2022年度診療報酬改定に関わる予測について
診療報酬改定の基本方針(骨子案)から 【後編】
2022年3月

執筆者:株式会社アイ・ピー・エム
    代表取締役 田中 幸三(たなか こうぞう)氏

前回は、「2022年診療報酬改定に関わる予測について」の前編として、診療報酬改定の基本方針(骨子案)から「1.改定に当たっての基本認識」について記述した。

今回は、「2.改定の基本的視点と具体的方向性」及び「3.将来を見据えた課題」について記述する。

2.改定の基本的視点と具体的方向性

2022年度診療報酬改定に当たっては、これまでの改定の流れを継承しながら、新型コロナウイルス感染症への対応や、感染拡大により明らかになった課題を踏まえた地域全体での医療機能の分化・強化、連携等の対応を行うことが重要とされている。

1)新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築

〔基本的視点〕

今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大においては、局所的な病床・人材不足の発生、感染症対応も含めた医療機関間の役割分担・連携体制の構築等の地域医療の様々な課題が浮き彫りとなった。

今般の感染症対応の経験やその影響も踏まえつつ、感染拡大時の短期的な医療需要には、各都道府県の「医療計画」に基づき機動的に対応することを前提に、診療報酬改定においても、外来・入院・在宅を含めた地域全体での医療機能の分化・強化、連携を引き続き着実に進めることが必要である。

〔具体的方向性の例〕

  • 新型コロナウイルス感染症患者の診療について実態に応じた評価を行いつつ、外来、入院、在宅における必要な診療体制の確保。
  • 個々の医療機関等における感染防止対策の取組や、地域の医療機関等が連携して実施する感染症対策の取組をさらに推進。
  • 地域で必要な入院医療が効率的・効果的に提供されるよう、医療機能や患者の状態や地域における役割分担に応じた評価を行い、医療機能の分化・強化、連携を推進。併せて包括払いの在り方を検討。
  • 外来機能報告の導入や医療資源を重点的に活用する外来の明確化を踏まえ、紹介状なしの患者に係る受診時定額負担制度の見直しを含め、外来機能の明確化・連携を推進。
  • 複数の慢性疾患を有する患者に対し、総合的・継続的な診療を行うとともに、療養上の指導、服薬指導、健康管理等の対応を実施するなどかかりつけ医機能を評価。かかりつけ医機能を担う医療機関が地域の医療機関と連携して実施する在宅医療の取組を推進。
  • 在宅医療の需要が大幅に増加することが見込まれる中、在宅医療を担う医療機関と市町村・医師会との連携、及び、医療・介護の切れ目のない、地域の実情に応じた提供体制の構築を推進。
  • 地域包括ケアシステムの推進のための医師、歯科医師、薬剤師、看護師、管理栄養士等による多職種連携・協働の取組を推進。

2)安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等の推進

〔基本的視点〕

地域医療構想の実現に向けた取組、実効性のある医師偏在対策、医師等の働き方改革等を推進し、総合的な医療提供体制改革を実施していくことが求められている。

医師等の働き方改革等に関しては、2024年4月から、医師について時間外労働の上限規制が適用される予定であり、医療法改正も踏まえ、各医療機関は自らの状況を適切に分析し、労働時間短縮に計画的に取り組むことが必要となる。

〔具体的方向性の例〕

  • 医療機関内における労務管理や労働環境の改善のためのマネジメントシステムの実践に資する取組を推進。
  • 各職種がそれぞれの高い専門性を十分に発揮するためのタスク・シェアリング/タスク・シフティング、チーム医療を推進。
  • 看護の現場で働く方々の収入の引上げ等に係る必要な対応を検討するとともに、負担軽減に資する取組を推進。
  • 業務の効率化に資するICTの利活用の推進。

3)患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現

〔基本的視点〕

患者の安心・安全を確保しつつ、医療技術の進展や疾病構造の変化等を踏まえ、第三者による評価やアウトカム評価など客観的な評価を進めながら、デジタル化への対応、イノベーションの推進、不妊治療の保険適用などをはじめとした新しいニーズ等に対応できる医療の実現に資する取組の評価を進める。

