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特集 情シス事情を知る

デジタル庁発足。企業への影響を考える
~デジタル庁の5つ取り組みと企業が進めるべきポイントを解説~

2021年12月

政府は2021年9月に「デジタル庁」を発足させ、国や地方自治体などの情報システムを統括し、行政サービスを抜本的に向上させるなどとしたデジタル改革の基本方針をまとめた。デジタル化の推進に向けて、20年前に制定された「IT基本法」を全面的に見直すことも盛り込んでいる。デジタル庁設立によって世の中はどう変わっていき、企業は何をすべきか、解説する。

デジタル庁が打ち出した取り組み、5つのポイント

国連の経済社会局(UNDESA)が発表した「世界電子政府ランキング」(2020年)によると日本は14位で、先進国の中では下位に甘んじている。くしくも今般のコロナ禍は日本における官民のデジタル化の遅れを浮き彫りとしており、今後の経済回復にも支障をきたすことが懸念されている。

こうしたことから政府は2020年12月、デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針を策定。「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」をめざした改革を推進する司令塔としてデジタル庁を設置し、以下の5つのポイントを掲げている。

(1)徹底したUI・UX/国民向けサービスの実現

政府Webサイトの統一を図るほか、マイナポータルなどの情報システムのUI(ユーザーインタフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)の抜本的な改善を進める。いわゆる、Webサイトの操作性をよくし、サイトの使い勝手をよくしようという考えだ。

準公共分野(医療、教育、防災、決済等)では、社会課題として実現すべきサービスの設定、必要なデータ標準の策定およびシステムの整備、運用責任者の特定およびビジネスモデルの具体化を一気通貫で支援するためのプログラムの創設を検討する。また、国・地方・事業者間で円滑なデータ連携を実現するためのプラットフォームを構築するだけでなく、民間においてもデータ標準のオーソリティとして、国際・国内で重要なデータ標準の開発・管理・運営を進める。

(2)マイナンバー・マイナンバーカードなどデジタル社会の共通機能の整備・普及/プラットフォームとしての行政

「デジタル・ガバメント実行計画」の工程表に基づき、マイナンバーの利活用促進・マイナンバーカードの普及に取り組む。また、個人(マイナンバー/マイナンバーカード)および法人の認証制度(GビズID)について、統括・監理を通じて政府情報システムへの具備を進めることで普及・利用拡大、プラットフォーム化を図る。

(3)データ戦略(ベース・レジストリの整備/トラストの確保/DFFT(信頼ある自由なデータ流通)の推進)

行政手続のワンスオンリー(二度提出不要)の実現に向けて、個人・法人・土地など、行政機関が保有する社会の基本的なデータを「ベース・レジストリ」として整備。さらにデータを利活用する際に前提となるトラスト(真正性、完全性)の確保・証明のための仕組みを構築する。

(4)官民をあげた人材の確保・育成

国・地方向けの研修プログラムのコンテンツを拡充し、国・地方の職員のデジタルに関する専門性や知見の向上を図る

(5)新テクノロジーを大胆に活用調達や規制の改革

システムの整備・運用にあたって最新のテクノロジーを大胆に導入することとし、アジャイル開発などの新たな手法や、革新的な技術を有する事業者からの調達などを可能とする柔軟な仕組みを検討する。

これら5つをポイントとして、デジタル庁が司令塔となって行政のデジタル化を進めることで、縦割り行政による非効率的なシステムの共通化や国や自治体のシステム統一が図られる。これにあわせて現在は書面の提出が義務付けられているさまざまな行政手続きについても、電子メールやWebサイトなどで手続きを完了できるオンライン化が大きく進むことになるだろう。

世の中はどう変わり、企業は何をすべきなのか

こうしたデジタル庁の設立による影響は、民間企業およびそこで用いられている業務システムにも大きな影響を及ぼすことが予想される。

見方を変えれば、民間企業はこの機を逃すことなく自社の業務プロセスやITシステムの変革につなげていく必要がある。以下にそのポイントを整理しておく。

脱ハンコ、ペーパレス化、電子契約の加速

行政手続きのオンライン化に伴い、公共事業を主なビジネスとする民間企業の脱ハンコ、ペーパレス化が進むことで大幅な業務効率化とコスト削減が期待される。自治体と企業間でかわす契約書を電子化することで、その効果はさらに大きなものとなる。

