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特集 情シス事情を知る

通信5Gの次に来る6Gの世界とは
~6Gで変わるIT戦略、10年後に向けて今押さえておくべきこと~

2020年10月

世の中ではようやく5Gの本格的なサービスが始まろうとしているところだが、技術的な議論はすでにその先に向かっている。総務省は2020年6月30日、5Gの次の世代にあたる6Gの実用化が見込まれる2030年代の社会に求められる技術や政策の方向性などを取りまとめた「Beyond 5G推進戦略 -6Gへのロードマップ-」を公表した。ここに記された内容から6Gの概要を探ってみる。

Withコロナ/ポストコロナ時代を見据えたBeyond 5G(*1)推進戦略

総務省が公開した「Beyond 5G推進戦略 -6Gへのロードマップ-」は、2020年1月から開催されていた「Beyond 5G推進戦略懇談会」において、Beyond 5Gの導入が見込まれる2030年代の通信インフラに対する期待、さらにそれを実現するための政策の方向性などを示した「Beyond 5G推進戦略骨子」をもとに取りまとめたものだ。

  • *1:Beyond 5G:5Gの次の世代、すなわち6Gを意味する

これまでも移動通信システムはおおむね10年ごとに世代交代してきたが、6Gは2030年代の社会においてどんな役割を担っていくことを目指しているのだろうか。

その動向を読み解く上で欠かせない背景となっているのが、世界中に未曽有の危機をもたらした新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大である。

今後も新しい感染症のパンデミックや自然災害など予測できないリスクは多々あり、従来のような人の移動や対面を前提としたビジネスでは事業継続が困難になる恐れがある。好むと好まざるとにかかわらず、テレワークなどリモートを主体とした“ニューノーマル”への移行が急務となる中、デジタルへの依存度はますます高まっている。

こうした状況下で人々の生活や経済活動を円滑に維持するためにも、ICTインフラが徹底的に使いこなされる環境を実現する必要がある。同ロードマップでは「デジタル・トランスフォーメーションによるスマート化や、信頼性のある自由なデータ流通(DFFT:Data Free Flow with Trust)を推進し、フィジカル空間で起きている事象を、リアルタイム・ビッグデータを活用してサイバー空間に投影し、解決策を見いだす仕組みを実現することが求められる」と示されている。

これがBeyond 5G 推進に向けた“処方箋”となっているのだ。Beyond 5G推進戦略は、新たな社会システム構築に向けた取り組みであると同時に、Withコロナ/ポストコロナ時代における日本の成長戦略を見据えた対応策として位置付けられている。

さらに同ロードマップはそこでの重要な要件として、「新型コロナウイルスの感染拡大という危機をBeyond 5G ready(将来の6Gまで見据えた通信環境づくり)を加速する契機として捉え、強靭かつセキュアなICT インフラの整備を含む社会全体のデジタル化を一気呵成に進める必要がある」と述べる。「世界規模で起きている社会全体の急速なデジタル化の動きに取り残されてしまうと、わが国が Beyond 5G の議論をリードできなくなるという危機感を持ち、本戦略を推進する必要がある」と提言している

見方を変えればBeyond 5G推進戦略は、今ある5Gを活用しつつ、これからの10年に向けて押さえておくべきことを示唆した指針と捉えることもできる。今後、フィジカル空間とサイバー空間を一体化したCPS(Cyber Physical Systems)が飛躍的に進展し、大量のデータから新たな価値を創造し、人々が求めるモノやコトを必要な時に、最適な形で提供することが可能となると考えられている。そうした「データ主導社会」を今のうちから、企業単位でも追求することが重要だ。

6Gが具備することを目指す4つの新機能

これらの課題感に基づき、同ロードマップが描いている6Gの具体的な機能のイメージを探ってみてみよう。現在の5Gは「超高速・大容量」「超低遅延」「超多数同時接続」という特徴的機能を備え、IoTやモバイルを活用した働き方に革新をもたらす。6Gはこれらをさらに高度化することに加え、次に示す新たな4つの機能を具備することで、利用者にとってよりフレンドリーで利便性の高い通信の実現を目指す。

第1は「自律性」。AIなどの技術を生かし、人手を介さず(ゼロタッチ)、あらゆる機器が自律的に連携し、有線・無線を意識せず即座に利用者のニーズに合わせて最適なネットワークを構築する機能を備える。

