は終結した」と宣言しました。これにより冷戦は過去のものとなり、世界中の民主化と市場経済化が始まりました。更に、中国の改革開放路線と相まって、日本は1/20の賃金差を持つ中国との競争を余儀なくされました。当時、日本の製造業は欧米と比較して同等の賃金水準で、3~5倍の生産性と高品質を維持していました。しかし、1/20の賃金差には太刀打ちできず、多くの製造業は中国に生産拠点を移しました。

加えて、アナログ家電からデジタル家電へ移行し、モジュラー型製品の台頭、円高の継続、人口ボーナス(日本の人口は2004年がピーク)が無くなり、日本の製造業はハンデ最大の暗黒時代をむかえました。<製造業の失われた20年>

その後、中国では2000年から徐々に賃金が上がり始め、2010年に「ルイスの転換点(注)」をむかえ、更に上昇し、現在では賃金差が1/5~1/7になってきました。

[図]中国 製造業賃金推移中国 製造業賃金推移(出典:中国統計年鑑をもとに算定(一部予測を含む))

注:ルイスの転換点
社会が工業化する過程で、農村部から都市部へ低賃金の余剰労働力が供給されるが、工業化の進展に伴い、やがて余剰が解消され、農業労働力が不足に転じること。転換点を超えると、賃金の上昇や労働力不足により経済成長が鈍化する。英国の経済学者アーサー=ルイスが提唱した概念。(デジタル大辞泉)

製造業の国内回帰

この間も、日本の製造業は地道に生産性向上(現場力)を行い、更に、3~5倍の生産性をあげています。その結果、十分に賃金差を埋めることが可能になり、国内に生産を戻し始めています。<製造業の国内回帰>

[図]賃金差と生産性賃金差と生産性

「製造業の国内回帰」が起こる一方で、海外への工場移転も続いています。この時、賃金高騰により、他の国へ進出することも考えられますが、非常に短期間で賃金高騰をむかえることが予想されます。膨大な労働力があった中国(人口 13.7億人)だから、ルイスの転換点をむかえるまでに20年かかりましたが、現在、賃金差が1/20であるミャンマーの人口は、54百万人しかいません。恐らく数年で賃金差は縮まるでしょう。

このような状況の中で取組まなければならないのは、新興国の現場力の強化です。付加価値=賃金差*生産性(現場力)のバランスを取りながら、日本国内だけではなく、各国の工場が生み出す付加価値の底上げを図る必要があります。そのためには、『グローバルな能力(現場力)を構築する』仕組みが必要になります。具体的には、日本の工場が常に現場力強化の先頭を走り、各国の工場を指導するような仕組みです。

人口の減少によって国内でモノを買ってくれる人が減る中、海外展開は必須です。この時、各国の需要と供給のバランスを見ながら、工場が生み出す付加価値のコントロールが非常に重要です。国内工場は真の意味で「闘うマザー工場」となり、「現場力」を常に強化し続ける必要があります。これにより、国内工場における新たな雇用の創出も可能になるのではないでしょうか。

第2回でご紹介しましたが、現場改善により確保した余剰リソースを使って、新たな事業、新製品、既存事業の新たなビジネスモデルを展開することにより、受注を拡大します。これが、製造業の「成長のサイクル」です。加えて、今回ご紹介しましたが、現場改善のノウハウによって、各国の工場が生み出す付加価値の底上げが可能になります。まさに、「製造業の競争力の源泉=現場力」といえます。

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