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特集 情シス事情を知る

なぜ営業、製造、物流でDXは推進されているのか
――改めてDXの今を考察する

2021年3月

デジタルトランスフォーメーションことDX。新型コロナウイルス感染拡大の影響がビジネスを取り巻く環境を激変させており、これに対応するための変革への時計の針が一気に進み、各企業でDXへの取り組みが急がれている。実際に今、どんな企業でどういう形でDXが進んでいるのだろうか。営業、製造、物流など様々な分野におけるDXの動向を取り上げ、これからのDXの在り方を考察する。

改めてDXを問い直す

レガシーなITシステムを近代化しなければ、企業は2025年以降に莫大な経済的損失が生じるとするいわゆる「2025年の崖」で危機感が高まり、さらに今般のコロナ禍によってビジネスを取り巻く環境が激変する中で、DXへの取り組みが加速している。

このDXとはいかなるものか、経済産業省は「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」において、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義している。

いまやバズワードになってしまった感もあるDXだが、企業はこの定義を改めて問い直す必要がある。ますます不確実になっていく将来に対して、DXこそが企業が生き残っていくための処方箋となるからだ。

では、実際にDXはどのくらい進んでいるのだろうか。電通デジタルの委託を受けて日経BPコンサルティングがまとめた「日本における企業のデジタルトランスフォーメーション調査(2020年度)」によると、日本企業の74%がすでにDXに着手しており、昨年比で4%増の拡大となった。新型コロナウイルス感染症の影響はどうかというと、DXに着手済みの企業の約半数で取り組みを「加速」させている一方で、「中断または減速」してしまった企業は全体の4分の1にとどまっており、コロナ禍が契機となって日本企業のDXを後押ししている状況を見て取ることができる。

また、加速した領域としては、トップ2の「業務の効率化」「既存事業の短期的改善」に続いて「中期的なビジネス変革」が浮上しており、短期的な改善にとどまらないじっくり腰を据えたDXへの取り組みが始まっているようだ。

様々なジャンルで加速するDXの取り組み状況

そして現在、DXへの取り組みはあらゆる業界や業務に広がっている。そうした中の代表的な動きを見てみよう。

営業DX

コロナ禍の影響を受けて、急速にDXへの取り組みが進んでいるのが営業活動だ。これまでの「訪問」や「対面」を中心とした営業活動は続けられなくなり、「リモート」による営業活動へと急速な転換が進んでいる。さらに、これに伴い急務となっているのが属人化した営業活動から脱却した組織的な営業への変革である。顧客に関する情報を見える化して全社的に共有し、マーケティングやインサイドセールス、商品開発などの部門と緊密に連携した営業活動を展開するのが、営業DXの目指す姿である。

例えば、ある通信会社は顧客のデータを詳細に分析してPDCAを回し、リード獲得からクロージングまで完結するインサイドセールスを中心とした営業体制へ変革することで、リード獲得件数を10倍以上、受注額は34倍という成果を上げている。

管理業務DX

コロナ禍によりテレワークへの移行が進む中で、バックオフィスの管理業務のDXも急務となっている。経理・財務部門における電子帳簿保存法への対応(ペーパーレス化)や手入力作業の削減、法務部門における契約書の電子化、業務部門における請求書発行の効率化や電子化された書類の社内共有、総務部門における郵便物のBPO、経営企画部門における経営情報の可視化などが主な取り組みだ。

製造DX

製造業におけるDXの最大のテーマとなっているのが、IoTやAIなどのデジタル技術を活用した工場のスマート化だ。ある自動車メーカーもインダストリー4.0(第四次産業革命)やEV専業メーカーの台頭といった社会変化を受けて危機意識を高め、工場IoTを推進。さらにその成果を受けて、エンジニアリングチェーンやサプライチェーンを含めたデジタル化へ乗り出し、品質向上や商品力向上、法規改正への迅速な対応といった付加価値向上に取り組んでいる。

