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コラム

食品製造における基盤整備

― 第3回 生産機能強化の現実解とは ―

2021年11月

これまでの2回のコラムでは、食品製造業における基盤整備の要素とポイント、そして、フードバリューチェーンの中における製造拠点から強い生産機能をもった工場に進化するためのポイントについて述べてきました。第3回の今回は、実際の生産機能強化につながる現実的なソリューションについて触れたいと思います。

フードバリューチェーンにおける製造機能の方向性は、基本機能・付加機能という顧客要求に対して、支払っているコストを最適化すること、ということはすでに述べたところです。ただ、実際にはコストの最適化、つまり原価低減を実現することが現実的な取り組みになると考えられます。今回は、そうした方向性をふまえ、直ぐに検討すべき重要な取り組みについて触れたいと思います。

1. 開発段階におけるトレーサビリティの重要性

食品業界というのは、衣食住という社会的に必要な要素を担っているエッセンシャルな業界です。また、食の多様化によって世代別、場面別といった様々な食の可能性を如何に製品化、サービス化できるかということが重視されてきています。しかし、日本国内の需要は人口減少により低下していくことは明らかで、今後は海外に向けての取り組みが必要になります。

これは国策でも支援されている内容で、「食品産業海外展開支援事業」などで様々な取り組みがなされています。ここでの現実的な大きな課題のひとつは、トレーサビリティです。海外の認証制度に適合したトレーサビリティを実現するためには、「原産地」、「原材料の使用割合(国産原料)」、「特定の農薬使用実績(不使用)」、「製品の適切な保管状態の証明(温度管理)」といった細かな情報とともに、「包装材」や「輸送および保管」に関する協力会社の情報を収集し、かつ、個別の製品について顧客の要望に応じて提示できるように整備する、つまりレポートとして提出できることが求められます。開発段階で、製品の内容だけでなく、まさにフードバリューチェーンの実績情報を記録し、その膨大な記録から効率的に抽出する必要があるわけです。これを紙帳票や人手で対応していると、輸出量が少量の場合は良いですが、バリエーションと量が増えてきた時に対応しきれず、事業拡大のネックになる事が考えられます。また正確性も重要な要素であり、電子的な記録により担保されていると、ダブルチェックなどの追加コストをかけずに対応ができます。

また、時々刻々とかわる細かな法令対応については、自社のみで情報管理するのではなく、事実上の標準となっているデータベースなど外部の資産を活用し、対応コストを低減するとともに、品質保証上の説明責任の役割を分散させることも可能であることも覚えておくと良いでしょう。

2. 製造段階における需給予測の重要性

食品のような鮮度が重要な製品の製造段階では、如何に適量生産を実現するかが、作りすぎや廃棄といったコストの削減に効果的なことは言うまでもありません。しかし、実需の見通しは簡単ではなく、現時点では20~30年のその道のベテランが対応しているということも珍しくありません。こうしたベテランの退職=ノウハウの喪失という状況は避けねばなりません。さもなければ、多くのロスを覚悟して生産計画を作らねばならず、即収益に影響するコストを生み出してしまいます。現在進行系で、ノウハウを整備して業務手順として整備する必要性に迫られている企業も多いと思います。

これらのノウハウは企業ごとに異なるとはいえ、基本的には、外的な需要変数という出口側の数値、市場作物の供給変数という入り口の数値をどれだけ把握するかが重要になります。例えば、以前は直近の受注・出荷実績に対して、その変動を季節に応じた温度や売れ行き(日別増加傾向など)、イベントの有無といった変数を関数として設計・設定する必要がありました。しかし、データをAIを活用して解析することで、こうした季節性やイベントといった波動を先読みすることができるようになってきました。重要なことは、やればやるほど精度が上がる仕組みにすることであり、これまでは適性のある人を配置して人の成長に頼ってきたものを、如何に仕組み・仕掛けに落とし、データが集まれば集まるほど精度が上がっていくようにしていくことが重要になります。

3. 物流段階における在庫管理の重要性

在庫管理の概念もバリューチェーンによって広がりをみせています。以前は、欠品対応として自社の倉庫にどれだけの在庫を持つか、が重要でした。また、その在庫管理は需要予測と同様、属人的に管理されていることが多いのではないでしょうか。現在、物流業者のデジタル化は特に進んでおり、各SP(ストックポイント)や店舗在庫といったバリューチェーン上にある全ての数量、また、DC(ディストリビューションセンター)における包装、仕分け作業、PC(プロセスセンター)における生鮮加工の進捗状況を踏まえた荷姿や加工状態別の数量なども捉えられるようになってきています。しかもバーコード・自動選別といったオートメーション化も進んでいます。

こうしたフードバリューチェーン上の情報を活用せずに、製造メーカーが在庫管理を行うことは、ブルウィップ効果(上流段階に行くほど余裕をみて多くの在庫を抱えることになること)を引き起こし、高コストの在庫管理となりがちです。販売側の在庫情報を把握することで、自社倉庫における本当に必要な在庫量、ひいては能力に応じた製造量を見極めることで適切な生産・在庫管理が実現できるでしょう。すでに進化しつつある物流と連携していくには、データの取り扱いをデジタル化、システム化して高めていくことが重要になります。

4. まとめ

今回は、生産能力の強化の実現にむけて、まさに現段階で取り組むべき製造現場での取り組みの方向性について述べてきました。

  • 開発段階におけるトレーサビリティの重要性
  • 製造段階における需給予測の重要性
  • 物流段階における在庫管理の重要性

以上がサマリーになります。

本コラムでは、食品製造業の製造として備えるべき基盤、そして機能強化の方向性、具体的に取り組むべき重要な論点を整理してきました。こうした取り組みは、自社ノウハウだけで解決できない、もしくは、解決できても手間がかかったり、対応を間違ってしまうリスクがあるケースが考えられます。また、マンパワー的にも少ない社員にマルチに活躍してもらわなければならないというところが多いのではないでしょうか。

今後は、上記に示した論点を検討するにあたって、必要に応じて知識・データや、進め方などを如何に外部の専門家を用いて活用できるか、がポイントになってくると言って良いと思います。

また、こうした取り組みを進めるにあたっての資金的な課題解決には、農水省が進める「食品産業イノベーション推進事業」というような、生産性向上を目的とした事業も平成30年から実施されており、食品業界全体に資する取り組みが積極的に展開されています。自社製造設備の更新といったようなモノ買いではなく、フードバリューチェーンに波及効果のある進んだ取り組みが推奨されており、本コラムで述べてきたような観点が重視されてきていると考えます。今後の事業推進における参考となれば幸いです。

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