ページの先頭です。
サイト内の現在位置を表示しています。
  1. ホーム
  2. ソリューション
  3. コンサルティングサービス
  4. コラム
  5. 業務改善
ここから本文です。

コンサルタントのコラム

在庫のはなし

[第1回]在庫とは何か

2010年12月(2020年10月改訂)

はじめに ~在庫に対する考え方は業種によって異なる~

製造業や流通業にとって、「在庫」は永遠のテーマであると言われます。
また、製造業と流通業では在庫に対する考え方に差があるとも言われています。

[図]

つまり、製造業にとって在庫は「悪」であり、
流通業にとって在庫は「必ずしも悪ではない」
という意味です。
確かに、トヨタは長年の不断の努力によって世界最高水準の在庫削減を達成していますし、一方、東急ハンズやジョイフル本田は圧倒的な商品在庫を保有することによりお客さまの支持を集めています。

でも、これらの例は、外部から観察できる企業の一面であり、一概に製造業はこうで流通業はこうなのだ、と言うことではありません。
トヨタも東急ハンズも「最適な在庫量」を追求してきた結果として、現在の姿を見せていると考えるべきです。

在庫とは

「企業や団体が所有している物品のうち、販売・供給することを目的とした、製品と原材料、中間品」 これが、一般的な在庫の定義です。
会計上は「たな卸資産」として計上されます。

在庫の種類としては以下の3つが代表的なものです。

  • 製品在庫:販売されるのを待っているもの(流通業では「商品在庫」と呼びます)
  • 仕掛(しかかり)在庫:生産工程の途中に存在するもの
  • 原料在庫:原材料や資材として用意されているもの

これらの在庫は、「購買・調達」や「生産・加工」、「販売・供給」、「廃棄」といった企業活動によってその数量が増減します。また、経過する時間によりその価値が増減します。

在庫の役割

なぜ企業は在庫を持つのでしょうか?
そこには在庫の果たす役割があるからです。

在庫の基本的な役割として、

  • 製品在庫による顧客への供給リードタイムの短縮(顧客満足が向上します)
  • 原料在庫による生産ラインの調達リードタイムの短縮(生産性が向上します)

があります。
この二つは在庫の役割として基本的なものです。
これらによって必要最低限の在庫量が決まってきます。

例えば、供給リードタイムが長くても良い(お客様が待ってくれる)場合は、製品在庫がゼロでも良いことになります。
受注生産の製品などがこれにあたります。
通常は一日に必要となる量の数倍を、ぎりぎりの在庫(最低在庫量)として意識していることが多いと思います。

[図]

でも現実には、ぎりぎりの最低在庫量(お客様が逃げない、生産が止まらない)に加えて、在庫を持つことが一般的です。

この場合の在庫の役割は以下の2点です。

  • 需要の変動に対応する
  • 供給の変動に対応する

ここでの「需要」とは、なにもお客様から求められるものばかりではなく、生産工程における仕掛り在庫の需要も意味していると理解してください。
「供給」も同じく、仕入れ先からの供給だけではなく、生産工程間での供給を意味しています。

その他の在庫の役割として、大量購入や大量輸送によるコストの削減、投機目的の在庫などがあります。

在庫の本質

ここまでの考察をまとめると、在庫というものの本質が見えてきます。
在庫の本質とは「時間に起因して発生するいろいろな不都合を解決するために、あらかじめ保有する物品」だと言えます。

「時間に起因して発生する不都合」の具体的な例は、次のようなものです。

  • 原材料を手配してから入手するまでの時間が、生産ラインの待ち時間となってしまう。
  • 先週入手できた原材料が、今週は入手できなくなった。

これらの不都合は全て時間が引き起こしています。
一般的には不都合を解決する対価としてコストが発生しますので、企業はコストをかけて時間に起因する不都合を解決することになります。

そのコストの多くが「在庫」として現れているわけです。

〔ちょっと一言〕

もっと簡単に表現すると、「お金で時間を買っている」となりますが、この表現はほぼすべての経済活動にあてはまり、とても哲学的な議論となってしまいます。
ご興味のある方は「ミヒャイル・エンデ(「モモ」の作者)」が晩年に成した論考を追いかけてみることをおすすめします。

在庫によるデメリット

「役割(メリット)があるなら、在庫をできるだけたくさん持てば良い」と言うことにはならないのは、みなさんもご存知のとおりで
なぜなら、在庫には保有する量に比例して増加するデメリットがあるからです。

在庫によるデメリットは次のようなものです。

  • キャッシュフローが停滞する
  • 物品が陳腐化、劣化する
  • 管理コスト(保管、移動、棚卸、メンテナンス)がかかる
  • 品質不良の対処として、製品在庫や仕掛在庫を破棄する危険性がある

このなかで、最も問題となるのが「在庫保有によるキャッシュフローの停滞」だと言われています。
デメリットは在庫の量に比例して増加しますので、メリットがなくならないぎりぎりまで在庫を削減することに、みんなが苦労しているのが現状です。

在庫に関するジレンマ

「メリットがなくならないぎりぎりまで在庫を削減する」とは、「在庫をたくさん持ちたい」という思いと「在庫を少なくしたい」という思いのジレンマ(対立)です。
制約理論(Theory of Constrains)では、対立は解消可能であると言われています。

次回は、在庫に関する対立を解き明かして、解決の方針について考えてみたいと思います。

執筆

NECネクサソリューションズ
シニアコンサルタント 冨澤 雅彦
[日本TOC推進協議会 正会員、日本UML推進協議会 BPMN研究会副主査]

ご質問・ご相談などお気軽にどうぞ

お問い合わせ

資料ダウンロードはこちらから

資料ダウンロード
ページ共通メニューここまで。

ページの先頭へ戻る