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特集 情シス事情を知る

すべてをサービス化するXaaSとは
~全てのサービスで「所有or利用」の切り分けが必要な時代になる~

2019年8月

エンタープライズITの世界ではインターネットや仮想化技術をベースとしたクラウドが広く浸透し、IaaS/PaaS/SaaS/DaaSといったサービスへと発展してきた。そうした中で新たに注目され始めたのが、インターネットを通じてあらゆる資源を提供する「XaaS(X as a Service:ザース)」というキーワードだ。これはいかなるものなのか? 中堅企業はどう活用していけばいいのか。クラウドサービスの今と共に解説する。

「XaaS(X as a Service:ザース)」とは何か

ITシステムの新規構築やリプレースを行う際に、クラウドを第一優先に検討する「クラウドファースト」のスローガンが世の中に提示されてすでに久しく、クラウドはあらゆる企業にとって身近なサービスとして定着してきた感がある。

そうした中で新たに注目されているのが「XaaS(X as a Service:ザース)」というキーワードだ。クラウドの世界では「as a Service(~をサービスとして提供する)」という概念が広く取り入れられてきた。例えばIaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service)、DaaS(Desktop as a Service)といったサービスが商用化され、さまざまなクラウド事業者から提供されている。

端的に言えばXaaSとは、そうしたさまざまなas a Serviceの総称であり、インターネットを通じてあらゆる資源を提供するサービスとなる。シンプルに「クラウドサービス全般のこと」と理解してもよいだろう。

XaaSの市場はどういう状況なのか

現在、XaaSの市場はどんな状況にあるのだろうか。先に述べたようにXaaSはあらゆるas a Serviceを総称したものであり、その意味ではクラウドサービス市場全体の動向と捉えることができる。 総務省の調査(平成30年版 情報通信白書)によると、クラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は56.9%であり、前年の46.9%から大幅に上昇している。

参考までにクラウドサービスの利用内訳のトップ10を挙げておくと、(1)ファイル保管・データ共有(51.2%)、(2)サーバ利用(47.6%)、(3)電子メール(46.3%)、(4)社内情報共有・ポータル(37.7%)、(5)データバックアップ(34.4%)、(6)スケジュール共有(34.1%)、(7)給与・財務会計・人事(27.1%)、(8)営業支援(14.5%)、(9)eラーニング(12.3%)、(10)取引先との情報共有(10.4%)の順となっている。

気になるのは、これらのサービスが本当に役立っているのかだ。この点について、多くの企業でサービスの効果を実感しているという結果が出ている。クラウドサービスを利用する企業のうち、「非常に効果があった」または「ある程度効果があった」として効果を実感している企業の割合は85.2%にも達しているのである。

さらに、様々な企業の調査データでは、国内のクラウド市場は2020年以降も成長し続けていくと予測されており、4、5年後には現在と比べて2~3倍の市場規模になると予想しているデータもある。このように、クラウド市場の拡大はほぼ確実視されているので、XaaSの新規サービス開発が進んだり、XaaS自体への関心も高まっていくだろう。

中堅企業にとってXaaSは強力な武器となる

XaaSは中堅企業にとっても有益なサービスとなるだろうか。結論を言えば、もちろんYESだ。そもそも中堅企業にとってIT活用のハードルとなっていたのは、自社内でシステムを持たなければならなかった負担の重さである。XaaSを利用すれば、多大な初期投資やランニングコスト、人的リソースを費やすシステムを所有することなく、サービスとして利用することに徹することができるのだから、強力な武器となるのは間違いない。

では、具体的にどんなXaaSのサービスが、中堅企業の業務に役に立つのか考えてみよう。

まず検討したいのは、先にも挙げたすでに一般的なサービスとして広い企業に定着しているである。

IaaSは、仮想サーバやネットワークなどのインフラを提供するサービスだ。業務の負荷変化に応じてCPUコアやメモリ、ストレージ容量などのリソースを柔軟に増やしたり、減らしたりできる。また、ハードウェアの老朽化に伴うEOL(寿命切れ)やEOS(サポート終了)なども考えなくてすむ。

PaaSは、IaaSが提供するインフラに加えてデータベースやWebアプリケーションサーバ、開発環境などのミドルウェアも一体で提供するサービスだ。最近ではマシンラーニング(機械学習)やコグニティブ(認識)などの機能もPaaSのサービスとして提供されるようになった。