また、従来のモノ(製品)の売り切りから脱却し、顧客に対して継続的なサービスを提供することで収益を上げていくコト中心のビジネスモデル変革も進んでいる。

物流DX

長らく人的な労働力に依存してきた物流業界は深刻な人手不足に直面しており、DXへの取り組みが不可避となっている。そうした中で、ロボットを活用した倉庫の自動化や、AIを活用した配送ルートの最適化、精緻な需要予測に基づいた効率的な商品管理といった取り組みが進んでいる。

また法整備が必須となるが、将来的にはトラックの自動運転やドローンによる配送も慢性的な人材不足を解決する手段として研究開発が進められ、期待を集めている。

一方で、運送会社からの配送依頼をフリーランスドライバーに紹介するマッチングサービスを提供するベンチャー企業も登場。2013年にスタートしたあるマッチングサービスは、全国約1万5,000人以上のドライバーが登録し、2万6,000人以上のユーザーが荷主として利用するなど急成長を遂げている。

学校(教育)DX

学校教育の現場でもDXが進んでいる。その原動力となっているのが、文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」だ。国公私立の小中学校に高速大容量の通信ネットワークを整備するとともに児童生徒が利用する1人1台のPC端末の整備し、多様な子どもたちを誰一人取り残すことのない、公正に個別最適化された創造性を育む教育ICT環境を実現するというものである。

例えばさいたま市教育委員会では、「主体的・対話的で深い学び」を実現するためにICTを活用したアクティブ・ラーニングを推進している。「あと5年経てば学校教育は一変する。学校での学びとICTを活用した自律的な個別最適化した学びの融合で、日々の教育活動が実践されることになる」という考えに基づき、2023年度までを目標とした整備計画を着々と進めている。

医療DX

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、最もドラスティックな形でDXが進みつつある業界の一つが医療だ。医療従事者の新型コロナウイルス感染を防ぐため厚生労働省が特別措置として規制を緩和したことで、これまでなかなか進まなかったオンライン診療が、慢性疾患を持つ患者から初診患者まで全面的に認められることになったのである。Web会議システムや電話など、双方向のコミュニケーションが可能な機器を用いることで非対面の医療行為が可能となった。これにより医療機関はリスクの高い患者との接触機会を減らしつつ、限られた医療資源やスタッフを効率的に医療サービスに振り向けることができる。

また、ウェアラブル端末を用いて自宅療養中の患者のバイタルデータを収集し、遠隔からのモニタリングや健康管理を行う医療IoTの導入も進んでいる。

DXを推進する上での課題をどう解決していくべきか

このように急速に進んでいるDXだが、一方でまだまだ多くの課題があるのが事実だ。先にも紹介した「日本における企業のデジタルトランスフォーメーション調査(2020年度)」によると、DXの推進上の最大のハードルとなっているのが「スキルや人材不足」で、「自社内で育成を担える人材が乏しい」、「自社で育成するための教育プログラムや教育機会が乏しい」といった回答が上位にある。DXへの取り組みが迫られているものの、人材育成が追い付いていない実態が浮き彫りとなった。

特にDXへの取り組みが難しいのは、最初からゴールが見えている単なる課題解決ではすまないことにある。まず「自分たちがどう変わりたいのか」というビジョンを描き、その目標に近づくために様々なデジタル技術をどのように活用していくのかという戦略を立てなければならない。

では、誰がDXを進めていくのか。企業や経営層は推進役として情報システム部門に大いに期待している。だが、情報システム部門は、日々の運用業務、サーバ管理、障害対応といった保守的な業務に忙殺されていることが多い。ならばいっそ、保守的な業務をできるだけクラウドサービスや運用業務のアウトソーシングに移行するという手もある。さらに、高度なデジタルスキルやノウハウを持つ外部の専門家やベンダーの支援を受けることで、デジタルスキル不足を補うこともできる。こういう体制づくりを行えば、情報システム部門の担当者は、本来求められているDX推進、実行といった業務に傾注することができるだろう。

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