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特集 情シス事情を知る

顔パスの世界がすぐそこに!? 顔認証技術が変えるセキュリティの世界~ 安心安全な社会を支える顔認証技術 ~

2017年10月

ノートPCやタブレットの盗難・紛失、不正利用などで端末に保存した機密情報が漏えいするインシデントが後を絶たない。こうしたインシデントの抑制に効果的なのが認証技術だ。中でも、生体認証技術の1つである顔認証技術は急速に進歩し、今後の認証技術の中核になる可能性もある。顔認証技術によってセキュリティはどう変わっていくのか、今の生体認証とともに顔認証の動向を説明する。

様々な課題がある身近なパスワード認証

認証技術はPCやネットワークなど社内システムのログオンや入退室管理、金融機関のATMなど様々なシーンで本人確認の手段として利用されてきた。だが、認証の中で最も身近なパスワード認証には様々な課題が指摘されている。いくつものパスワードが覚えられないといった理由から、同じパスワードを使い回したり、パスワードを忘れないように類推されやすいパスワードを設定したりするので、不正利用されるといったセキュリティ上のリスクがあるのだ。

こうした課題を解消する手段として企業への導入が広がっているのが生体認証だ。指紋や静脈、虹彩、顔といった身体的な特徴を用いて本人確認を行うため、なりすましによるシステムの不正利用や、PCやスマホのログオン、入退室管理など様々な場面で導入が進んでいる。

生体認証の中で注目される顔認証技術

生体認証はそれぞれメリット、デメリットがあり、特徴を理解して導入を検討する必要がある。PCスマホなどのログオンでよく利用されているのが指紋認証だ。指紋を読み取るデバイスの小型化や低コスト化が進み、導入しやすい半面、登録した指の傷などで読み取りに支障を来すこともある。また、虹彩認証は瞳の虹彩パターンを登録・抽出して認証する。認証精度は高いものの、装置の導入にコストがかかってしまう。指や手のひらの静脈認証は、固有の静脈パターンを利用して本人認証を行う。生体内の静脈パターンで認証するため、指紋のように傷や肌の乾燥による影響が少ないことから、認証手段として導入する企業も増えている。

そして今、最も注目を集めているのが顔認証だ。顔認証は、顔の形や目鼻口の位置など本人の特徴をもとに画像認識技術を用いて識別する。指紋認証などに比べ、登録・認証時の心理的な抵抗感も少ないとされるが、以前は髪形など風貌の変化によって本人を識別しにくいという問題も指摘されていた。だが、近年はカメラの精度や画像認識技術、認証エンジンなどの向上などでそういう問題も解消されてきた。

顔認証が注目される背景として、テロ犯罪防止など社会のセキュリティ対策に対応しやすい点がある。顔認証では、PCのログオンや入退室などで、あらかじめ登録した対象者がカメラに顔を向けて認証する「積極的認証」と、対象者が気付かないうちに施設のゲートなどに設置したカメラを利用して顔認証を行う「非積極的認証」がある。2019年、2020年と日本では世界的なスポーツイベントが開かれ、海外から多数の外国人が日本を訪れる。不特定多数の人が往来する駅や空港などの群衆の中から、国際テロ犯罪の指名手配犯を探すといった「非積極的認証」の用途にも顔認証技術は有効だ。もちろん、犯罪者を見つけるだけではなく、競技場の中から顔認証でVIPを探し出し、特別な「おもてなし」をするといったことも可能だ。

様々な用途で利用される顔認証技術

顔認証でPC利用時のセキュリティを強化

群衆の中から目的の対象者を探し出すためには、複数の人の顔認証処理をリアルタイムに行った上での高い認証精度が必要だ。顔認証技術で多くの導入実績を持つNECでは、米国国立標準技術研究所(NIST)が実施した動画顔認証技術のベンチマークテストで認証精度99.2%と第1位の性能評価を獲得(2017年3月16日 NECのプレスリリースより)。これまでの静止画顔認証テストに続いて4回連続の世界一となった。NECの顔認証ソリューションは、世界的に評価された精度・速度を誇る顔認証技術を用いて高い認証精度を実現するとともに、リアルタイム顔認証ソフトウェアを活用し素早く認証することができる。仕組みとしては、データベースに事前登録された顔画像とカメラで撮影した顔が一致した場合にアラートで通知を行うという流れだ。

