ページの先頭です。
サイト内の現在位置を表示しています。
  1. ホーム
  2. ビズサプリ 情報システムポータル
  3. 情シス事情を知る
  4. 加速するロボットとの共生。ビジネスはどう変わっていくのか
ここから本文です。

特集 情シス事情を知る

加速するロボットとの共生。ビジネスはどう変わっていくのか

2021年1月

新型コロナウイルスの感染拡大により、飲食店や物流倉庫、医療施設などさまざまな現場でロボットが活躍するシーンが広がっている。そしてその先では、ロボットを道具として活用するだけでなく、「ロボットとの共生」がテーマになると考えられている。これによってどんな社会が実現するのか。さまざまなロボットの今と未来を解説する。

新型コロナウイルスによりロボット活用は進む

新型コロナウイルスの感染拡大は、テレワークやオンライン上でのコラボレーションなどさまざまな業界に大きな変化をもたらした。その中でも注目したいのがロボットだ。コロナ禍の対策を機に非対面、非接触のニーズが高まり、これまで人に依存していたリアルな現場でロボットの活用が進んでいるのである。

日本だけでなく、世界の先進国もサービス業などで労働力不足の解決策として、サービスロボットの導入を進めている。

ただし、なし崩しにロボット活用を進めるわけにはいかない。ビルや店舗、公道などの公共の場でロボットを動かすとなれば、人や物に衝突したり、往来を妨害したりといったことは絶対に避けなければならない。まずは安全性を確保するための運用技術の標準化やガイドラインの策定、法整備が必須となる。

日本においては経済産業省が主導し、サービスロボットを導入しやすい環境を構築すべく、ロボットメーカーやシステム事業者、ユーザー企業を主体にした「ロボット実装モデル構築推進タスクフォース」を2019年11月に結成。ロボット実装モデル普及に向けた2023年度までのロードマップを策定した。

さらに経済産業省は、サービスロボットをビルや店舗、公道などに導入しやすくするための標準化やガイドライン策定にも本腰を入れ始めた。2020年度に3億5000万円の予算を投じた「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」のもと、施設管理や小売り、飲食、食品の各業界の工場や店舗で使うサービスロボットのガイドラインの作成を進めている。

そこで示された案の1つが、2021年度の策定を目指す施設管理用ロボットのシステム開発や運用の指針だ。ロボットがエレベーターを使ってビルの上下階へ移動したり、自動ドアを通ったりできるようにするためのシステムの標準化を目指す。また、一般人がいるエリアでサービスロボットを安全に運用するためのガイドラインや運用ルールも2021年度内に策定する予定で、関連企業や団体への利用を促すとする。

また、2014年に首相官邸で発足した「ロボット革命実現会議」を母体とする「ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会」においても、ロボットがトラブルなく実社会で使われるようにするためのガイドライン作成が進められている過程にある。

どういう場所でロボットは使われているのか

上記のようなガイドラインをはじめとする環境整備が進むに伴い、ロボットはどんな場面で活用されることになるのだろうか。

飲食店の活用例

すでに試験運用が始まっているのが飲食店だ。コロナ禍を受けて外食産業では店舗の「密」を回避することに加え、従業員の感染リスクをいかに抑えるかが課題となっている。そこで期待されているのが配膳ロボットで、客がタッチパネルから注文した料理を席まで運んだり、食べ終わった食器を回収して洗い場まで運んだりする。

さらには、客のオーダーを聞いてコーヒーを入れたり、会計を済ませたりといった、接客まで行うロボットも登場している。

物流業界での活用例

物流業界でもロボット活用への期待が高まっている。もともと配送や物流倉庫など現場は従業員の高齢化や人手不足といった課題を抱えていた。そこに輪をかけて外出を控えた消費者からのEC(ネット通販)関連の物流が急増し、現場はひっ迫した状況にある。そこにロボットを活用すれば、配送や倉庫作業の無人化・省人化を図ることができる。

例えば日本郵便が2020年9月下旬から10月末にかけて実施した実証実験は、公道走行を含めた自動配送ロボットの運用を行うものとして大きく注目された。

医療施設での活用例

同様に医療施設でもロボット活用が渇望されている。この分野でスポットを浴びているのが米ボストン・ダイナミクスの「SPOT」という四足歩行ロボットだ。もともと建設現場の点検や発電所の巡回など、足場の悪い場所や危険な場所での作業をこなすために開発されたこのロボットを、シンガポールでは医療施設に導入。新型コロナウイルスなど感染症で隔離された患者に食事を届ける役目を担っている。

さらに米国の病院では、iPadや種々のセンサーを取り付けたSPOTにより、患者の体温や呼吸を測ったり、血中酸素濃度を監視したりといった活用も行っている。

製造業での活用例

もともと製造現場ではさまざまな産業ロボットが導入され、人間の作業者との協働作業が行われてきた。これを一歩進めた共生の観点では、例えばロボットの遠隔操作・遠隔ティーチングの取り組みがある。チョコ停などの対応も遠隔からできるようになれば、これまで困難とされてきた工場勤務者のテレワークも可能になると考えられている。

他にもさまざま場面で活用

そのほかにも閉店後の店舗内を巡回して棚卸を行うロボットや警備を行うロボット、さらには癒しロボットや安眠を誘うふわふわロボットなど、実務から生活まで幅広い領域で人間をサポートするさまざまなロボットが考案されている。

人間とロボットが協調・協働する共生社会が実現する

こうしたロボット活用の先に広がるのが、人々の新しい生活様式にロボットが溶け込んで協調・協働する「ロボット共生社会」だ。

共生といっても、必ずしもロボットは自律的に動かなければならないわけではない。離れた場所にいる人間のアバターとなる「分身ロボット」にその可能性を垣間見ることができる。

分身ロボット開発をリードするオリィ研究所は、ヒト型のロボットを使って接客するカフェを2020年1月16日から24日までの期間限定で東京・渋谷で開いた。

実はこのロボットを遠隔から操作して飲み物や料理をテーブルまで運んだり、客とコミュニケーションを取ったりしたのは、難病や重度障害などで療養生活を余儀なくされている人たちである。基本的にはロボットはパソコンを使って操作するが、障害の度合いに応じて視線入力のツールなども利用できるようにした。このように分身ロボットは、外出が困難だったあらゆる人が社会参加できるようになるという可能性を示したのである。

なお、オリィ研究所では「OriHime(オリヒメ)」という高さ23センチメートル、重さ660グラムと机上にも置くことができる小型の分身ロボットも開発している。このロボットを自分の代わりに「出社」させれば、あたかもオフィスにいるかのような一体感で、まわりの人たちとコミュニケーションをとることができる。

コロナ禍によってテレワークに移行した人、あるいは育児や介護などの都合で在宅勤務を続けている人も、オンライン会議やチャットなどでのつながりを超えた、本当の意味で場所に依存しない働き方が可能となる。

もちろん分身ロボットに限らず、AIやハードウェアの進化によってロボット自身もどんどん“賢さ”を増していくだろう。これによりロボットは単なる道具ではなく、より自然なコミュニケーションを取りながら協働作業を行うパートナーとなることが考えられる。

そんなロボット共生社会の動向を、ぜひ今のうちからウオッチしておいていただきたい。

ページ共通メニューここまで。

ページの先頭へ戻る