デジタル改革関連法が2021年9月1日から施行され、クラウドベースで利用できる電子契約サービスが拡大していることも追い風となっている。契約交渉済みの契約書をアップロードし、相手方が承認するだけで契約を結ぶことができる簡便性がそうした電子契約サービスの特長だ。2段階認証や2要素認証による“本人性”や、電子署名とタイムスタンプによる“非改ざん性”もしっかり担保される。

こうした脱ハンコ、ペーパレス化、電子契約の取り組みを、ぜひ民間企業同士の取引にも広げていきたい。これにより社内の事務作業は抜本的に省力化され、ビジネスを大幅にスピードアップすることができる。

大都市集中からの脱却

行政手続きがデジタル化され、さらにその取り組みを民間企業同士の取引やコラボレーションにも広げていくことで、社員の働き方も大きく変えることができる。

時間や距離の制約を取り払うデジタルのメリットを生かすことで、企業は必ずしも首都圏や大都市にオフィスを構える必要はなくなり、よりコストの安い地方に拠点を移転・分散することが可能となる。また個々の社員レベルでも、リモートワークやワーケーションといった柔軟な働き方を推進することができる。

中堅・中小企業のDX推進

行政手続きのデジタル化に対応するためには、当然のことながら民間企業側もそれにあわせたシステムを整備する必要がある。これまであまりデジタル化が進んでいなかった、あるいはレガシーシステムからの脱却が遅れていた中堅・中小企業の間にも、これを機にデジタルトランスフォーメーション(DX)が活性化することが期待されている。

日本の全企業数のうちの99.7%、従業員数で68.8%を占める中堅・中小企業のDXが進めば、グローバル市場における日本の競争力は飛躍的に向上することになるだろう。

とはいえ、「デジタル化やIT活用といっても、どこから、何から手を付ければよいのかわからない」という悩みを抱えている経営者は少なくない。そんな中小企業に対して経済産業省では「中小企業デジタル化応援隊事業」といった施策も開始している。

全国の中小企業・小規模事業者のさまざまな経営課題を解決する一助として、デジタル化やIT活用の専門的なサポートを充実させるため、フリーランスや兼業・副業人材を含めたIT専門家を「中小企業デジタル化応援隊」として選定し、中小企業の活動を支援するというものだ。デジタル化課題の分析・把握・検討からIT導入に向けた支援(テレワーク、Web会議、ECサイト、キャッシュレス決済、セキュリティ強化など)まで、デジタル化関連の幅広いコンサルティングが対象となる。

なお、所定の要件を満たして支援活動を行ったIT専門家に対して、中小企業デジタル化応援隊事業の事務局から最大3,500円/時間の謝金が支払われる。要するに中小企業はこの金額を差し引いた時間単価でデジタル化推進のためのサポートを受けられることになるため、コスト面のメリットも非常に大きい。

デジタル化の時代に乗り遅れないように

もっともデジタル化はどんな企業にとっても容易ではなく、デジタル化が進めば進むほどセキュリティ対策の重要度も増していくなど投資負担も軽くはない。

しかしその基盤を整えてこそ、規制緩和やビジネスチャンスの拡大といった恩恵を受けるとともに、AIやIoT、5Gといった新たなテクノロジーを取り入れて業務を変革することが可能となる。いずれにしても世の中のすう勢であるデジタル化の流れはとどまることはない。

もちろん人手不足の中堅中小企業では、自社だけでデジタル化を進めるというのは現実的ではない。デジタル化推進を手助けしてくれるSIerなどと手を組む、共創するというのも一つの手だ。これからはデジタル庁発足を契機とするこの時代の波に乗り、情報のキャッチアップを進め、生産性や収益力をアップさせていくことが肝要になるだろう。

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