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特集 情シス事情を知る

物流2024年問題にどう立ち向かうか?
―物流側・荷主側双方の対策とは―

【前編】法改正が招く物流ビジネスへの影響
2024年を前に物流業界・荷主側業界が解決すべき課題とは?

2023年12月

働き方改革関連法案の影響でドライバーの労働時間が規制され、国内で営業用トラックの輸送能力が低下するとされる「物流2024年問題」。物流側と荷主側の双方の業界に大きな影響が及ぶことが懸念されることから、早急な対策を講じる必要があります。前編では、物流2024年問題のもととなった法改正と各業界への影響について解説します。

物流2024年問題の背景にある法改正

「時間外労働の上限規制」に遵守する必要がある

物流2024年問題とは、2019年4月から進められている「働き方改革関連法」の施行によって物流業の働き方が様変わりし、他業界にも影響を及ぼすとされる問題です。この背景にある法改正として、以下を挙げられています。

まず、2024年4月から物流業のドライバーに適用される「時間外労働の上限規制」です。労働基準法の改正により、時間外労働の上限を原則として月45時間、年360時間までに抑えなければなりません。繁忙期など臨時的な理由で超える場合も、「1ヶ月あたりの残業は100時間未満」「2〜6ヶ月での平均残業時間は80時間以下」といった複数のルールを守る必要があります。

【出典】厚生労働省 「時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務」
[NEW WINDOW]https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/topics/01.html

時間外労働の割増賃金率も影響しています。月60時間を超える時間外労働に対し割増賃金率が25%から50%まで引き上げられました。大企業はすでに50%を適用されていましたが、2023年4月から中小企業にも適用されています。

もしいずれかの規制に違反した場合は、「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(労働基準法119条)」が科される恐れがあり、場合によっては労働基準監督署から是正勧告を受けるかもしれません。

「改善基準告示」の改正により拘束時間も規制

さらに、2024年4月に適用される「改善基準告示」の改正により、ドライバーの1日あたり最大拘束時間は、休憩時間を含めて原則13時間以内に短縮されます。最大でも15時間以内で、14時間を超えるのは週に2回までが目安です。「1ヶ月の拘束時間は原則284時間」「1日の休息時間は継続11時間を基本に」といったルールも改正されます。

なお、改善基準告示は法律ではなく違反しても明確な罰則はありません。しかし、国土交通省による行政処分が下される恐れもあるため、注意が必要です。

【出典】厚生労働省 「トラック運転者の改善基準告示が改正されます」
[NEW WINDOW]https://www.mhlw.go.jp/content/T_0928_4c_kaizenkijyunkokuji_L_T02.pdf

熾烈な価格競争がドライバーの労働時間を増やすきっかけに

働き方改革関連法は労働環境の改善を目的としていますが、悪化した要因をさかのぼると1990年の「物流二法」制定を発端としています。同法により運賃設定が自由化され、物流業界への参入障壁が下がりました。業界内には低運賃事業者が増え、値引きや過剰サービスでの競争が激化。そのしわ寄せとして現場で働くドライバーの長時間労働や給与減、人手不足を招いてきたのです。

このような労働環境を改善するため「時間外労働の上限規制」が導入されることになりましたが、ドライバーの労働時間が減ることで新たな問題を招くことが懸念されています。

物流2024年問題の各業界への影響とは

輸送能力の不足が物流業界全体の存続に関わる

国土交通省によると、物流2024年問題に具体的な対応をしなかった場合、営業用トラックの輸送能力が2024年には約14%(4億トン相当)不足し、その後ドライバー数が減少すれば、2030年には約34%(9.4億トン相当)不足すると予測されています。

物流2024年問題は、単に労働時間や賃金の問題だけではなく、日本の物流業界全体の存続に関わるかもしれません。

物流業界への影響

荷主のニーズに応えられなくなり、事業継続が困難に

まず、荷主や一般消費者のニーズに応えられず、事業継続が困難になる点が挙げられます。ドライバーが勤務中に輸送できる物量や距離が限られるため、これまで通りのサービスを提供できず売上が低迷する恐れがあります。また、ドライバーの労働時間が減ることで人件費を削減できるものの、オフィス賃料や減価償却費といった固定費は変わらず、利益減につながるかもしれません。

人材確保が困難に

従来と同じサービスの質を提供し続けるためには、ドライバーの増員が必要です。しかし、今後ますます人手不足に陥ると言われています。時間外労働の規制によって労働時間を減らせば、ドライバーの収入ダウンは免れません。収入減を補うために副業を始めるドライバーもいれば、他業界に転職するドライバーも現れ、よりいっそうドライバーの確保が厳しくなります。

荷主側の業界への影響

必要な時に必要なものが届かない

第一に、必要な時に必要なものが届かないかもしれません。輸送能力の低下により、物流のリードタイムが遅延すると予測されます。
製造業を例にすると、従来のスケジュールで原材料を受け取れず、顧客への納品日を延ばさなければ、よりタイトな日数で製造しなければならなくなります。現場で生産計画の混乱を招くこともあるでしょう。

輸送の依頼を断られる

また、輸送の依頼自体を断られる可能性も考えられます。「改善基準告示」の改正により、ドライバーの最大拘束時間に制限がかかることで、長距離や荷待ち時間のデータに基づいて、取引継続を断られるケースも出てくるでしょう。

国が発表した「物流革新に向けた政策パッケージ」とは

こうした影響を防ぐため、国も2023年6月に「物流革新に向けた政策パッケージ」を策定しました。政策パッケージは、物流DXやモーダルシフト(貨物輸送を環境負荷の小さい海運または鉄道に転換すること)による「物流の効率化」、再配達率の半減といった「荷主・消費者の行動変容」、標準賃金の引き上げによる「商習慣の見直し」などで構成されています。また、荷主側への規制的措置による負荷低減や、荷待ち・荷役時間を2時間以内とするルールも議論されています。

物流2024年問題の影響をできる限り抑えるためには、物流・荷主双方が「お互いがサプライチェーンを支えるパートナーである」という共通認識を持つ必要があります。「運ぶ側」「荷主側」という業界の垣根を超えた対策が重要です。具体的な対策については、後編で解説します。

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