患者自身が納得して医療を受けられるよう、患者にとって身近で分かりやすい医療を実現していくことが重要である。

〔具体的方向性の例〕

  • 患者が安心して医療を受けられ、それぞれの実情に応じて住み慣れた地域で継続して生活できるよう、医療機関間の連携強化に資する取組、治療と仕事の両立に資する取組等を推進。
  • 初診を含めたオンライン診療について、安全性と信頼性の確保を前提に適切に評価。
  • 質の高いリハビリテーションの評価など、アウトカムにも着目した評価を推進。
  • 重点的な対応が求められる分野(不妊治療、がん治療、認知症、精神医療、難病患者等)について、国民の安心・安全を確保する観点からの適切な評価。
  • 口腔疾患の重症化予防や口腔機能の医事・向上のため、継続的な口腔管理・指導が行われるよう、かかりつけ歯科医の機能を評価。
  • 服薬情報の一元的・継続的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導が行われるようかかりつけ薬剤師・薬局の機能の評価を推進。

4)効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上

〔基本的視点〕

高齢化や技術進歩、高額な医薬品の開発等により医療費が増大していくことが見込まれる中、国民皆保険を維持するため、医療資源を効率的・重点的に配分するという観点を含め、制度の安定性・持続可能性を高める不断の取組が必要である。

医療関係者が共同して、医療サービスの維持・向上を図るとともに、効率化・適正化を図ることが求められる。

〔具体的方向性の例〕

  • 後発品の使用促進について、「後発医薬品の数量シェアを2023年度末までに全ての都道府県で80%以上とする」という新目標を実現するため、更なる取組を推進。
  • 革新性が高く市場規模が大きい、又は著しく単価が高い医薬品・医療機器について、費用対効果評価制度を活用し、適正な価格設定を行う。
  • 医薬品、医療機器、検査等について、市場実勢価格を踏まえた適正な評価を行うとともに、効率的かつ有効・安全な利用体制を確保。
  • エビデンスや相対的な臨床的有用性を踏まえた医療技術等の適正な評価。
  • 医師・病棟薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用等の推進。
  • 薬局の収益状況、経営の効率性等も踏まえつつ、薬局の評価の適正化等を推進。

【考察】

改定の基本的視点と具体的方向性の例からは、以下のキーワードが浮かび上がってくる。

  • ア)新型コロナウイルス感染症対策と医療提供体制の構築(助成体制の維持)
  • イ)外来機能の明確化(外来機能報告制度を活用した医療機能の効率化)
  • ウ)多職種連携、協働の取組強化(チームでの役割と連携強化)
  • エ)労務管理と労働環境の改善(医療従事者の働き方改革等)
  • オ)ICTを活用した医療連携と業務負担軽減への取組(オンライン診療とツールの活用)
  • カ)アウトカムに着目した評価の推進(リハビリ・不妊治療・認知症・精神医療等)
  • キ)費用対効果評価制度の活用(医薬品・医療機器・医療技術等の評価)

基本的視点と具体的方向性としては、各医療機関がその役割に応じた準備と整備の必要性が問われる内容が強く出ており、今までの体制や業務内容を見直し、適切な機能を持った医療機関へと改革を進めていくことが重要なポイントの一つとなるのではないか。

そのための方策の一つとして挙げられるのが、院内における全てのデータ管理である。外来機能報告制度もしかりだが、それ以外にも、医療従事者ごとのタイムテーブル作成や紹介率・逆紹介率の迅速な算出、各種評価における指標の整備など、アウトカム及びプロセスデータの収集と活用が必要と考える。

人材確保と育成にも取り組むべき課題があり、データの収集と分析をいかに病院経営及び病院運営に活かしていけるかが、今後、ますます重要となってくる。

前回記載したが、施設の上層部がチームとして取り組んでいく上で、数字に強いサポート職員の確保と教育は欠かせない。個々人の役割を明確にし、必要なシステム化を推進しながら、組織体制を確立することが最重要課題であると考える。

