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IoT

モノづくりIoTソリューション(リードタイムの短縮) 第12回

現場力と本社力とITシステム

2018年5月

現場力と本社力とITシステム

ここまで、製造業における「現場力」の定義、重要性、見える化、更に、利益視点からキャッシュ視点について整理してきました。本コラムの第1回の結びで『本社力(マネジメントシステム)、現場力(現場システム)、そして、IT力の3つの視点から、それぞれの位置づけ、役割、相互の関係を整理し、今後の「あるべき姿」を探ってまいります』と書かせて頂きましたが、ここで、ITの視点から整理してみます。

[図]現場力と本社力とITシステム

生産管理システムや、販売管理システム、ERPシステムは、お客様からの受注を管理し、指定された納期に間に合うように、部品を手配し、製造指示を出し、お客様に製品を出荷します。おそらく、ほとんどの中堅・中小製造業では既にシステムが導入されていると思います。

この時、部品購入~製品出荷までのリードタイムが長い時、どうなるでしょうか?

リードタイムが長いと不確実性は大きくなります。

余談ですが、最近の天気予報の予報精度は上がってきましたが、1か月先の予報はどうでしょう?

明日の天気はかなりの確度で当たりますが、一週間先の天気は、結構、前後にずれたりします。17時に発表される翌日予報で、雨が降るかどうかの的中率は、1950年 72%、1975年 79%、2000年 84%、2016年 88%と上がってきていますが、週間天気予報で7日目に雨が降るかどうかの的中率は、69%です。まだまだ、予測精度が高いとは言えません。(予測は当たらない?)

お客様から要求されたリードタイムより、部品購入~製品出荷までのリードタイムが長い時(ほとんどの場合がそうです)、管理者は、予測が外れた時に備えて「サバ」を読みます。「サバ」を読むことは悪いことではありません。責任感が強ければ強いほど、大きな「サバ」を読みます。その結果、欠品が発生するのが怖いので、より多めの部品手配を行います。また、その発注量を最適にするような仕組みを考えます。同様に納期遅れが怖いので、製造指示も早めに行います。(早く投入すれば早く完成するという間違った思い込みから)さらに、受注変動に伴う対応が素早くできるような仕組みを考えます。最後に受注変動に素早く対応できるように需要予測システムの導入を検討します。

リードタイムが長いと、不確実性が増すとともに、管理すべきオーダー(受注オーダー、発注オーダー、作業指示オーダー)が増え、管理工数が増加します。その結果、マネジメントシステムは複雑になります。ERPシステムが巨大になる理由はここにあります。

さらに、日本の管理者は非常に責任感が強く、不確実性に対して様々な手を打ちますので、より複雑になり、ERPシステム導入時に独自のカスタマイズが膨大に発生します。

ERPシステムを導入して管理精度は上がります。発注/製造/出荷指示に対して、納期通りに受入/完成/出荷が行われているのか、遅れはどのくらいなのか、的確なPDCAのサイクルを回し、管理精度は向上します。しかし、リードタイムは短縮できるのでしょうか? 確かに、在庫精度が上がることにより、不要な在庫は削減されますが、リードタイムは短縮されません。何故なら、基準情報に設定されたリードタイムを元に計画し、指示しているからです。

多くの製造業は、導入時に設定した基準情報をもとに生産管理システムや、ERPシステムを運用し続けています。見直すタイミングが設定されていなかったり、見直しても定量的に測定していなかったり、リードタイム短縮活動そのものが行われていなかったりしています。

[図]現場力と本社力とITシステム

本コラムで紹介してきた「現場力(モノづくりIoT)システム」を導入することにより、モノの流れの見える化、ムダのあぶり出し/原因遡及、ムダの削除によってリードタイムを短縮することができます。この時、収集すべきデータは、正味作業、非正味作業の着手/完了の「時刻情報」です。生産管理のMRPシステム(Material Requirement(Resource) Planning)も、ERPシステム(Enterprise Resource Planning)も、<Planning>計画系のシステムです。従って、計画通りに調達できたか、製造できたか、出荷できたかを管理しますので、実績収集データは、「いつ、何を、何個」が基本になります。「マネジメント力(ERPシステム)」と「現場力(モノづくりIoT)」は、それぞれ目的や、実績収集データが異なりますので、独立して導入することが可能です。

「現場力(モノづくりIoT)システム」により、リードタイムを短縮すると不確実性は小さくなります。

[図]現場力と本社力とITシステム

不確実性が小さくなることにより、マネジメントシステムはシンプルになります。

ERPシステム導入の際、業務プロセスの標準化、シンプル化により、カスタマイズボリュームを抑えようとしますが、中々、思った成果が出ない場合が多いようです。これは、業務プロセスが原因ではなく、リードタイムが長く不確実性が大きいことが原因であることが少なくありません。リードタイムを短縮することが、ERPシステムの導入を容易にします。

「マネジメントシステム」と「現場力システム」は、互いに独立した位置づけで運用することをお勧めします。それぞれの実績収集システムは、両システムの共通システムのように見えますが、目的が全く違います。マネジメントシステムは、納期に間に合うように管理するためのシステムです。従って、マネジメントシステムの実績収集は、リアルタイムな進捗を管理し、高い網羅性、精度が求められます。現場力システムは、リードタイム短縮を目的としたシステムです。従って、現場力システムの実績収集は、リアルタイムである必要はありません。また、ボトルネックに集中し、それほど高い精度も求められません。

それぞれのシステムの目的を理解し、実績収集システムの設計を行うことをお勧めします。勿論、既に導入したERPシステムや、設備稼働監視システムなどで、作業の着手/完了などの時刻情報を収集しているのであれば、有効に活用すべきです。

2つのシステムは独立して導入、運用しますが、現場力システムで短縮したリードタイム情報は、マネジメントシステムの基準情報として連携し、マネジメントシステムの精度を上げていきます。具体的には、計画立案リードタイムを短縮し、計画精度の向上、柔軟な計画変更を実現します。

ここまで、モノの管理として、マネジメント力、現場力の関係について説明してきましたが、第9回、第10回、第11回で整理した会計、原価視点での、マネジメント力(本社力)と現場力の「壁」を、十分に考慮する必要があります。その壁は、(1)在庫を「利益(会計)」として考えるか、「ムダ(現場)」として考えるか (2)原価を「正味作業時間」で考えるか、「リードタイム」で考えるか、によって生じています。これらの壁を乗り越えるために、ITシステムが必要になります。

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