SaaSは、これまでパッケージ製品として展開していたアプリケーションソフトをインターネット経由で提供するサービスだ。オフィスソフトの「Office 365」や「G Suite(Google Apps)」、SFA(営業支援システム)の「Salesforce」、グループウェアの「サイボウズOffice」などが代表的である。

これに加えて、最近ではNaaS(Network as a Service)※というサービスも登場してきた。業所間を結ぶネットワークの構築からサーバおよびクライアントの設定・設置、さらには回線費用支払い事務まで、ネットワークインフラに関連する業務を幅広くサポートするものだ。中堅企業のIT運用体制の中でも特に手薄なのがネットワークに関する技術であるだけに、活用メリットは大きいのではないだろうか。

※NaaS/Network as a Serviceは、みずほ情報総研株式会社の商標

ただ、上記のIaaS、PaaS、SaaS、NaaSといったインフラ系のサービスを利用する場合、注意しておかなければならないこともある。それはセキュリティに関するものだ。自社の重要なデータを預けることになるだけに、そのサービスを提供しているクラウド事業者は信頼できる相手なのか、どんなセキュリティポリシーで運用しているのかといった点は、しっかり確認しておきたい。

そして、意外にも身近なところに普及してきているのが、WaaS(Windows as a Service)である。簡単に言えば、これは「Windows 10」のこと。Windows 10は、それ以前のバージョンのWindowsと違って「常に新たな機能(更新プログラム)を提供するサービス」として位置づけられ、WaaSと呼ばれるようになった。2020年1月にWindows 7 SP1の延長サポートが終了し、2023年1月にはWindows 8.1の延長サポートも終了するだけに、中堅企業もWaaSへの移行は避けて通れない。

さらに最近、さまざまな記事やニュースなどでMaaS(Mobility as a Service)という言葉を見聞きする機会も増えている。国土交通省によれば、MaaSとは「ICT を活用して交通をクラウド化し、公共交通か否か、またその運営主体にかかわらず、マイカー以外のすべての交通手段によるモビリティ(移動)を1つのサービスとしてとらえ、シームレスにつなぐ新たな『移動』の概念」である。スマートフォンのアプリなどを用いて、カーシェアリングを含めた交通手段の手配やルート検索、目的地までのナビゲーション、運賃や利用料の決済まで一貫して行うことが可能となる。先に紹介したXaaSとは少し毛色が違って、近い将来のスマート社会のインフラとなるものだが、もちろん中堅企業も物流や営業活動をはじめ、さまざまなビジネスの局面でその恩恵を受けられる。

その他にも、クラウドによる解析・統計サービスを行うAaaS(Analytics as a Service)、テレビ会議、Web会議などのコミュニケーションに関するサービスを行うCaaS(Communication as a Service)などもある。

※AaaS、CaaSなどは複数の意味を持っているが、今回の記事では、AaaSはAnalytics as a Service、CaaSはCommunication as a Serviceの略称として扱う

クラウドだけでなく、さまざまな商品が所有から利用になっていく

XaaSの動向を駆け足で俯瞰してきたが、B to Cの領域ではサブスクリプション型のビジネスモデルのもと、さまざまな商品のサービス化(所有から利用へ)が進んでいる。これを受けてBtoBにおいても、サービス化の流れはさらに加速していくことになるだろう。

逆に言えば、できるだけ柔軟にサービスを利用していく方向に経営の舵を切らないと、「今すぐには必要ない・使わない」リソースまで抱え込んでしまい、積み重なる運用費や維持費に圧迫され、企業として競争力の低下につながる恐れがある。

特にITシステムに関して、それが強く言える。昨今の人手不足により、IT部門は新しい人材の採用に苦労している。そうこうしている間にも、レガシーシステムの運用を担ってきた熟練技術者は定年退職を迎えてどんどんリタイアしていく。今後ますます「一人情シス」「ゼロ情シス」が増えていくと考えられ、企業が独自にITシステムを所有し、運用していくこと自体が困難になっていくのだ。

身動きが取れなくなる前に、自社にとって所有すべきもの、利用すべきものを切り分け、効果的にXaaSを活用するノウハウを身に着けていくことが得策ではないだろうか。

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