また、医療機関における感染症BCP対策にも取り組むべきである。新型コロナウイルス感染症との共存のため、日常の業務を維持するために必要な対策の一つと考える。

3.将来を見据えた課題

  • 団塊の世代が全て後期高齢者となる2025年、団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者となる2040年と高齢化の進展に併せて、サービスの担い手(生産年齢人口)が減少する超高齢化・人口減少社会が到来している。また、地域包括ケアシステムの構築はもちろん、地域に生きる一人ひとりが尊重され、その可能性が最大限に発揮できる「地域共生社会」の実現に資する取組が求められている。
  • 「全世代型社会保障」を実現するためには、診療報酬のみならず、医療法、医療保険各法等の制度的枠組みや補助金等の予算措置など、総合的な政策の構築が不可欠である。
  • 患者自身が納得して医療を受けられるよう、患者にとって身近で分かりやすい医療を実現していくとともに、国民の制度に対する納得感を高めるため、診療報酬制度を分かりやすくするための取組を継続していくこと、また、国民に対して医療制度に関する丁寧な説明を行っていくことが求められる。

【考察】

将来を見据えた課題については、国・自治体の速やかな方針と具体的方向性の提示が必要であり、逼迫する保険財政を支える現役世代の負担軽減のためにも、必要な措置を講じ、「全世代型社会保障」を守っていく必要がある。

今後は、医療のみならず介護との連動も焦点になってくる。

医療と介護の両面から情報収集と分析を行い、将来を見越した方針決定と次期体制への準備と構築が生き残る医療機関になるための最善の策であると考える。

今回は、「2022年診療報酬改定に関わる予測について」と題し、診療報酬改定の基本方針(骨子案)から「2.改定の基本的視点と具体的方向性」及び「3.将来を見据えた課題」について記述した。少しでもお役にたてれば幸いである。

【参考:2022年度診療報酬改定率】

2021年12月22日の予算大臣折衝を踏まえ、2022年度診療報酬改定率が、後藤茂幸厚生労働大臣より発表された。診療報酬本体は+0.43%の引き上げ、薬価等については▲1.37%の引き下げとなった。

1.診療報酬 +0.43%

  • ※1  ※2~5を除く改定分 +0.23%
    • 医科 +0.26% • 歯科 +0.29% • 調剤 +0.08%
  • ※2 看護の処遇改善のための特例的な対応          +0.20%
  • ※3 リフィル処方箋の導入・活用促進による効率化      ▲0.10%
  • ※4 不妊治療の保険適用のための特例的な対応        +0.20%
  • ※5 小児の感染防止対策に係る加算措置の期限到来(医科分) ▲0.10%

2.薬価等 ▲1.37%

• 薬価 ▲1.35%

  • ※1 実勢価等改定 ▲1.44%
  • ※2 不妊治療の保険適用のための特例的な対応 +0.09%
    • 材料価格 ▲0.02%

診療報酬本体※2~5については、岸田総理が表明した政策の一つ「看護の処遇改善」や菅元総理が掲げた「不妊治療の保険適用」がプラス項目、再診料の効率化を狙う目的で「リフィル処方箋の導入・活用促進」、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う臨時的措置の一部終了として「小児の感染防止対策の期限到来(医科分)」がマイナス項目となっている。

また厚生労働大臣と財務大臣より次期改定に向け下記の内容について議論することを「中医協」に要請している。

  • 医療機能の分化・強化、連携の推進に向けた、提供されている医療機能や患者像の実態に即した、看護配置7対1の入院基本料を含む入院医療の評価の適正化
  • 在院日数を含めた医療の標準化に向けた、DPC制度の算定方法の見直し等の更なる包括払いの推進
  • 医師の働き方改革に係る診療報酬上の措置について実効的な仕組みとなるよう見直し
  • 外来医療の機能分化・連携に向けた、かかりつけ医機能に係る診療報酬上の措置の実態に即した適切な見直し
  • 費用対効果を踏まえた後発医薬品の調剤体制に係る評価の見直し
  • 薬局の収益状況、経営の効率性等も踏まえた多店舗を有する薬局等の評価の適正化
  • OTC類似医薬品等の既収載の医薬品の保険給付範囲の見直しなど、薬剤給付の適正化の観点からの湿布薬の処方の適正化
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