では実際にどんな場面で使われているかというと、例えば、海外のホテルではリアルタイム顔認証ソフトウェアを用いることで、要注意人物のホテルへの入館検知を行うことができている。さらに、VIPを検知して顧客サービスを向上するなど、セキュリティ対策と顧客サービス向上の2つの用途で活用されているという。

顔認証技術を活用してPC利用時のセキュリティを強化することも可能だ。顔認証PCセキュリティソフトウェアは、PC内蔵カメラまたは外付けのWebカメラに顔を向けるだけで認証されるログオン機能のほか、本人の離席時や、未登録ユーザーが着席した場合に、自動で画面をロックする常時監視機能を備えている。ID、パスワードだけでは、いつ、だれがPCを使っていたか特定するのは困難だが、顔認証は個人単位で認証でき、確実な利用履歴を残せるといったメリットがある。

顔認証に関心はあるものの、効果が分からず導入に二の足を踏む企業もあるだろう。そうした企業向けに顔認証に必要なソフトウェアとハードウェア、設定、サポートなどを一括して提供する顔認証システムシステム導入セットもある。例えば介護施設の利用者の外出(徘徊など)を職員に知らせる、オフィスの入退室を管理する、ホテルなどでリピーター顧客の来店をスタッフに知らせて顧客サービスを向上するなど、様々な用途に利用できる。また、集計データを分析するオプションのソフトウェアもあり、カメラ映像から自動的に人物の年齢や性別を推定し、顔認証技術をマーケティング活動に活用することも可能だ。

コンビニや金融機関、テーマパークなどで活用される顔認証

実は顔認証技術は、既に様々な分野で活用されている。あるコンビニエンスストアのチェーンでは、店舗管理端末のカメラにスタッフが顔を向けてログオンするようにしたことで、セキュリティと利便性の向上に役立てている。同様に、ある銀行では、営業担当者や融資担当者が利用するタブレットのログオンに顔認証を採用。行員はタブレットの内蔵カメラに顔を向けるだけで簡単にログオンでき、訪問先でセキュリティを確保しながら住宅ローンのシミュレーションを行うなど、顧客サービスの向上につなげている。このほか、タブレットやスマホに顔認証を採用し、外出先から安全に顧客情報へアクセスすることで、外勤活動の効率化と営業力の強化を図る金融機関もある。

マイナンバー制度の開始に合わせ、役所内のPCに顔認証を採用する自治体もある。常時監視機能を用いて未登録ユーザーの不正操作を防ぎ、セキュリティを強化している。さらに、大人数が集まるコンサートなどのイベントで顔認証による本人確認を行う事例や、年間パス契約者向けに入場ゲートで顔認証を採用し、「顔パス」を実現するテーマパークもある。

顔認証は広がりつつあるが、プライバシーの問題は留意すべき

今後、高精度な動画顔認証技術の進展とともに適用範囲が広がり、さらなる利便性の向上が期待されている。高速に対象人物を見つけられる動画認証技術はパブリックな安全対策をはじめ、文教(教室・試験会場の本人確認)、金融機関・小売業(スマホ、店舗での顔決済)、工場(入退場管理)など様々な分野への適用が考えられる。

企業が顔認証の導入を検討する際、従来のパスワード認証に代わってPCのログオンや入退室管理などに利用するのであれば、従業員が対象なので、本人の意思で認証する「積極認証」のため導入の敷居は低い。一方、商業ビルなどで顔認証技術を用いて人の流れを分析することも可能だが、第三者を対象に対象者が意識せずに認証される「非積極認証」の場合は、色々と留意すべき点がある。

例えばマーケティングや防犯目的とはいえ、本人に知らせずにカメラで撮影するというプライバシーの問題がある。あるいは防犯目的で導入したが、間違って警察に通報してしまい、えん罪など人権侵害に及ぶことも考えられる。また、改正個人情報保護法では、マイナンバーなどの公的な番号とともに、身体の一部の特徴(DNA、顔、虹彩、声紋、歩行の態様、手指の静脈、指紋・掌紋など)は個人識別符号として定義され、企業は顔認証のデータを個人情報として守る義務がある。

今後、顔認証技術を活用して安全・安心でき豊かな社会をつくるためにも、プライバシーの保護を可能にする技術開発や、顔認証の運用ルールの取り決めなど法的な整備についても検討する必要があるだろう。

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