特集 情シス事情を知る
知的業務も自動化の時代へ!生成AI×業務オートメーションがいざなう次世代DX
2025年6月
はじめに
減り続ける労働人口を補うため、企業には一層の業務効率化と人材リソースの最適な配分が求められています。解決策の一つとして、ワークフローシステムやRPAなどによる業務自動化が広まってきました。今後は「生成AI」を活用することで、より高度な業務オートメーションの実現が期待されています。
本稿では、セミナー「生成AIを活用した業務オートメーションの高度化に向けて(4部構成)」の模様をレポートし、業務自動化と生成AIの相乗効果について解説します。
第1部:業務オートメーション×生成AIの相乗効果がもたらす現在地と未来像
第1部では、「ここまで出来る!業務オートメーションの現在と、生成AIによる範囲拡大」と題して、今回のセミナーを俯瞰した業務自動化の現在や未来像について説明しました。
企業を取り巻く事業課題として退職増・採用難、複雑なシステム連携、大量の(半)定型作業の3つがあります。これらが積み重なって業務を圧迫し、本業をなかなか進められないのが現状です。そこを、ローコード業務アプリ作成ツール「intra-mart(イントラマート)」や、インテリジェントRPAツール「SS&C Blue Prism(ブループリズム)」で改善につなげます。
intra-martの特長はローコードで手軽に業務アプリを作れ、システム間の柔軟な連携とスケーラビリティを両立できる点です。一方、Blue Prismは連携(API)のないシステムでも高いセキュリティとコンプライアンスを確保しながら複雑な処理を行えます。
intra-martはデジタル化、Blue Prismは自動化に貢献できるツールです。例えば、定期的に発生するシステム間のファイル連携作業に対してはintra-martの標準コネクターで自動連携できます。FAXやコピーできないPDFをシステムに入力する作業もBlue PrismのロボットがAI-OCR機能などで読み込んで自動入力できます。さらにシステムとローカルファイルを見比べながらの作業もintra-martとBlue Prismの連携で自動処理が可能です。2つのツールを組み合わせれば、入力からワークフロー、出力まで自動化でき、本業を妨げる課題を解決できます。
このように、両ツールで多くの課題を解決できますが、生成AIを使えばさらに発展が期待できます。例えば、多数のワークフローが存在するとき、どれを選ぶべきか、自然言語での指示を解釈して自動で選択できたり、文章の内容に応じて自動でアクションを分岐させたりといった複雑な処理も、柔軟に手間なくこなせます。
また、intra-martやBlue Prismに向かない細々とした作業に関しては、ボトムアップ型の生成AI活用も有効です。例えば、社員が情報漏えいを心配せずに使える生成AI環境を用意し、現場の従業員自身で効率化してくことが理想的です。
一方で、生成AIの利用には、誤った情報を出力したり、倫理観に欠けた出力をしてしまうリスクもある点を認識し、ケアしていくことが重要です。
第2部:ローコード開発の導入はDXのゴールではない本質的なDXを支える技術とは?
