テーマ:1月開催の医療経営セミナーについて【前編】
~中小病院における医療情報システムの推進~
2013年1月

執筆者:株式会社アイ・ピー・エム
    代表取締役 田中 幸三(たなか こうぞう)氏

2013年1月に医療経営セミナーを開催いたしました。前編では、その概要をご紹介します。中小病院における医療情報システムの推進をテーマに、電子カルテの導入・活用におけるメリットと課題、対応策について考察しています。

電子カルテの導入と活用に向けて

今月は、1月23日より開催されるセミナーの概要についてお話したい。

現在、電子カルテは、大規模病院群で7割、中規模病院群で3割、小規模病院群では1割程度が採用され、医療機関全体では約2割程度となっている。
2012年5月経済産業省が「医療情報化促進事業」についての成果報告を公表したが、この中でもやはり「費用」「標準化」「セキュリティ」といった課題が挙げられている。政府が提唱する「どこでもMY病院」構想の実現には、クリアしなければならない課題が多い。

このような状況の中、中小病院における医療情報システムの推進は、どう行うべきなのであろうか。結論から述べると「電子カルテは必須であるが、導入と活用を誤ると業務の効率及び医療経営の成長を妨げる」と申し上げたい。

システムの導入において、重要なポイントは「事前の準備」と「協調」であると考える。
まず、事前の準備であるが、一般的には最初に複数のベンダーに声かけを行い、デモを見て、見積もりを取って決定という大枠があるかと思われる。この際に、院内の業務改善計画が後回しになっているケースがある。
詳細については、セミナー時にお話をさせていただくが、システム導入ありきではなく、業務改善を行うためのツールを導入するという意識が重要であると考える。また、協調については、医療機関とベンダーとの関係である。

医療機関によっては、ベンダー決定と同時に丸投げというところもあるが、これはうまくいかないことが多い。また逆に、ベンダーの担当者の力量不足により、思った効果が得られず、医療機関の負担が増えてしまったケースもある。医療機関とベンダーの協調、これもシステム導入においては、重要なポイントの一つである。

そしてもう一つ、システムはデータを活用して初めて効果を生み出す。日常の業務にだけ使用していたのでは、効果は薄い。その効果を最大限に生み出すための手法の一つが分析である。同時に、人の育成も重要なポイントとなる。中小病院においては、この問題が大きく、医療情報システムの構築、活用がうまく出来ていない医療機関が多いと感じている。

今回のセミナーでは、電子カルテを中心に導入・活用のメリットや課題と対応策についての考察を行う予定である。
実際に導入をした病院やこれから導入を考えている病院、また、更新へ向けて準備をしている病院など、これらの医療機関が経験・直面している事象を基にお話をしたい。

併せて、病院機能評価の新たな評価体系である「機能種別版」についても、変更のポイントを中心に解説を行う予定である。

講演のⅢにおいては、医療用DWHについての紹介も行われる予定である。経営の質の向上及び医療の質の向上に不可欠なデータの活用にも注目をいただきたい。

少しでも皆様のお役に立てれば幸いである。

上へ戻る