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コラム

経営に役立つ原価管理

-第3回 製品の顧客価値/競争力を高めるための戦略的原価管理-

2018年10月

製品の顧客価値/競争力を高めるための戦略的原価管理

今回は第3章として競争戦略を牽引する原価管理の手法を解説いたします。
競争戦略の成功要因は、マーケティング、プロモーション、価格戦略、製品開発、原価企画、品質管理、物流サービス、メンテナンスサービス、CRMなどビジネスプロセスの総合的な業務品質で築かれますが、ここでは製品の顧客への付加価値向上を中核に原価管理でできることをお話しします。

「生産資源費」×「製造活動費」のマトリクスによる原価表の活用による原価企画のすすめ

図表8は製品の顧客価値を高めるための原価企画の始めに使用する原価の見方を示した図表です。

今までの原価計算の原価明細は、表の上部の材料費・労務費・外注費・減価償却費・光熱費といった生産資源費目で表します。これは今までの原価計算の常識と言ってよいでしょう。

しかし、この費目は誰が決めたのかと言うと、恐らく18世紀の英国産業革命の時代に業界の慣行で使われていた科目と思われます。

発想の原点は、欧州近代の資本主義の考え方にあると思われます。当時の経営は、全世界から安い生産資源、材料、労働力、エネルギーを調達し、製造プロセスに投入して生産物を安く作り、それを高く売って利益をあげることだった筈です。

そこで仕掛品、製品の製造原価や販管費の物差しを購入した生産資源の種類と金額で測ることにしました。

図表の列の名前を見れば分かります。筆者は、これを「生産資源費」と名付けています。

一方、現代のビジネスでは、そのような考え方は市場では通用しません。市場に自社の製品が顧客にとって如何に付加価値があるかに主眼を置いた製品開発を行います。しかも顧客が喜んで買える価格でないと顧客満足は得られませんし経営も成り立ちません。

そこで原価の物差しも付加価値または活動価値に変わります。図表8では下の列が原価科目になります。そして、筆者はこれを「製造活動費」と名付けました。読者は、ここまでお読みいただくと、筆者が「生産資源費」による原価計算は捨てて、これからはマーケットインの視点による「製造活動費」に置き換えなさいと言っていると思われるでしょうが、そうではありません。

今日の製品開発では、運用上、両者の視点の物差しをマトリクスにしてセル単位に原価企画する必要があるのです。)

図表8

図表9-1は、 「生産資源費」と「製造活動費」をマトリクスのセルにしてセル単位に原価改善、原価企画を検討するためのシートです。

図表9-1の読み方ですが、顧客価値を作る加工活動に26円掛かっているが、「生産資源費」では労務費に12円かけている。これを労務という生産資源を機械という生産資源に換えてコストダウンできないのかという発想で原価企画します。一方、「生産資源費」では労務費に合計で25円掛かっていますが、どの活動に一番掛かっているのかと調べると、加工活動に半分近い12円もかかっているということが分かります。両方の視点をもって初めて原価企画が出来る訳です。

図表9-1

次元が違う「生産資源費」と「製造活動費」のワンインプットをどうするかの提案

いくら原価企画のために有用だからと言って、現場の加工作業を、二次元の科目で別々に入力するのは手間がかかり実用的ではありません。

そこで二次元の科目をワンインプットで完結する方法を提案します。

会計ソフトの伝票入力では、主科目と補助科目に分けて1つの取引を入力する機能が備わっています。

この機能を応用して、主科目には「生産資源費」を、補助科目には「製造活動費」を設定し、製造活動を主科目と補助科目で入力し1つの金額を入れて完結させます。

そうすると会計ソフトは、2体系の科目によるワンインプットを図表9-2のような 構成でデータ生成し、図表9-1のような二次元マトリクスの原価表に落とし込むことが出来ます。

図表9-2

実践的な「生産資源費」×「製造活動費」の二次元マトリクス原価計算表の活用場面

図表10は、このマトリクス原価計算表を使った実践的な原価管理の事例です。

帳表の縦軸は「生産資源費」です。正味材料費や正味外注費、正味製造人件費、正味設備使用費、正味光熱費などで構成されます。

※正味原価=製品の価値創造に直接使用した生産資源や活動に限定した原価を指します。

また正味原価=製品原価130万円-製造活動で使用しなかった原価(操業度差異等)20万円-直接・間接共に製品完成に貢献しなかった原価10万円=100万円で定義します。数値は例示です。

横軸は活動軸の原価科目( 「製造活動費」)です。投入費や調合費や加熱費、成形費、充填費、検査費、梱包費などで構成されます。

生産資源科目合計100万円と製造活動科目合計は100万円は、原価の見方の違いですから合計は当然一致します。

さらに活動軸の原価科目も、顧客満足を直接創造する科目(調合費、加熱費)と、顧客満足は創造しないが製品化に欠かせない加工処理を行う付随科目(投入費、成形費、充填費、検査費、梱包費)の2種類に分けて科目を設定します。

原価計算表の生産意思決定活用には3つのポイントがあります。

(1)原価企画はマトリクスのセル毎の原価改善を『製造活動』と『生産資源』の二次元で検討できます。『製造活動』は『顧客価値創造活動』と『付随活動』に二分割されます。

(2)製品に占める顧客満足に寄与する原価の構成率を評価します。この表では調合費と加熱費計57万円を原価合計100万円で割った57%です。

また時間あたりの利益を高める要素は製造速度です。顧客価値を作る工程の製造速度は2日ですから顧客価値創造リードタイム率は2日÷5日で40%になります。

顧客価値創造原価は競争力の源泉ですから、やみくもな原価削減と生産速度短縮で価値を下げては本末転倒です。但し競争力を落とさない範囲で過剰な顧客価値は削減しても良いでしょう。一方付随工程は徹底して原価と製造速度を削減します。

KPIは時間あたりの利益増加、顧客価値原価率増加を設定します。

図表10の企業では、この製造オーダーの利益は50万円ですが、製造時間に5日もかかっているので1日当たりの利益は10万円にすぎません。顧客価値原価比率はトヨタでも40%程度だそうです。従って付随工程に60%も原価がかかってしまうようです。

この表は、原価削減を一律に行うのではなく、顧客価値工程にかけている原価は削減するのではなく、顧客価値を高める方向で生産資源と原価水準を維持するか見直し、付随工程については徹底的にコスト削減を生産資源の見直しで原価を削減する。このようなメリハリある原価企画を行う必要があるでしょう。

図表10

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