第2部では、ローコード開発におけるintra-martの特長やユースケース、生成AIとの連携活用について紹介しました。
近年、ローコード・ノーコード開発市場は拡大の一途をたどっています。成長の理由は、DX推進によって自社に合わせたシステム開発のニーズが高まっているためです。ビジネス環境の変化やIT利活用の重視により、柔軟な開発ができるローコード開発に注目が集まっています。
しかし、「ローコード開発の導入=DXのゴール」ではありません。ローコード開発はあくまでDX実現のアプローチの一つとして捉え、目の前の課題への場当たり的なITシステム導入ではなく、業務課題や経営課題といった広い視野を意識し、長期的な目線での計画がDX推進には必要です。
DX実現に際しては「アナログ業務のデジタル化」「業務プロセスのデジタル化」「新たな顧客体験の創出」という3ステップで取り組むことも効果的です。ただし、各ステップを進めるためには下図で示すような技術要素が欠かせません。
DX推進に求められるローコード開発、業務プロセス改善、共通プラットフォームという3要素をすべて満たしているのがintra-martです。
intra-martの特長は、システム共通基盤としてIT統制が可能であること、業務プロセスのデジタル化や可視化で業務改善ができること、ローコード開発の内製化もできDX推進のサポートサービスを提供していることです。
特にローコード開発の特長としては、Webブラウザ上で開発でき、すばやく変化に対応できます。システムの変更時やロジック作成時にも運用を止める必要はありません。各機能に拡張ポイントを用意し、必要に応じてソースコードの記述も可能です。また、各種ローコード開発ツールを採用しています。
続いて、大日本除虫菊株式会社のユースケースを見てみましょう。同社では、30年間稼働していた汎用機で高度なワークフローシステムを構築できないことに課題を抱えていました。そこで、intra-martをハブとして生産管理や販売管理などのシステムを連携。1年5カ月で230本のシステムを構築し、工数を最大1/10まで削減しました。サーバーごとのライセンス体系でユーザー数課金と比べ安価だったことや、システム連携が容易なことがintra-mart採用の決め手になりました。
intra-martの生成AI活用に関しては、すでにOpenAIやAzure OpenAIを利用できる生成AI連携モジュールの提供を開始しました。今後は画面やロジックの自動作成や、生成AIによる業務アシストが行われる段階を目指します。システム面でも社内ヘルプデスクの活用、申請画面での生成AIによる入力候補の提案・自動入力といった活用が期待されます。
第3部:「点」の自動化から「面」の自動化へIAで広がる業務改革の可能性
第3部では、業務プロセスを自動化・高速化させるインテリジェントオートメーション(以下、IA)、さらに生成AIとRPA活用による相互効果などを解説しました。
これまでの自動化は「点」、つまり業務単位や組織単位での自動化が進められてきました。しかし、今後は業務の質やスピードを高めるために「面」での自動化が求められています。面の自動化を実現するために欠かせないのがIAです。
従来のオートメーションは単純作業として切り出せる業務“のみ”をRPAで自動化してきましたが、それ以外の作業は自動化できていませんでした。当社はIAを用いた、ワークフォース全体の融合と自動化、部門横断プロセスや高度コミュニケーションの自動化によって単純作業以外にも対応し『面』の自動化を目指しています。
例えば、フロント業務に関しては、BPM(ビジネスプロセスマネジメント)機能で収集したデータをワークのプロセスに流してAPIで連携しながらシームレスに従業員の承認やフローを回せる仕組みとなっています。顧客が依頼内容を申し込むとRPAが収集した顧客データをもとに管理職が内容を精査し承認。依頼内容を自動実行し、必要に応じてオペレーターがフォローしたり、管理者が進捗や結果をモニタリングすることも可能です。
昨今ではUI(ユーザーインターフェイス)・UX(ユーザーエクスペリエンス)の観点からチャットボットや基幹システムなどを連携させる必要があります。IAを間に挟むことで中間層の連携を実現し、人とデジタルワーカーを前提としたEnd to Endの業務プロセス改革を実現できる構成になっています。
ここで、IAを活用し基幹システムを改修せずにUI・UXと連携した事例を紹介しましょう。ある企業では、UI・UXに優れたフロントエンドの仕組みを有していましたが古い基幹システムとの連携が課題となっていました。Blue Prismの導入によって基幹システムを改修せずAPI化し、Slackなどのチャットツールと連携させ情報を見える化しました。
