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特集 情シス事情を知る

AIの進化で躍動するチャットボット。企業はどう活用すべきか
~あらゆる業種の業務効率化や、現場の人手不足を救うチャットボット~

2019年3月

チャットボットを活用する企業が増えていると言われているが、実際のところ、チャットボットとはいかなるものなのだろうか。また、近年のAIの急速な進化がチャットボットの発展に大きな影響を及ぼしているとされるが、具体的にどんな業種のどんな業務で活用することが可能なのだろうか。最新の市場動向と共に将来に向けたチャットボットの可能性を考察する。

「人工無脳」から「人工知能」へと進化したチャットボット

チャットボットという言葉をあちこちで見聞きする。ネットワークを介して特定の相手とリアルタイムに会話する「チャット」と「ロボット」を掛け合わせたもので、要するにあたかも人間と同じように会話を自動的に行うアプリケーションだ。

新しく登場してきたテクノロジーと思うかもしれないが、実は研究開発の歴史はかなり古く、1966年に生まれた「ELIZA(イライザ)」がチャットボットの始まりと言われている。初期の自然言語処理プログラムを実装し、精神療法におけるセラピストのシミュレーションに応用された。

もっとも、従来の技術レベルでは人間同士のような自然なコミュニケーションは成り立たなかった。2000年代に入っても、「今日の天気は?」といった定型的な質問に機械的に回答することしかできず、「人工無脳」などと揶揄されることもあった。

そんなチャットボットを取り巻く環境が激変している。近年、急速な発展を遂げている機械学習(マシンラーニング)や深層学習(ディープラーニング)などの技術が投入され、チャットボットは「人工無脳」から「人工知能」へと進化しつつあるのだ。

また、これに伴いチャットボットの多様化も見られるようになった。1999年に「人工無脳は考える」というサイトを立ち上げ、長年にわたりチャットボットを考察してきた加藤真一氏は、著書『夢みるプログラム ~人工無脳・チャットボットで考察する会話と心のアルゴリズム~』(2016年)の中で、次の4つのタイプを示している。

  • (1)ELIZA型(聞き役として相づちや会話の要約をする)
  • (2)選択肢型(決められたシナリオによって選択式で会話をする)
  • (3)辞書型(登録された単語とそれに対する応答をする)
  • (4)ログ型(会話ログを利用して文脈に近しい応答をする)

顧客チャネルへの展開と業務効率化で高まる期待

チャットボットはビジネスの領域において、どんな活用が考えられるのだろうか。特に期待が高まっているのが新たな顧客対応のチャネルとしての活用だ。

例えば顧客サポートのポータルサイトにチャットボットを配置すれば、さまざまな問い合わせに対する一次的な応答を行ったり、必要な情報を案内したり、予約を受け付けたりするパーソナライズされた対応が可能となる。人間と違って24時間365日働き続けることが可能で、顧客との関係性を今まで以上に広げ、深めていくことができる。

もちろん、あらゆる問い合わせにチャットボットが答えられるわけではなく、人間のオペレーターとの“協働”が前提となるが、それでも既存の体制での社員の負荷軽減や働き方改革、工数削減などに大きく貢献するのは間違いない。

一方、組織内部でもさまざまな業務効率化を目的としたチャットボットの活用が期待されている。世界的に注目されたのが、米国のスタートアップ企業が開発した「talla」というアプリだ。ビジネスチャットのSlackやGoogleカレンダーと連携したタスク管理やスケジュール、メール管理など、ユーザーの秘書役となって日常業務をサポートする。

流通業や製造業でも活用が本格化

日本でも幅広い企業がチャットボットの活用に向けて動き始めている。

流通業:チャットボット導入により、24時間対応を実現し、顧客満足度も向上

なかでも積極的な取り組みを見せているのが流通業界だ。ある日用品の通販会社は、業界を先駆けて2014年9月に顧客チャネルにチャットボットを導入し、人間のオペレーターのみの体制では困難だった24時間の問い合わせ対応を実現した。そして現在、すべての問い合わせ件数の1/3以上をチャットボットが対応するとともに、大多数の顧客からも回答内容に高い満足が寄せられている。

製造業:チャットボットを活用し、回答時間短縮や申請手続き簡略化を実現

また、2017年には数千社の企業が利用するクラウド型EDIサービスにチャットボットを適用する民間主導の実証実験も行われた。同サービスの運営元のヘルプデスクに寄せられてくる発注データの件数や発注データの取得方法などの問い合わせに、チャットボットを自動対応させるというものだ。結果、問い合わせ回答のレスポンスが従来の1/3~1/5程度に短縮されたほか、緊急情報の一斉通信も実現するなど参加企業から高い評価を獲得し、正式サービスとしてのリリースに至った。

一方、組織内部の業務効率化を目的としたチャットボットの活用で注目したいのが、あるアオフィス機器メーカーの取り組みだ。このメーカーは働き方改革の一環としてリモートワークを推奨しているのだが、実際に社員がこの制度を利用するためには、事前に申請書類を提出する必要がある。この手続きを効率化すべく、チャットボットの適用に目を付けたのである。社員がチャットボットと自然な会話を進めていくだけで、不慣れな申請書を簡単かつ正確に作成できるという仕組みだ。

さらに、このメーカーは現在、営業部門の業務効率化を目的とした日報作成を支援するチャットボットの開発を進めている。チャットボットとの会話を通じて要点を押さえた日報が作成され、上長への提出まで自動化するものだ。

自動車販売業:チャットボットとの会話でデータ分析。その結果をもとに顧客に最適な車種のリストを提案

例えば米国では自動車の販売を行うチャットボットも登場している。顧客がチャットボットとの会話を通じて入力した居住地域や車の使用目的、欲しい車の種類、大きさ、月々に支払い可能な金額などの情報をAI(人工知能)で分析し、その顧客にとって最適な車種のリストを提案するというものだ。さらに顧客はスマホ上で署名をするだけで契約が成立し、あとは指定されたディーラーに車を取りに行くだけの手軽さだ。

同様のアプローチは、ヘルスケア、銀行、金融、保険などのあらゆる提案型ビジネスで展開が可能であり、今後の企業のビジネスモデルを大きく変えていく可能性がある。

上記のような事例からも言えるように、チャットボットは業界業種を問わずあらゆる企業の業務に適用可能なソリューションとなる。

セキュリティの課題を乗り越えた先に広がる無限の可能性

ただし、当然のことながらチャットボットにも注意すべき点がある。避けて通れないのは、プライバシーとデータセキュリティの問題だ。

チャットボットは表向きの操作が手軽に見える分、メールと比べても管理がおざなりになりがちだ。また、チャットボットを通じて会話する相手も、そのやりとりの流れからつい個人的な情報を入力してしまう場合がある。その意味で、チャットボットは絶対に過度な情報入力を誘導すべきではなく、また得られた情報が外部に漏えいすることがないよう厳重に保護するためのセキュリティ対策を整えることが必須となる。そもそもセキュリティを重視したチャットボットのプラットフォームを選定することが重要だ。

裏を返せば、こうしたセキュリティさえしっかり留意しておけば、チャットボットの活用の幅は無限に広がっていく。さまざまなビジネス現場で人手不足やそれに伴う過重労働が深刻化している中で、人間とチャットボットの連携・協働こそが、その課題を克服していくソリューションとなる可能性は高い。

さらにAIの進化と乗じてチャットボットの機能も今後ますます進化していくだろう。企業はこのソリューションを活用しない手はない。是非ともこの記事を参考にしてチャットボットへの関心を高めてほしい。

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