第2は「拡張性」。端末や基地局が、衛星や HAPS(High Altitude Platform Station)などの異なる通信システムとシームレスにつながる。また、端末や窓など様々なモノを基地局としたユビキタス基地局を通じて、至る所にある機器が相互に連動しつつ、海、空、宇宙を含むあらゆる場所で通信を利用可能とする。

第3は「超安全・信頼性」。利用者が意識しなくてもセキュリティやプライバシーが常に確保され、災害や障害の発生時でもサービスが途絶えない瞬時の復旧を実現する。

第4は「超低消費電力」。現在のデジタル化のペースがそのまま続けば、2030 年の IT 関連の電力消費量は2016年の36倍(*2)となると考えられている。こうした電力消費量の大幅な増加に余裕を持って対応するためには、6Gの消費電力は現在の無線通信の1/100程度に抑えることを検討する必要がある。

  • *2:IPトラフィックは、2016年は4.7ZB/年、2030年には170ZB/年(36倍)になると推計されており、IT関連の電力消費量とデータ処理量は比例関係にあると仮定することに一定の合理性があることから、低消費電力化の技術開発がなされない場合には、IT関連の電力消費量も36倍(2016年:41TWh/年、2030年:1480TWh/年)となる(現在の総日本の年間電力消費量である約980TWhの1.5倍に相当)と考えられる
  • 出典:国立研究開発法人科学技術振興機構「情報化社会の進展がエネルギー消費に与える影響(Vol.1)」(平成31年3月)

では、この6Gをどうやって実現していくのか。同ロードマップではわが国が強みを持つ、あるいは積極的に研究開発に取り組んでいる技術分野の例として、

  • テラヘルツ波:超高速・大容量通信を支える技術
  • 時空間同期(サイバー空間を含む):超低遅延を支える技術
  • センシング:超多数同時接続を支える技術
  • オール光ネットワーク:超高速・大容量通信、超低消費電力を支える技術
  • 低消費電力半導体:超低消費電力を支える技術
  • 量子暗号:超安全・信頼性を支える技術
  • HAPS活用:拡張性、超安全・信頼性を支える技術
  • 完全仮想化:自律性を支える技術
  • インクルーシブインターフェース:拡張性を支える技術

などを挙げ、「戦略的に重要な要素技術の研究開発を、期限を限り、関係府省が連携して集中的に推進すべき」と述べている。

(画像をクリックすると拡大表示します)

6Gで実現が期待されるユースケース

2030年代の社会において、6Gは具体的にどんなことを実現していくのか。これについてはNTTドコモが2020年7月に公開したホワイトペーパー「5Gの高度化と6G」(2.0版)(*3)で示された、いくつかのユースケースを紹介しておきたい。

まずは100Gbpsを超える超高速・大容量の無線技術により、現実の体感品質と同等もしくはそれを超えるような新体感サービスが実現する。さらにこの新体感サービスは複数ユーザー間でもリアルタイムに共有され、サイバー空間上での仮想共体感や仮想協調作業といった新たなシンクロ型アプリケーションに発展することが期待される。

さらに、現在の移動通信システムがカバーしていない空・海・宇宙を含むあらゆる場所での利用を想定した「超カバレッジ拡張」により、人やモノのさらなる活動環境の拡大と、それによる新産業の創出が期待される。

またサイバー・フィジカル融合において6Gは、エンドツ-エンドで1ms 以下の超低遅延を実現することを目標としている。これによってリアルタイムかつインタラクティブなAIサービスを展開。例えば無人店舗で顧客の表情を見ながら人間のように気の利いた対応を行う遠隔ロボット接客が可能となるかもしれない。

6Gでは多数のIoTデバイスをネットワークにつなぐだけでなく、無線通信のネットワーク自身が電波を用いて実世界をセンシングする機能の進化も想定され、誤差数センチメートル以下といった超高精度な測位の実現が期待されている。

6Gが実用化するのは2030年代であり、まだ10年近い期間があるわけだが、技術の進化は想像以上のスピードで進んでいく可能性もある。一方で現在の企業を取り巻く状況は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックや米中貿易摩擦に伴う地政学リスクの増大、予測不可能な異常気象や自然災害など、かつてない不確実性が高まっている。そうした中で世界的な需要の減少やサプライチェーンの分断、社会的行動様式の変容、新たな競争環境の出現などを見据えたレジリエンス(回復力・復元力)を強化する必要がある。まずは5Gを活用することで“2025年の崖”を克服しつつ、これらの課題を解決する基盤となるDXを推進し、来るべき6Gの時代に備えてほしい。

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