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特集 情シス事情を知る

日本がデジタル庁創設へ
デジタル化が加速する中、「情報通信白書2020」から企業のIT活用を読み解く

2020年11月

総務省は8月4日に「情報通信白書2020」を公表した。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた新しい生活様式や働き方を展望しつつ、5Gを含めたICTが今後どのような影響を及ぼすのかを分析している。では、その中身はどういうものなのか。そして、デジタル庁創設に向けて政府が動く中、情報通信産業を国としてどう進めていくのか。中堅企業のビジネスのヒントとなり得るデータを情報通信白書2020から取り上げ、デジタル社会への行方を以下の見出しごとに展望、解説する。

日本が抱える課題と課題解決手段としてのICT

我が国は諸外国に先んじて少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少している。では、そうした中で現在の国力をいかに維持し、さらには成長させていくことができるだろうか。

海外から労働力を招き入れる、高齢者を再活用するなど、さまざまな議論が重ねられているが、根本的には一人ひとりの労働生産性を高めると同時に、新たな市場を創出していく必要があるだろう。

そこで強く求められているのがICTの利活用である。既存の事業や業務スタイルを前提としたレガシーシステムの延長線ではなく、5GやAI、IoTなどの基盤テクノロジーと、それらの技術を応用したキャッシュレス、多言語音声翻訳、顔認証などのアプリケーションやサービスを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)が必要だ。

出典:「令和2年版情報通信白書」(総務省)

出典:「令和2年版情報通信白書」(総務省)

新型コロナウイルス感染症が社会にもたらす影響

DXについては、経済産業省が2018年9月に発表した「DXレポート」において、老朽化した既存の基幹システムに多大なコストや人的リソースが費やされている課題を克服できない場合、2025年以降に莫大な経済損失が生じる可能性があると警鐘を鳴らしており、多くの企業の間にこの「2025年の崖」に対する危機感が高まっている。

今般の新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの企業や組織が緊急避難としてリモートや非対面を中心としたビジネスや働き方への対応を余儀なくされているが、この状況をネガティブに捉えるのではなく、むしろWith/Afterコロナ時代のニューノーマル(新しい生活様式)に向けたDXへのチャンスと位置づけて積極的なICT活用を図りたい。

テレワークも決して内勤社員だけのものではない。例えば営業活動ではビデオ会議などを使ったオンライン商談を積極的に進めることにより、移動時間をなくして商談件数を増やすことが可能となる。短時間のビデオ会議なら提案する製品やシステムに詳しい開発者を同席してもらうことも可能で、顧客からの質問により迅速に答えることができる。

また、人事部門では採用面接をリモートで行うケースも増えている。スマートフォンやタブレットで面接を受けられることで、応募者は移動費用や長時間の拘束といった負担が軽減され、企業の選択の幅が広がる。結果的に採用側も、ほしい人材をこれまで以上に効率的に確保できるようになるだろう。

このようにあらゆる業務でICTを活用し、ニューノーマルへの対応を進めることで、ビジネスの新たな可能性が生まれてくる。

もっとも問題がないわけではない。テレワークが急増したことで、「社内ネットワークにリモートアクセスするVPN回線がパンクしている」、「テレワーク環境からWebサイトやSaaSにアクセスする際のセキュリティ対策が後手に回っている」、「紙の書類でしか対応できない稟議や契約などの業務が残っている」など、さまざまな課題が顕在化している。

出典:「令和2年版情報通信白書」(総務省)

新型コロナウイルス感染症を契機とするデジタル化の進展

もとより我が国におけるデータ流通量は、急激なデジタル化の進展とともに拡大が続いている。総務省がとりまとめた2019年11月分の調査によると、国内のブロードバンド契約者(FTTH、DSL、CATV、FWAなど)の総ダウンロードトラフィックは約12.7Tbpsに達しており、1年間で15.2%増加している。同様に総アップロードトラフィックも1,500Gbpsを越え、1年間の伸び率は12.1%となっている。

そこに新型コロナウイルス感染拡大に伴うテレワークの急増が輪をかけ、デジタルデータの流通量が増加しているのだ。新型コロナウイルスはいまだに終息の見通しが立たず対策の長期化が予想されており、ニューノーマルへの移行が必須となっている現状を鑑みれば、データ流通量の拡大傾向はしばらく続くと考えられる。