SS&C Blue Prismが目指すRPAの世界観はロボット自身が覚えた業務を必要なときに判断して実行する、より人に近い仕事ができるようになることです。この実現に際しては統合管理と変化への追随性、ROIという3点がBlue Prismの優位性になります。
統合管理に関しては、集中管理型のアーキテクチャによって安全性の向上が図れます。作業時や変更時のミスを防ぎ、権限管理による制御や履歴管理も可能です。変換の追随性ではプロセスをドラッグ&ドロップで定義してオブジェクトを介してつなげ、SAPやSalesforceなどのエコシステム群と連携できます。ROIの観点では本番環境のみの同時実行数での課金体系で、TCO(総所有コスト)を低減できます。
生成AI活用ついてはRPAとの相乗効果によってこれまでにない幅広い業務領域での自動化ができます。IAが生成AIにもたらす価値として、生成AIのアウトプットを活用したシステム処理の実行、人やシステム・生成AI・デジタルワーカーの統合、生成AIが時間通りに望ましい品質で処理を実行するための統制を実現できます。
例えば、新入社員が業務で何か困ったときに、その状況を自然言語で入力することで、解決策が提示され、先輩社員の手を借りずとも適切なアクションが実行できるようになります。
第4部:生成AIのリスクを防ぐ社内整備の3大要件
最後の第4部では、「生成AIを活用した業務オートメーションの高度化、そして安全な活用に向けて」との表題で生成AIのリスクと対策について解説しました。
生成AIとintra-mart、Blue Prismを連携させることで多くの業務を自動化できるものの、中には自動化しづらい業務が存在します。例えば、複雑な思考やデータ化されていない知識が必要な業務が該当します。これには社内専用の文章生成AIを用いることで対応可能です。
生成AIは便利ですが、扱いに気をつけないと重大な問題を引き起こしかねません。エンジニアが社内の機密コードをChatGPTにアップロードしリークさせてしまった事例や、ランサムウェアを作成して逮捕された事例もあります。情報流出や法律違反には注意が必要です。
業務シーンにおける生成AI活用においては、いくつかの問題点があります。例えば、未公表新製品の提案書を作るために仕様書をアップロードした結果、外部に情報漏えいしたケースでは、会社で許可されていない生成AIの利用や機密情報の入力が問題点として挙げられます。また、過去のトラブル事例を読み込ませて解決策を提案する生成AIを構築したケースでは、生成AIの提案が正しいとは限らず、入力したトラブル事例が外部に知られて問題になる可能性もあります。
なぜ生成AIにはリスクが伴うのでしょうか。生成AIはネット上の情報を真贋問わず学び、嘘や偏見、権利侵害を含む文章を出力するからです。偏見のある文章をお客様に送ってしまったり、インプット元の著作権を侵害したりする恐れがあります。また、過去の経験や倫理観、知識など、生成AIを使用する個人が持つコンプライアンス意識やリテラシーによってリスクの有無が左右されるのも忘れてはなりません。
安全に生成AIを運用するため、当社では社員教育とガイドラインに加え、ロードマップ作成支援というサービスを提供しています。
ガイドラインはゼロから作ると時間がかかるため、雛形をもとにアセスメント形式ですばやく作成できます。ガイドラインを対面教育で社内に周知し、ワークショップで活用を促進できます。さらに、生成AI活用のロードマップを作成することで、目的や実現計画を具体化するサポートも行っています。
生成AIの登場によって業務オートメーションは新たなステージへと進化しています。単純作業の自動化からより高度な業務まで、自動化の可能性は大きく広がりました。しかし、その導入にはガバナンス整備を含めたリスク対策が欠かせません。
NECネクサソリューションズでは、個別のITシステム導入に留まらず、ワークフロー/RPAなどのソリューションと生成AIの相乗効果による業務自動化と高度化を提案しています。これにより、インテリジェントオートメーションによる包括的な改革を進めることが可能となり、お客様のDXをサポートしています。検討のステップやポイント、ユースケースを含め、業務オートメーションの高度化にご興味がある方は、ぜひNECネクサソリューションズにご相談ください。
各講演は以下企業が解説しました。
- 第1部 NECネクサソリューションズ
- 第2部 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・イントラマート
- 第3部 Blue Prism株式会社
- 第4部 NECネクサソリューションズ