そうした中で期待が高まっているのが、超高速大容量、多数同時接続、超低遅延といった特徴をもつ5Gなのだ。5Gを利用すれば、例えばスマートフォンやタブレットを使って多人数が参加するビデオ会議も、音声や映像が途切れるといったストレスを感じることなく快適なコミュニケーションを行うことが可能となる。

さらに5GではVR(仮想現実)やAR(拡張現実)といったテクノロジーを活用したコンテンツもスムーズにやりとりすることが可能となり、製造業における設計開発やテスト、営業活動におけるプレゼンテーションのあり方を大きく変えていくだろう。

もちろん「紙の書類でしか対応できない稟議や契約などの業務が残っている」といった課題を解決するためには、まず社内規定や業務プロセスから見直す必要があるが、5G上で運用可能なペーパーレスのワークフローやデジタルサインなどのテクノロジーが、その改革を後押ししていくことになる。

5Gによる産業のワイヤレス化

このように5Gは、モバイルにおける超高速大容量通信を実現することで、単なる業務の効率化にとどまらない、新たな付加価値を生み出していく可能性を秘めているのだ。

加えて、多数同時接続や超低遅延といった5Gの特性が発揮されるようになると、従来は不安定なモバイル環境での利用には適さないとされてきた分野も含めた、あらゆる場所、あらゆる機器がインターネットに接続されることになる。

これにより情報通信、社会インフラ、商業・流通業、サービス業、医療、農業など、あらゆる産業のワイヤレス化が進むと考えられている。

なかでも大きな関心を寄せているのが製造業だ。企業が自社の閉域網に構築した5G通信環境、いわゆるローカル5Gを活用した工場内ネットワークのIoT化により、例えば生産ラインをその時々で柔軟に変更する多品種変量生産に対応することが可能となる。

また、工場内のさまざまな設備をローカル5Gに接続し、OT(制御システム)とIT(情報システム)をシームレスに統合することで、各設備の稼働状況の可視化や故障の予兆分析などを行うことができる。さらにロボットにチョコ停などが起こった際に、離れた場所から技術者がロボットを操作するほか、ティーチングなども遠隔で行うことことが可能となる。

これまですべての従業員が現場に集まらなくては成り立たないとされていた工場の働き方を、リモートにシフトしていく可能性が広がっていくのだ。

ただし、5Gを活用したワイヤレス化を推進していく上では、必ず考慮しなければならない重要項目もある。それは言うまでもないセキュリティ対策であり、「ゼロトラストネットワーク」が基本となる。その名のとおり社内外のすべての通信を信頼しない“性悪説”を前提としたもので、ネットワークにアクセスする都度認証を行う。巧妙化・悪質化の一途をたどるサイバー攻撃の脅威に対して、ファイアウォールやVPNといった従来のいわゆる境界型防御では安全性を担保できなくなった現状を踏まえ、ゼロトラストネットワークは今後のセキュリティ対策の標準になっていくと考えられている。

出典:「令和2年版情報通信白書」(総務省)

2030年代の我が国のデジタル経済・社会の将来像

さまざまなビジネスや生活への5Gの浸透とともに、AIやIoTといったテクノロジーの進化が進むことで、サイバー空間とフィジカル空間が一体化するサイバー・フィジカル・システム(CPS)が実現される。これによりデータを最大限活用したデータ主導型の「超スマート社会」に移行していく。

そこではデジタル時代の新たな資源である大量のデータから新たな価値創造が行われ、暗黙知の形式知化、過去解析から将来予測への移行、部分最適から全体最適への転換などが図られる。必要なモノ・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供することが可能となり、さまざまな社会課題解決と経済成長を両立していくことを目指す。これによって実現するのが「Society 5.0」だ。

2030年代には、サイバー空間とフィジカル空間の一体化がさらに進展し、フィジカル空間の機能がサイバー空間により拡張されるだけでなく、フィジカル空間で不測の事態が生じた場合でもサイバー空間を通じて国民生活や経済活動が円滑に維持される強靭で活力のある社会へ向かっていくという構想が示されている。

この構想は決して夢物語ではない。「情報通信白書2020」には現在のわが国における次のようなICT分野の基本データが示されており、デジタル社会に向けて着実に歩みを進めていることが見てとれる。

ICT産業の市場規模、雇用者数などの動向について

最後に、総務省実施調査である情報通信業基本調査や通信利用動向調査などの結果を中心に、我が国のICT産業の市場規模や雇用者数などの動向、ICTサービスの利用動向を示すデータを数字で紹介する。

出典:「令和2年版情報通信白書」(総務省)

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